3ヶ月間の嫁 | ナノ


「そっ粗茶です!」

新八が小刻みに震えながら、やってきた女にお茶を差し出す。女はどうも、と軽く会釈すると、出された湯飲みに口をつけた。

「えーと、万事屋に来たということは僕たちに依頼……があるんですね?」

新八が緊張気味にそう言うと、女はゆっくりと頷いた。

「はい。ここに来れば何でもすると耳にしたので……」
「ふうん。……で、金持ちのお嬢さんがこの汚い万事屋に何の用?」

銀時がそう言うと、女は驚いた顔で銀時を見た。

「なんで……」

そうすれば、銀時はふんと鼻で笑う。そして窓から小さく見える大きな屋敷を顎でしゃくった。

「お嬢さん、あそこの織物屋のとこの娘さんだろ。お嬢さんはこの町じゃ結構高価な着物着てるし、その身なりや態度からして厳しく教育されたみたいだな。作法にすげー厳しいっつったらあそこしかねえよ」

銀時が言い終わると、女は目を丸くして彼を見た。

「すごい……こんな人初めて」

そう呟く女に、銀時は頭を掻きながら言う。

「……で、そんなお嬢さんがご依頼とは何ですか?」

すると女は、はいと言って説明し始めた。

「私はあなたの言う通り、あの織物屋の娘で、水野ゆきと申します」

女――ゆきはそう言って小さく頭を下げると、向かい側に座っている銀時たちを見る。

「今回は、あなたたちに助けて欲しくてここに来ました」

その言葉に、銀時は片眉を上げた。新八も固唾を飲んでゆきを見ている。

「助け……?」

銀時がそう言うと、彼女がこくりと頷いた。

「依頼というのは……万事屋さんに、私と結婚して欲しいんです」
「……」
「……」

万事屋に、長い沈黙が流れた。

「………は?」






(…え、ちょ、どういうこと?)
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