「そっ粗茶です!」
新八が小刻みに震えながら、やってきた女にお茶を差し出す。女はどうも、と軽く会釈すると、出された湯飲みに口をつけた。
「えーと、万事屋に来たということは僕たちに依頼……があるんですね?」
新八が緊張気味にそう言うと、女はゆっくりと頷いた。
「はい。ここに来れば何でもすると耳にしたので……」
「ふうん。……で、金持ちのお嬢さんがこの汚い万事屋に何の用?」
銀時がそう言うと、女は驚いた顔で銀時を見た。
「なんで……」
そうすれば、銀時はふんと鼻で笑う。そして窓から小さく見える大きな屋敷を顎でしゃくった。
「お嬢さん、あそこの織物屋のとこの娘さんだろ。お嬢さんはこの町じゃ結構高価な着物着てるし、その身なりや態度からして厳しく教育されたみたいだな。作法にすげー厳しいっつったらあそこしかねえよ」
銀時が言い終わると、女は目を丸くして彼を見た。
「すごい……こんな人初めて」
そう呟く女に、銀時は頭を掻きながら言う。
「……で、そんなお嬢さんがご依頼とは何ですか?」
すると女は、はいと言って説明し始めた。
「私はあなたの言う通り、あの織物屋の娘で、水野ゆきと申します」
女――ゆきはそう言って小さく頭を下げると、向かい側に座っている銀時たちを見る。
「今回は、あなたたちに助けて欲しくてここに来ました」
その言葉に、銀時は片眉を上げた。新八も固唾を飲んでゆきを見ている。
「助け……?」
銀時がそう言うと、彼女がこくりと頷いた。
「依頼というのは……万事屋さんに、私と結婚して欲しいんです」
「……」
「……」
万事屋に、長い沈黙が流れた。
「………は?」
(…え、ちょ、どういうこと?)
***