3ヶ月間の嫁 | ナノ


「よォ、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ」
「相変わらず鬱陶しい髪の毛だな、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。鬱陶しいのはお前の髪の方だろう」
「あん?喧嘩売ってんの?買うよ?お前がそのつもりなら俺買っちゃうよ?」

とある茶屋でいつものようにくだらないやりとりを交わしながら、二人は通りを眺める。
ヅラ、と呼ばれた桂の方はお茶を啜っていた。その後ろにはエリザベスも控えていて、端から見れば異様な光景なのにも関わらず、通行人はあまり気にしていないようだった。これもみな、天人の到来による慣れである。

「……さては貴様、俺のこの美しい髪が羨ましいのだな?だからそんな絡み方をするのだろう?」
「ちげーわ、微塵もそんなこと思ってねーわ」
「だが貴様のその頭では既に手遅れ。お前の性格を表したかのような曲がりくねった毛髪では俺のようにはならん。再起不能だ」
「だから羨ましくねえっつってんだろ!話を聞け」
「ふむ、すまん。……矯正縮毛をしたらどうだ」
「だから話を聞けェェェ!!あと矯正縮毛ならとうの昔にやりました!無意味でした!」
「やったのか……」
「なんだその可哀相なものを見る目はよ!悪いか?希望を持つことも俺には許されねーのか!」
「がんばれ」
「てめぇこの野郎ォォォ」

怒りが沸点に達した銀時が桂の胸ぐらを掴む。乱暴に揺すると、涼しい顔の桂が「落ち着け」と彼をなだめた。
いったい誰のせいで、という言葉をなんとか飲み込み、長椅子に腰掛け直す。

「――それで、毛髪以外で俺に聞きたいこととはなんだ」
「毛髪はてめーが勝手にあれこれ言ってんだろうが」

たった数分の会話でひどく疲れたような銀時に、そういえば、と桂が切り出した。

「恋人でもできたのか」
「あん?」
「お前と上品そうなおなごが町を歩いているのをよく見かける」
「ああ……ゆきのことか」
「ゆき?」

ひとつ頷いて、銀時は彼女との関係を簡単に説明した。依頼については伏せようが考えあぐねたが、何か役立つことがあるかもしれないということで、一応それも話しておく。
興味深そうに聞いていた桂は、一通りの説明を受けると「なるほど」と頷いた。

「水野、という苗字なら確かに最近よく聞くな。あそこの御息女であったか」
「企業拡大のための政略結婚なんざ嫌なんだと」
「そういえば、大手企業会社との提携を結ぶ予定だと聞いたことがある」
「……やけに詳しいじゃねえの」

銀時が半ば驚きを含みながらそうこぼすと、桂はふふんと自慢気に胸を張った。

「俺たちの活動には常に新しい情報が大事になる。どんな小さなものでも、そこから大きな成果が得られる場合もあるのだ」
「お前も懲りねえな。――最近じゃ、過激な行動も起こしてるんだって?」
「……その話か」

感づいたのか静かに言って、桂が銀時を見る。彼もまた、にやりと意味深に笑ってみせた。

「話が早くて助かるわ、ロン毛さんよォ」
「ロン毛じゃないヅラだ。あっ、間違った桂だ」





(……お前グダグダじゃん)(喧しいわ)

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