それは、のどかなある日のことだった。
『万事屋銀ちゃん』のオーナーである坂田銀時は、今日もダルそうにジャンプを読んでいた。
「あ〜暇。仕事入ってこねーかな」
そう言いながらページを捲っていく。すると、台所から眼鏡をかけた少年が顔を出した。
手には泡のついたスポンジを持っていて、食器を洗っているらしかった。
「暇なら家の掃除手伝って下さいよ!ここ銀さんの家でしょ」
「何言ってるアルか新八。この家の掃除当番は永遠にお前アルヨ」
銀時とは反対側のソファに寝転んでいる少女、神楽がそう言う。
そうすれば、新八と呼ばれた少年はスポンジを握りしめ怒鳴った。
「そんなわけないでしょ!永遠にとか無理だから!」
「うるせぇぞ新八ィ。早く掃除終わらせろ」
ジャンプに飽きたらしい銀時は、分厚いそれをテーブルに投げ出す。仕事がないのと新八が煩いのとで、かなり苛ついていた。
「お前はこの万事屋に来た時点で家事を全て担当することになってんだ。運命なんだよ、受け入れろ」
「最初から!?そんな運命まっぴらごめんこうむります!」
そう言うと、新八はスポンジを床に投げつけた。
「やってらんねー!僕もう万事屋辞めますから!」
新八の言葉に、銀時と神楽は目を丸くして彼を見る。
「おいおい止せよ。お前がいないと万事屋やっていけねーんだよ」
銀時のセリフに、新八はコホンと咳をする。まんざらでもないようだった。
「ま、まあ……僕が一番まともですしね……」
「家事は誰がするんだよ」
「結局そっちかアアア!」
本当に辞めます!そう言って新八がエプロンを取った時だった。
部屋中にチャイム音が鳴り響いた。
一瞬静かになった万事屋は、次の瞬間もの凄い勢いで玄関に走り出す。
「どちら様ですかアアア!?」
銀時がそう叫んでドアを開けると、そこにいたのは高価そうな着物を着た女だった。
(金ヅルキタァアアァア!!)
(銀さん…アンタ最低だな)
***