3ヶ月間の嫁 | ナノ


「おい娘!嘘言ってんじゃねぇぞ!」
「う、嘘じゃないですよ……!」

ものすごい剣幕でゆきに言い寄る土方に、ゆきは困惑しながらも首を横に振る。
それを見た土方は更に恐ろしい形相で彼女に詰め寄った。そしてまたゆきが眉を下げながら否定する。ゆきの方はもはや泣きそうだった。

ぼんやりとそんな二人を静観していた沖田は、やれやれといったふうに肩を竦めてから銀時を見た。

「……旦那もいい娘さんゲットしやしたねィ。水野って言えば、最近大きくなってきたあの織物屋でしょう?どんな手使ったんですかィ?」
「なにその言い方。まるで俺が汚い手ェ使ったみたいなんですけど」
「あれ、そういう意味で言ったんですけどねィ」
「てめえええ」

銀時が沖田に掴みかかろうとしたとき、それを見たゆきが再び仲裁に入る。土方から逃げられて少し安堵しているように見えた。

「銀さんはもっと我慢して下さい。家でも神楽ちゃんたちと取っ組み合って……そんなに暴れるんだったら、もうご飯抜きにしますよ」
「すいません」
「だいたいですねえ」
「……なんか、夫婦ってより親子みたいでさァ」
「だな。いい気味だ」

ゆきの説教を眺めながら、沖田と土方は呑気にそんなことを言った。銀時はゆきの前で小さくなって怒られている。

「旦那ァ、俺たちは巡回があるんで先に帰りまさァ」
「えっ?ちょ、まっ……」
「ま、頑張って下せェ」

詳しくはまた今度〜と手をひらひらさせて土方と帰って行った。それを見送ったゆきたちも、ようやく帰路につく。

「なんか……ゆきちゃんて思ってたより違う」

銀時がそう呟いたのは、万事屋まであともう少しで着くというときだった。

「違うって、何がですか?」

きょとんとして聞き返すゆきに、銀時は頭をかきながら唸る。

「いや、だってホラ、初めて会った時は大人しいなーって思ってたんだけど、実際はもっとこう……」
「どこにでもいそうな庶民?」
「そんな感じ――いや!別にそれを否定してるわけじゃねえよ?」

慌てて両手を振って言い直す銀時を見て、ゆきは小さく笑う。

「分かりますよーその感じ。私って、初対面では、いつもおしとやかなイメージしか持たれないんですよね」
「へえ」
「実際は庶民的で、活発な女の子かもしれないのに」

ゆきはそう言うと、ふっと息を吐いた。とりわけ悲しいという風な表情ではなく、どちらかといえば楽しそうな顔だった。

「……なあ」
「ねえ、銀さん」

銀時の言葉を遮るように口を開いたゆきは、真剣な表情で銀時を見上げると、確かめるように言った。

「最後まで、一緒にいて下さいね」

銀時は初め驚いたような表情を見せたもの、やがて口元を綻ばせ頷いた。

「当たり前だろ?3ヶ月間のお嫁さん」








(本当はそれ、俺が言うつもりだったんだけどなあ)

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