「ゆきさん、それ本気ですか?」
沈黙した中、やっと口を開いたのは新八だった。頬が引きつっている。
ゆきはにっこり笑いながら頷く。その笑顔は自信に溢れていて、銀時はどうやったらその自信が出てくるのか分からなかった。
「ゆきちゃんよォ、ちょっと人が良すぎるんじゃないの?普通は怒るところだぜ」
その言葉に、ゆきは首を傾げる。本当に、なぜそんなことを言われるのか分からないという顔をしている。
「どうして怒るんですか?私はただ依頼をしているだけですよ」
「いや、あの、そうじゃなくてね?」
――やべえ、この子ちょっと天然入ってるんじゃね?
どう話せばいいか分からず、目を泳がせながら銀時はそんなことを考えていた。
言葉を選んでいると、ゆきが確認をとるように銀時に言う。
「この万事屋は、何でもしてくれるんですよね?」
「ん?ああ。ま、まあな」
突然の質問に、銀時は少したじろぎながらも答えていく。
「お金さえ積めば、何でも?」
「まぁ……」
「だったら、今言った私の依頼も受けてくれますよね?」
「まあ……。――あ」
やられた、という顔をする銀時とは打って変わって、ゆきは嬉しそうだ。先ほどよりも満面の笑みで銀時の手を握る。
「じゃ、よろしくお願いしますね」
ゆきの言葉に、銀時ら三人はただ唖然と彼女を見る。当の本人は楽しそうに話し始めた。
「やっぱり形から入らないと。私がこの万事屋に来ればいいですよね?」
「え、あ、うん、そうだね」
銀時はただポカンとしながら頷いていく。
「じゃあ荷物は少しだけ持ってきて、あとは大丈夫ですね」
「……そうだな、うん」
大まかなことを決めると、ゆきは荷物を持って来ますと言って万事屋を出て行った。
「銀ちゃん」
「……あ?」
未だにボーッとしている銀時に、神楽は酢昆布をかじりながら言う。
「あの娘さん、おしとやかな子だと思ってたアル。そしたら」
「思ってたより強引なところがある、ってか?」
「そうネ。まさにそうアル」
「あ、それ僕も思いました」
ボソリと新八も同意する。
「………」
「………」
「………」
またもや流れる沈黙に、神楽の酢昆布をかじる音だけが、ただ響いていた。
(どうします?銀さん)
(さあ……)
(もうどうにもならないと思うアル)
***