ag-short | ナノ


 


これを読んでるころには、もう俺はそこにいないと思う。まぁ当たり前か。置き手紙だもんな。
お前はきっと泣いてるよな。俺が泣かせてんだ。そんなの充分解ってっけど、やっぱり俺は戦に出る。
初めお前に言ったとき、お前は自分も行くって言いたそうだったから、内心かなり焦った。
戦ってのは、男が自分のために行くもんだ。そこに女であるお前が行っていいはずがねぇ。それに、お前には綺麗なままでいて欲しかった。どんどん復讐や汚い感情に染まっていく俺達みたいになって欲しくなかった。お前を戦場にほっぽりだしたりしたら、俺はお前を護ってやれるか分かんねぇ。いつ死んでもおかしくないあの場所で、お前の変わり果てた姿を見たくなかった。

なぁ、どうしてこんなにお前を気にかけるか知ってるか?俺は知ってるぜ、お前が俺のことを好きなくらい。お前は知らなかったかもな、俺がお前のこと好きってこと。
お前のことが好きで好きで愛しいから、お前を戦わせたくなかった。

俺はお前が好きだ。
だけど、なぁ。お前のことを放って戦争になんか行っちまう俺のことなんか忘れてくれよ。お前みたいないい女を捨てて戦場に行っちまう馬鹿な野郎のことなんか。お前を幸せにできるか、そもそも生きて帰ってくるかも分かんねぇヤツのことなんて忘れて、他の男と所帯持って普通の、幸せな家庭を築いてくれや。
お前みたいないい女を放っておくヤツなんていねぇから、すぐに俺よりいい男が見つかる。それが見つかるまでは、昨日やった匂い袋が俺の代わりだ。見つかったら、匂い袋は捨てろ。でないとお前が前に進めねぇだろ?

夜が白み始めたら俺達は行く。
お前のくれた簪、大切にするからな。
ずっと、死んでもお前のことは好きだから、もう逢うことはなくても生きていられる。

だから、なぁ頼むから、こんな俺のことは忘れてくれよ。








そうして闇夜へ溶けていく

文字が滲んでて読めないわよ、馬鹿
 

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