×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
title<!--←ここはお気に入り登録される時などの名前になります-->
イケナイ密会。





「……にしても…吸血鬼、っスか?」

「うん」

「またエラくホラーっぽい喩えをしましたねェ…永倉サンも」

「夜にしか出ないし、血を寄越せなんて言ってるのを近隣住民が聞いてたりしてるし。そうなっちゃうのは必然だと思うけど?」

「まぁ、そうっスね」


土方と吸血鬼の話をした翌日。

喜助にも辻斬りの一件を調べて貰っていた名前は、団子屋の軒先で情報を貰いながら団子を食べていた。


「でもね、名前さん。下手人は“人”っスよ」


みたらしときなこで迷っていた喜助が結局三色団子を手にしながらそう言う。その言葉に眉を潜める名前はみたらしを手に取った。


「人、ねぇ…」

「“人間”とは言い切れないってことは、お前らがやった可能性もあるってことか?」

「そんな言い方はよせ、銀時。すまない浦原殿。銀時も悪気があったわけではないので許してやってくれぬか。こうも吸血鬼と外見が一致していては、夜な夜な出歩いて人妻とにゃんにゃんも出来ず、少々苛立って…」

「るワケねェだろ!?テメェの趣味を他人に押し付けんじゃねェエ!!ていうか大体なんでテメェがいんだァ!?ヅラはヅラらしく家に帰ってクソして寝てろボケ!!」

「ヅラじゃない、かつ…」

「はい、黙ろうか馬鹿。どーすんの。近くにドSバカとかいたら」

「馬鹿じゃない、かつ…」

「現行犯逮捕されたいか小太郎。お巡りさんをからかった罪、侮辱罪で」


みたらしを口に運んだ名前の呟きに答えたのは喜助ではなく、二人と背中合わせに座っている万事屋の店主の銀時と、攘夷志士の桂小太郎だ。攘夷浪士と団子を食べるなど、真選組に属する者としてはあるまじき行為だが、何故か普通に街のど真ん中でそれがなされている。理由は、名前達がまだ尸魂界にいた頃の現世駐在任務の時まで遡るのでここでは割愛させて貰うが、まぁ一言で表してしまえば“銀時の大事な仲間だから”らしい。


「…で、二人は?なんか収穫あった?」

「俺ァねぇな。知り合いの情報屋にいくつか行ってみたが、どこも“白髪に赤っぽい目”ばっかだ。しまいにゃお前が出頭すりゃ万事解決すんじゃねェかとか笑いやがった」

「んー…今自供してくれたら健康診断で採った私の血あげてもいいけど」

「誰が吸血鬼だ、誰が」


しかも俺は銀髪だ。
そう言ってふんと鼻を鳴らした銀時を見て喜助と名前は苦笑する。土方がその情報屋と似たようなことを言っていたとは口が裂けても言えない、と二人は思っているに違いない。


「俺も特にめぼしい情報はない。白髪に赤目で血に飢える化け物だ、と。それに一昨日一番隊の副隊長のお陰で生き延びた一人の証言から、その容姿についての信憑性は上がったようだしな」

「ああ、涼ね。アイツ中々剣の腕いいんだよね……てか、浪士も数人やられてるみたいだけど小太郎んとこは大丈夫なの?」

「ああ。幸い仲間内からは被害は出ておらん。だがある過激派からは二人程出たらしくてな。仇をとるだなんだと言って活気付いてるらしい。…立場的には言ってはならぬことかもしれんが、動向に気を付けておけ」

「…ありがと」


万一の時を考えろと銀時に言われて敢えて背中合わせにしているので振り向くことはしないが、そうお礼を言えば桂がふっと笑ったような気がした。
それから適当に団子を食べなから雑談をした4人は喜助と桂、銀時と名前とに別れて帰路についた。


「…銀時」

「ん?」


万事屋の前は通り過ぎたのだが、屯所まで送ってくれるというのでその言葉に甘えて世間話をしながら歩いていた名前。

なんとなく話題が途切れた時に、ふと足を止めながら隣の銀時を見上げた。


「平行世界ってあると思う?」

「…パラレルワールド?」

「うん。別名“もしも”の世界」

「なんじゃそりゃ。もしも銀さんの髪がストレートだったらとか、もしもお金があったらとかか?」

「そ。その人がもしも、って思う数だけ平行世界が存在するの」


平行世界の説明は分かった。だが、それを今する意味が分からない。
隣に立つ死神を見おろしながら銀時がそういう顔をすると、喜助がねと言って話し始めた。…どうやらここからが本題らしい。


「吸血鬼騒ぎを調べてる中で、別の噂も立ってることに気付いたんだって」

「…へェ。なんの?」

「異世界への入り口」

「は?」

「あはは、急に言われたって分からないよねぇ。私も喜助に聞いた時同じ反応したよ。
最近、浪士達が天人の技術を用いて兎に角威力のある武器を作ってるらしくてね。ほら、あんたが記憶喪失になった時に勤めてた工場あるじゃん?」

「まさか…マムシZ的な?」

「そうそう。そんな感じの武器を作ろうとしてるんだよ。
が、如何せん、浪士は頭が弱い。計算なんか細かく出来ないし、天人の作ったものを見てプラモ感覚で作っちゃったもんだから、制御は出来ないし、威力は強すぎるし……で、その威力が強いってのが、冗談じゃない程強すぎた。次元を歪ませるぐらいね」


それを聞いて首を傾げた銀時に気付いた名前がなに、と同じように首を傾げた。


「そんだけ大事になったら普通ニュースにならねェか?ウソかホントは別として」

「主犯達が生き残ってたらね」

「…まさか、」

「飲み込まれた。世界の狭間に」

「……んなワケあるか。この小説はSFじゃねェんだぞ」

「そうね。でもただの“噂”だから」

「…なる程な。だが喜助はただの噂って思えなかったってワケか」

「そういうこと。で、浪士と言えば…」

「ヅラ、か。だから喜助はわざわざヅラと帰った。この噂の信憑性を確かめる為に」

「正解」


なんか厄介そうだなー
と頭をがしがしと掻くと止めていた歩みを再開させる。それに名前も続いて歩き始めた。


「喜助は、その噂と吸血鬼騒ぎに関連性があると見てると私は思う。関連性なんて全然わかんないんだけど」

「…だろうな。じゃなきゃ完璧に信憑性がない時点でお前に話しはしねェだろうよ。ちなみに俺も分かんねェ」


そんな会話をするうちに屯所の門が見えて来た。案外時間が過ぎるのも早いものである。


「あ、銀時。今週のジャンプ返すからちょっと入って待ってて」

「んー」


副長と喧嘩しないでよ?
と念を押して門をくぐると、その副長の怒鳴り声が聞こえた。



「テメェらどっから入ってきやがった!?」



正門です。…なんてオチにはならない。土方の声に緊迫感漂うものが満載だったし、なによりその土方が見える範囲にいないのだから。土方の声が聞こえたのは屯所内の中庭ら辺。名前は何を考えるまでもなく、隣で目を細めていた銀時の腕を掴むと瞬歩でその場から消えた。












―イケナイ密会―


(その話なら俺も聞いたことがある)
(アナタはどう思います?)
(確かに天人の技術ならありえんこともないが、低脳な浪士共の偶然の産物にしては出来すぎている。だが…)
(だが?)
(もし本当にありえるならば、銀時もどき騒ぎと関連があると俺は考える)
((…やっぱり考えるとそこに辿り着くのが自然なんスかね))

prev | next


▼list
▽main
▼Top