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いや、そうじゃなくって。




「…オイ。一つ確認したいことがあるんだが」


十四郎に見送られ、屯所を出た二人が向かったのはかぶき町。そこで頻繁に見られる車、バイク、バスや、電車。それにビル、マンションなど。列挙するときりがないが、こちら側の所謂“電気”を介した文明。それを一切知らない彼にとっては、そこには未知の世界が広がっていた。


『な、なんだ…、これは…』

『そちらにはございませんか?』


ある訳ねェだろ。そう呟いて落ちるんじゃないかという程目を見開いて驚いていた歳三に、苦笑しながら名前はそれでも丁寧に説明をしていった。そして粗方の説明も終わり、漸く落ち着いて来た頃。片手に人生初のソフトクリームを持っている歳三が、隣の名前にやや真剣な顔をして話しかけたのが冒頭の台詞だ。


「はい。なんでしょう」

「俺らは今、お前らが普段巡察してる道順を辿ってんだよな?」

「まぁそうですね」

「じゃあ聞くが、巡察に“一般市民の家の中”って入るのか?」


そう言って歳三はソフトクリームとは反対の手で目の前の扉を指した。彼の言うように二人は今ある家の玄関の前にいる。その家に行くまでにとても巡察の道とは思えない階段を上っていたのだが、ソフトクリームが垂れないように気を取られて気付かなかったようだ。今になって漸く、自分のいる場所を認識した歳三が驚いて名前に疑問を投げかけたと言うところ。そんな彼の疑問に名前は笑った。


「違いますよ」

「じゃあ何でこんな所に来た。十四郎から寄り道は禁止って言われてるだろうが」

「十四郎さんの許可は下りてます。…あ、ソフトクリーム垂れそうですよ」

「っ、と…てか何の為に…」

「貴方に会って貰いたい人間がいるんですよ」


隊服のポケットからティッシュを取り出して歳三に渡しながらそう言う。一方の彼はティッシュにちらりと不思議そうな目線を走らせてから会って貰いたい人?と呟いた。


「はい。でもまぁ正確には会わせたい人、ですかね」

「然程変わんねェよ」


それが変わるんですよねェ。そう呟いた名前の声は扉を引く音によってかき消されてしまったが、歳三には聞こえていなかったようだ。誰がいるんだとでも言うように眉間に皺を寄せて考えている。


「喜助ー?銀時いるー?」


そんな異世界の副長さんの様子を知ってか知らずか、名前は開けるや否やブーツを脱ぎながら声を掛ける。すると、奥の方からぺったらぺったらという音と共にやる気のない声が待ったをかけた。


「待て待て待て。それ逆だから。ここ俺の家。喜助は客人」

「この世の全ては神様のものでしょ」

「まだ引きずってたのか、喜助神様ネタ。ていうか神様不在だぞ」


え?マジで。そう名前が呟こうとしたその瞬間。不意に彼女の体が後ろに引かれ、同時にその顔の真横を何かが物凄い勢いで通り過ぎた。その“何か”を“刀だ”と目の端で捉えた名前が前の人間に向かって叫んだ。


「銀!!伏せやァ!!」

「!?」


時間にして約1秒。銀時が名前の忠告に逆らい、素早く木刀を引き抜いて前へと構えたその直後、


「…っと、…危なかったっスねェ…」

「…な、…」


鈍い金属音が玄関に響き渡った。だがそれは名前でも銀時でもなく、瞬き程の早さで二者の間に滑り込んだ浦原商店の店長だった。


「な、何で止めやがる!!」

「何で、と言われましても。彼には殺される理由が見当たらない。それとも、真っ先に心臓を狙ったのと何か関係があるんスか?

新選組副長、土方歳三さん」


そう言って喜助は深く被られた帽子の下から睨む様に歳三を見た。名前の後ろから銀時を狙って刀を突き出したのは他でもない、歳三だ。先に玄関をくぐった名前に続いて入った彼がまるで条件反射のように銀時へ刀を向けた、というのが今さっきの状況である。その理由は歳三しか知らない。とは限らないが。


「何で俺の名を知ってんだ」

「アナタが今のアタシの疑問に答えてくれるなら話しましょうか」

「……てめェは知らなくていい話だ。どうでも良いから早くどけ。死にてェのか」

「何を勘違いなさってるのか知りませんが、彼は指名手配犯じゃないっスよ?普通の人間だ」

「普通の人間?ふざけんじゃねェ。大体どこにそんな証拠が…」

「まぁまぁ落ち着いて下さい、歳三さん。取り敢えず刀を下ろしましょ。これじゃあ話も出来ません」

「てめェが退くなら下ろす」


未だにギチギチと鳴る二本の刀、とは言っても力を入れているのは歳三だけだが、喜助はその二本が触れている部分をちらりと見て、分からない人だなァと溜め息を漏らした。


「名前さんにも言われてなかったっスか?」

「…何をだ」

「刀をお牽き下さいって」


歳三の目が僅かに見開かれた。あの時の屯所内での出来事をこと細かく、明らかに部外者である怪しい男が知っていたのだから当然だろう。だが同時に歳三の頭には昨日の会話が蘇っていた。


『…断ると言ったら』

『懸命な判断とは言えません、とだけお答えしましょう』


「………それでも尚、断ると言ったら」

「懸命な判断ではない、と言っておきましょうか」


試しに言ってみれば名前と同じような答えが返って来る。しかも彼女よりも更に牽制を含んだ言い方で。それによくよく冷静になって考えてみれば玄関の入り口はほぼ自分が塞いでいたも同然だ。羅刹らしき男がいる廊下も、とてもじゃないが真ん中に立っている時点で二人目が通るのは難しい。そんな中をコイツは、物音どころか風も立てずに間に割って入った。…まるで名前のように。実力は同じがそれ以上と見てまず間違いはない。それと羅刹の風体をする男も、奴らのように禍々しい雰囲気を纏ってはいないし、寧ろ色んなことに無気力に見える。今の所は、だが。狂い出したら始末すればいい。取り敢えずはこの白髪男のことを聞く方が先決だ。だとしたら、ここは昨日と同じように下ろすべきだろう。そう考えを巡らせた歳三はゆっくりと刀を牽いた。


「ありがとうございます。それから歳三さん、一つ宜しいでしょうか」

「……なんだ」

「貴方、」

「待て喜助。それは俺も気になってたんだ。俺が言う」

「あ、ハイ」


刺されそうになった時からずっと黙っていた銀時だったが、喜助の言葉に急に反応した。銀時のそんな様子に、自分と考えてることは同じだろうと思った喜助は彼に先の言葉をあっさりと譲った。だが、直後に喜助はこれを珍しく後悔する。


「オイ、イケメン土方。お前、いつまで名前のこと抱き締めてんだコノヤロー!!」




























―いや、そうじゃなくって。―

(……銀時さん。なにを言ってるんスか?)
(お前が言いたかったことを代弁してやったんじゃねェか)
(違いますよ。アタシが言いたかったのはソフトクリームが落ちた拍子に彼の着物の裾に着いちゃってるってことっス)
(……で、でもォ!?だからと言ってェ!?ずっと名前を後ろから…)
(銀時さん)
(な、なに?)
(僕、間に入って後悔したの今が初めてだ)
(………)
(………)
(キャ、キャラが違うゥゥウ!!敬語!敬語忘れてない!?)
(空気を読めない銀魂側の人間は次回からはでませんので)
(待ってェェエ!!)

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