×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

今、いる世界。参




正直、本当に困った。鬼道が妙に上手いというだけで、実力は未知数な死神。今まで私は刑軍の人達や真子達と組手をやっていて、相手の斬魄刀の能力が分からない相手とは戦ったことがなかった。もし、戦ったとしてもそれは自分より明らかに格下の死神であって解放されたとしてもなんら困ることはなかった。だが、今自分の目の前にいる死神は自分と同等或いはそれ以上の実力者。下手を討てば死が見えるだろう。だったらどうすべきか。そんなの決まってる。


「【遊べ 風車】!!」


最初から全力でやれば良いのだ。


「うわぁ、嬉しいねぇ…最初っから解放してくれるとは…」


たとえ、これで霊力の無駄遣いだったとしても構わない。油断してあっさりと白伏に倒れているのだ。前線から遠のいて約十三ヶ月。霊圧に於いての戦闘の勘が鈍っているのは確実だ。念を入れすぎるに越したことはない。…しかし。霊力の無駄遣いなど取り越し苦労だったとヤツの解放を見て思った。


「【咲き誇れ 紅桜】!!」


鞘から引き抜きながら放たれた解号と同時、刀身が不気味に紅く色付くのを見て紅桜は明らかにこいつの斬魄刀からとったんだと分かった。…それにこの禍々しい程の霊圧もそれを彷彿とさせる。いや、逆か。ヤツの斬魄刀が仁蔵の持つ紅桜へと影響を与えたのか。もっと言えば村田鉄矢に。


「さてと。俺の斬魄刀を見て一気に色んなことが分かったんじゃないのかな?」

「ああ…今回の一件、ただお前のお遊びだけじゃなく、春雨の意思も関わっているということもね」

「…本当に、浦原部隊長そっくりだねぇ。それが、戦闘センスにも影響してるといいんだけどな」

「心外だ。私とアイツを一緒にするな。それに、戦闘に関しては喜助じゃない。夜一だ」

「そっか、そっか。名前ちゃん、四楓院隊長の義娘だもんね。……ってことはさ」


もっと期待出来るんじゃん?
その言葉が聞こえた時にはヤツの姿はそこにはなく。視界の端に紅色が映った。
瞬間、甲高い金属音が響く。
西園寺は私の後ろへ周り首を狙ったらしいが、私はそれを見越して右の小刀でそれを防ぎそのまま後ろ手に左の風車でヤツの心臓を狙った。


「うわっ、と…あぶな」

「の割りには余裕に見えるんだけど」

「あはは、バレちゃった?でもやっぱり君は楽しめそうだねぇ。今の完全に読んだんでしょ?」

「むしろそうしますって言ってたようなもんじゃないか」

「……やっぱりいいなぁ…久々に楽しめそうだよ」


その瞬間、西園寺の空気が変わり、此方も迷わず霊圧を上げる。私も久々の解放の戦闘だ。加減がイマイチ鈍ったような気がするが、たかが十三ヶ月だ。今まで積み上げてきた二百年の年月がある。細かい修正は戦闘中にやろう。
だけど、幸か不幸か細かい操作をやってる暇なんてなかった。
繰り出されるのは隠密でも真子達でも見た事がない剣。身体のバランスや力の入れ具合から見て左半身を狙っているだろう思われた剣先は直前で向きを変えて顔面に来たり、それを避けてこっちが後ろで左から右に持ち替えた薙刀を横に薙ぎ払えば飛び上がって彼はそれを避け…まぁ、ここまでは定石通りだったのだが、その後だ。避けてそのまま身体を風車(ふうしゃ)のように回転させて上下逆転となって頭から落ちている状態でまさかの白雷。と、こっちがしゃがんでそれを避け左に持ち替えた斬魄刀を突き出せば、薙刀の柄の部分に器用に乗る始末。ふざけんなと左手はそのままに右足で蹴り飛ばせば何故かそれは避けずにまともにくらいながら10メートル程飛んで行った。まぁ、利口と言えばそうだ。今の蹴りはまともに受け止めるとそれなりの衝撃がある。勢いのエネルギーを止めずそれを利用して後ろに飛んだのはむしろ大正解ともいえる。やはり夜兎と日常的に戦闘をしている彼には組手系で行くには少し不利か。


「奇遇だね。僕も同じこと考えてだよ。刑軍軍団長直々の体術、加えて檻理隊の副部隊長。ともなると相当な体術の使い手だ。つまり、ただの戦闘馬鹿と組手やってるだけの俺では君より不利」

「なにが同じだ。私はお前の馬鹿みたいに多い組手の戦闘数を考えてたんだけど」

「でも。だからどうしようか、って考えた手段は同じだと思うんだけど?」

「……そうね」


斬魄刀を利用した死神としての本格的な戦い。さっきちらりと下を確認したが、銀時は死にかけだった。心配だけど、心配じゃない。彼は絶対に死にはしない。治療は後でいくらでも鉄裁にやってもらう。神楽新八、桂もまず大丈夫だろう。あの連中の悪運の強さは呆れる程だ。ただ、心配なのは私達の霊圧が彼らに及ぶこと。ここから船まではそうそう遠くない。早めに終わらせよう。


「【風刃】」


地面と平行に斬魄刀を払うと、視覚化される程に圧縮された風が刃の形となって西園寺に向かって行った。それは彼に近付いて行くうちに周りの空気を巻き込み更に刃の数を増やす。最終的にはとてもでは避け切れない数になる。さて、彼はコレをどう対処するのか。すると、西園寺は不敵に笑みを浮かべた。


「【焔陣】」


なんとも相性が悪い。
彼の斬魄刀は炎熱系のようだ。炎は確かに風を送れば消すことが出来るが、それより弱ければただの援護射撃にしかならない。今の私の攻撃だって大して霊圧を込めなかったので彼の周りに出来た炎の壁がより強靭になった。なんてついてないんだ、私。


「風系だったんだ、名前ちゃん。相性良いね」


ふざけるな。
にっこりと笑って言う彼に初めて殺意が湧いた。でも、本当にマズイ。真剣にどう戦うか考えていかないと、下手を打てば…死ぬ。しかし、彼が考える時間を与えてくれる筈もなく、戦闘は当然続く。その間に幾つか撃っては見るものの、イマイチ有効と言えるようなモノがない。そうやって、本格的にどうしようかと苦し紛れに鬼道を撃った時だった。


「…な、アレは…」

「あーあ、もう来ちゃったか。残念」


段々と大きくなる轟音に下を見れば一つの戦艦が銀時達のいる船に近付き、次々と梯子を渡していた。その戦艦に春雨のマークがあるのを見て愕然とした。確かに今回の一件は春雨絡みだと言ったが、こんなに大きく絡んでいるとは思っていなかった。だから、まさかこんなにも大々的に春雨の戦艦が来るとは予想だにしてなくて。戦闘そっちのけで下を凝視してしまった。


「俺さ、今回紅桜の開発も手伝ったけど本当の目的はそこじゃあないんだよね」


何を言い出すのか、こいつは。不意に紡がれた言葉に視線を彼に戻したが、手の中の斬魄刀をコロコロと遊びながら言われた言葉に眉を潜めていると、不意にその動きが止まり、代わりに彼の人差し指が私の方へと向いた。


「君の拉致」

「………は?」


あ、ヤバイ。
視覚的にかける縛道にかかったと思った時は既に彼は目前へと迫っていて。しかし、拉致されるなど無様な真似をされるワケにはいかない。動かない身体の中、残された最後の手段に踏み切ろうと霊圧を一気に上げて叫んだ。

いや、叫びかけた。


「やめておけ、名前。銀時達が消し飛ぶぞ」

「よ、夜一!?」


突如、右手を掴まれたことによって卍解は為されなかった。ていうか驚きで霊圧が萎んだ。それは見まごう事なく我が義母上で、ついでに首の辺りをトンっと軽く叩かれると身体の拘束が解けた。いつの間にか西園寺は結構離れた位置に尻餅状態で座っていて。きっと夜一が間に入り込んだと同時に蹴り飛ばしたんだ。瞬神夜一の異名は健在か。


「…四楓院夜一」

「久しぶりじゃのう、西園寺。どうじゃ宇宙での生活は。俄死神共の成長も嬉しい限りか?」

「怖いねぇ、次々と事実を露呈されてく感じ」


もう卍解をするつもりはないのに未だ私の腕は夜一に掴まれたまま。しかもそのまま引っ張られて彼女の後ろに下がらされた。いや、一体なんで?そう思って口を開こうとしたのだが、またもやそれは遮られる形となった。


「生憎じゃが、おぬしの能力は知っておる。既に対策済みじゃ。名前は渡さんぞ」

「…あーらら、本格的にバレてんのか」


能力?対策済み?
おいおい、私を置いてかないでくれ。完全に蚊帳の外に出されてしまって最早口も挟めなくなってしまった。


「…まぁ、今回はいいや。もう時間も無いみたいだし。四楓院隊長に邪魔されちゃったし」


残念だなぁ。そう呟くと彼は斬魄刀を仕舞って、再び此方を見た。


「じゃあね、名前ちゃん。また今度」


そう言って手を振ったのを最後に彼は姿を消した。



























(…説明、ありますよね。四楓院隊長)
(ああ、後でしてやる。じゃが今は、下を手伝うのが最善じゃな)
(うわっ、そうだ。忘れてた)
(…さてと。久しぶりに暴れるかのう)

prev/next

64/129


▼list
▽main
▼Top