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今、いる世界。弍





西園寺祥之助
・宇宙海賊春雨第零師団団長
・第零師団の主な業務は春雨にとって有害な人物の抹消。及び有力者の引き抜き、と言う名の拉致
・得体の知れない刀を持ち、それは西園寺祥之助の言葉により形を変える
・言霊を操り、西園寺祥之助の掌からそれに応じた攻撃が出る
・当初は団長だけかと思われた上二つの能力はある時期から急に第零師団員全員が出来るようになっていた
・第零師団の主な構成要員は幻族


とある筋から仕入れた情報にはそんなことがあった。ちなみに言っておくが喜助ではない。勿論、喜助も知っていたのだが、人間から見ればどんなもんかと気になり暫く情報を集めていたらこんな感じで纏まった。そしてコレを読めば誰だって分かる。


「…死神」


言霊を操るだ、言葉により形を変えるだは鬼道と斬魄刀を指しているのだろう。気になるのは、四つ目の項目の“ある時期から急に第零師団員全員が出来るようになっていた”、だ。ある時期というのは恐らく私が退と夜な夜な危ないデートに行った時と同じと見てまず間違いない。


「……だけど。困ったことにその向上の仕方が分からない」


喜助も真子達の研究をする傍ら調べているのだが、未だ分からないというのだからかなり隠れた方法、或いは偶然によって産み出された方法なのだろう。
と。まぁ、余所見はコレぐらいにしよう。そう独りごちて手元の資料を死覇装の袂にしまった。私が今いるのは、港にごく自然に泊まっていた船内。真選組が来る前に銀時を連れて万事屋へ移動し、そこで全力で治療に当たり、生命維持ラインを確保した所で後は妙に任せてコッチに来た。本当は意識を取り戻すまでいたかったのだが、定春だけが地図を持って帰って来たのを見て、飛び出して来てしまった。宇宙最強とも言われる戦闘力を持つ神楽。そう簡単にはやられないことは分かっているが、普段は無邪気に遊ぶ子供だ。地図を残す機転は見事なモノであるが、何処かで失態を踏む可能性は十分にある。なので、慣れない回道を使ってぶっちゃけかなり疲れた体に鞭打って、瞬歩で駆けつけたのだ。
そして、見張りに立つ船員の目をすり抜けて船内に侵入。神楽の霊圧を探しながら歩き回っているのが今の状況である。


「にしても…広いな、此処」


神楽の霊圧が何処かにあるのは大体掴めているのだが、如何せん非常に入り組んでいて中々思うように進めない。やはり潜入操作には事前調査が大事だと実感したー…そんな時。


「…アンタ、ココが何処だか分かってるんスか?」


不意に音もなく何か硬いモノを背中に、つまり心臓の真裏に当てられるとそんな言葉が聞こえて来た。語尾はどっかの神様のようで非常に残念だが、私に近づくまで一切立てなかった足音と消していた気配には素晴らしいの一言に尽きる。恐らく彼女はこの船内で相当高い地位にいるのだろうと推測を立てて此方も返事をすることにした。


「船の中」

「ケンカ売ってるんだったら買うっスよ」

「いくらで?」

「…勿論、」


この鉛玉一個で、に決まってるっスよ。その言葉と同時に、乾いた音が鳴り響いた。正直、この零距離で避けられるか不安はあったが、身のこなしと背中にある硬いモノから、紅い弾丸と異名を獲る鬼島また子だということと、その硬いモノが拳銃だろうということが分かっていたので、撃つ瞬間に僅かに揺れる銃からタイミングを図り横に避けた。まさか避けられるとは思っていなかったのだろう。横に避けながらまた子の方を向くと、目を見開いて驚いていた。だけど、そこは鬼兵隊の幹部。次の瞬間にはそんな表情も消え、続け様に6発も撃ってきた。


「さてと、…最初のは確かに危なかったけど、弾のムダ遣いってそろそろ気付いた?」


だけど、撃つ人を視界に捉えての状態なら弾を避けることなど造作も無い。全て軽く避けてにこりと笑いながらそう言うと、はっとしたようにまた子の目が再び見開かれた。


「…あんた、まさか…副長護衛の…」

「……?…」


なんか、おかしい。
自分が撃っていた人物が実は天敵である真選組だった、ということに驚いているような感じではないのだ。


「武地先輩ィィイ!!見つけたっスよ!!四楓院名前っス!!」

「……うん。なんとなくそうだと思ったけどね。なんで?」


そう。まるで、漸く見つけたという感じだったのだ。現に彼女は耳に手を当てながら何やら無線らしきものに怒鳴っている。しかし、残念ながら私は殺される理由はあっても、探される理由はない。むしろ、私たち真選組が鬼兵隊を探す方が合理的だ。


「四楓院名前!!見つけたからにはもう逃がさないっスよ!!」

「…それ、真選組の(私の)セリフじゃない?」

「あのチャイナ娘と目的は一緒かどうか知らないっスけどこっちにはコッチの都合があるんでね」

「完全に無視だね。私泣いていいかな」


それも無視されたが、もう一丁の銃を出しながら呟かれたまた子の言葉に思わず眉が寄った。あのチャイナ娘、とは神楽のことだろう。神楽がこの船に乗り込んだ時に一戦交えたのかもしれない。そして今の話しぶりから神楽のことを探していないとなると、


「…捕らえたのか」

「見られちゃいけないモノを見られたっスからね。二発撃ち込んで眠ってもらったっスよ」

「……そう」


その言葉が終わった瞬間には私の姿はまた子の視界から消えていて。彼女がその事に気付いた時には既に、私は刀が刺さる寸前まで迫っていた。…と言うのは語弊がある。それぐらいで認識出来るようにワザと速度を落としたからまるで漫画のようなタイミングが出来上がった。銀時に気を取られたとは言え、神楽を守れなかったのは私の責任だ。夜兎であるから怪我の心配はないだろうけど、痛いものは痛い。なので目には目を、歯には歯を。というハンムラビ法典に私も乗る事にして神楽の仇を撃つ事にしたのだ。そしてこの短い間だけで三度目の瞠目をするまた子に微笑むと、刀を彼女の首に向かって突き刺した。……かった。


「【縛道の六十ニ 百歩欄干】」

「!?」


しかし、それは予想だにしない言葉によってあっさりと遮られてしまった。

そしてただ、驚いた。
何に驚いたって、鬼道が普通に使えるヤツがいることに、だ。そしてなんの違和感もなくまた子が避けたことにも。

だけど、そんなことを考えている間にも容赦なく降って来る鬼道を避け切れず、二本程まともにくらってしまった。


「!…しまっ…」

「そうだね。でも、もう遅いよ」


全ての鬼道は自分の霊圧を逆回転同量でぶつければ相殺出来る。それを咄嗟にやろうとしたのだが、何時の間にか目前に見知らぬ男がいて。そいつが身に纏う黒い着物に言い知れぬ不安が湧き上がった。

…そして、


「バイバイ、"副部隊長"」

「!?な、なんでそれ、を…」


その男がにっこり笑いながら呟いた言葉に目を見開いたのも束の間、同時に襲って来た猛烈な眩暈にぐらりと身体が傾いたのを最後に私の意識は途切れた。



























(!ぅわっ…)
(何しとるんじゃ、喜助)
(いやぁ、手が滑っちゃって…)
(茶碗を割るとは縁起が悪いのう)
(まさか、名前さんに…)
(ない)
(…へ?)
(彼奴に限ってそれはない。たとえ窮地に陥っても打開する策は全て叩き混んである。…じゃから、そんな顔するな)
(……そっスね。スイマセン)
(それにいざとなれば、儂が出る)
(え、僕が…)
(おぬしは充分過ぎる程に霊圧を知られておるじゃろう。…奴は元、"蛆虫"じゃからのう)

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