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サボリ魔だって仕事はする。





「…誰でィ。この女は」


そう呟いて怪訝な顔をしたのは一番隊隊長、沖田総悟だ。珍しく真面目に仕事をした沖田が帰って来たのは夜中の1時もとっくに過ぎた頃。…名前が電話を切ってから約30分を過ぎた頃である。どうやら余計なことに首を突っ込むタイプの沖田が、昼間に一度も出なかったのはお仕事だったようで。…まぁ今年は夏に吹雪が来るのでは、と心配になる。そんな彼が大浴場へ向かおうと廊下を歩いていると、見慣れない顔が縁側の柱に寄りかかりながら寝ているのを発見。…しかも女だ。勿論、名前であるのだが日中いなかった彼にとっては《単なる見知らぬ怪しい女》である。


「……誰でィ。この女」


再びそう呟くと彼女の近くにしゃがみ込み顔を覗き込んだ。彼女はどちらかと言えば可愛い系の顔だ。風呂上がりということもあって少し濡れていて顔にかかる髪。その隙間から見える月灯りに照らされた顔は十分べっぴんの部類に入る。

…―へぇ、案外整った顔してんじゃねぇか。

始めこそ怪訝に思っていたが、次第にそれも興味へと変わった沖田はそう思いながら名前の顔に手を伸ばした。
…が。
不意にその腕を掴まれた。


「…何やってんだ、総悟」


土方だった。
どれだけ気配を消して来たのか、はたまたそれ程目の前の女に興味を掻き立てられていたのかは定かではないが、いつの間にか沖田の隣には着流しを着た土方が立っていた。


「それはこっちのセリフでさァ」

「…どういう意味だよ」

「いくら副長の俺がいない間だからって、女を屯所に連れ込むのは良くねぇですぜ?土方さん」

「副長俺ェ!!つーか俺の女じゃねェよ!!」


そう叫ぶ土方を見て沖田はニヤリと笑った。当然、彼だってそんなことがある筈もないことはわかっている。が、今は土方を焦らせることが出来ただけでご満悦、というところであろう。


「なに言ってんでさァ。ほら、コイツが着てるこの着流し。土方さんのじゃねェですか」

「……忘れたんだよ、そいつが。ていうか…真選組が泊まり込みの団体だってのを知らなかったんだよ」


危うく…ていうか、一瞬沖田のペースに完全にはまった土方は、煙草をふかして落ち着きを取り戻しながら冷静に答えた。


「ほら、昨日任務について話したついでに近藤さんが言ってただろ」

「ああ…そういや言ってやしたね」

「それがコイツ……四楓院名前だよ」


そう言って名前を見る土方だが、その目には心なしか呆れが混ざっている。


「それにしても珍しいでさァ」

「…何がだよ」

「いくら補佐が主たる仕事だからって、護衛兼補佐に女…―しかもこんな華奢な奴を採用しちまうなんざァ…」

「…らしくねェ、ってか?」

「……いや、気持ち悪ィでさァ。あ…元からか」

「テメェ、マジでいっぺん死ぬか?」


最早、瞳孔開きまくりの土方。先程落ち着く為に吸った煙草はあまり効果が持続しなかったようだ。
そんな土方をいつも通りの無表情で見ながら沖田は立ち上がり、口を開いた。


「…精々、ソイツに足を引っ張られないように気を付けて下せェ。護衛を護衛して死にました、じゃ隊士に示しがつきやせんぜ?」

「アホか。コイツだってある程度の実力があって入って来たんだぞ。お前だって知ってんだろ?“特別枠”の試験内容」

「そりゃあ、知ってやすよ。…俺ァ、受かる奴なんざいねぇと思ってやしたからねィ。

………例え、腕の立つ野郎でも」


そう言うと沖田は名前をチラリと見てから再び大浴場へと足を進めた。それを見た土方は疲れたように溜め息を吐くと、起こす為に名前の顔をペチペチと叩く。


「……あ。それから」


不意に前を向いたままの沖田が再び話題を振ってきて、土方はなんだと言わんばかりに彼の方を向いた。


「狸寝入りは関心しねぇなァ」


それだけ言うと今度こそ本当に沖田の背中は廊下奥の暗闇へと消えて行った。驚いた様に目をパチクリさせる名前とそれを無表情に見つめる土方を残して。

































(…驚いた。気付けるんだ、あの子)
(あいつは気配だけには敏感だ)

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