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親子の形もそれぞれ。





「長官。お約束通り、私の頼みをお一つ聞いて頂けますね?」

〔ちょーっと待とうか、名前ちゃん。確かに"どうにか"したら何でも頼み聞いてやるっつったが…お前、なんかしたか?〕

「御冗談を。私が手を加えなければ、今頃バカ皇子を含め、全滅ですよ」

〔嘘を吐くんじゃねぇよ。頑張ったのはハゲ一人じゃねぇか〕

「貴方、まさか本当にあの量のエネルギーを夜兎一人で止められたと思ってるんですか?しかもハゲ」

〔いや。ハゲはカンケーないと思う〕


結局まっちゃん砲は止める事が出来ず、私と白が頑張る羽目になってから約5分後。真選組トップ3が報道陣やらに取り囲まれ総悟がそれに蹴りをかましているのを遠目に見ながら私は長官に電話を掛けていた。


〔オメェ、だってずっとトシの隣にいたじゃねぇか〕

「久南副隊長がいたでしょう」

〔そういやァ、白ちゃんはいたなァ…つーことはお前やっぱなんもしてねェじゃねぇか〕

「確かに。鬼道を放ったのは白ですが、詠唱を唱えたのは私です。前にお話したでしょう。白は白打は得意だけど鬼道はそこまでだ、と」


あの時。本当は自分で彼らの所に行き九十番代の鬼道で相殺したかったのだが、副長や真選組隊士の身の安全が確実とは言えなかったあの状況では生憎そう言うわけにもいかず、苦肉の策と言うモノをとった。


{じゃあさぁ〜名前が詠唱言ってよ}

『…え、』

{ホラ、前にやったじゃん!電話口で…}

『んーやり方は分かってるよ。ただアレは三十番代だったし…』

{だーいじょうぶ!!アタシ達ならやれる!!それに、もしダメだったら虚化でも何でもしてどうにかするから}

『いや、それはまずいから。補助鬼道の方をやろう』


喜助が私達に渡した携帯は少し特殊で、お互いの霊圧を送ることが出来る。しかも喜助の方に全ての所有者の霊圧の状態が常に分かるようになっている。それで何の利益があるかと言えば、それだけで今その人がどういう状況に陥っているのかが容易に分かるのだ。特に虚化してしまった時など、大抵我を失っている時が多いから察知が早ければ早い程良い。そんなワケで渡したのだが、最近リサや真子やひよ里からプライバシーの侵害やとかストーカーやとか文句が出始めている。まぁなんだかんだ言って必要なのは分かっているから持ち歩いてはいるが。
で、話は戻るが、そのプライバシー侵害携帯を使って白は私にかけて来たのだ。そして彼女が言う電話越しの詠唱だが、コレは私が白の霊圧と同調出来なければ成功しない。ここで、私の特殊体質というか生まれつき持っている特技を説明すると、他人の霊圧と同調、ひいてはその人の斬魄刀の解放まで出来るのだ。つまり、この霊圧送信機能を備えた携帯ならば私が白の霊圧と同調しながら詠唱を唱え、後は彼女がそれに自分の霊圧を上乗せすれば見事に鬼道が撃てると言うわけで。
ていうか、兎に角白に虚化をさせる訳にはいかない。と言うわけで。以前試した時は大成功だったので、今回もと思って頑張った結果成功した。しかし物凄く疲れるというのが欠点で、今も座り込みながら長官に電話している状態なのだ。なのに、このオヤジはなんもしてないと言って来た。

正直、かなりウザい。


「…ね。そんな感じで私も頑張ったんですよウザいです」

〔心の声がだだ漏れだよォ、名前ちゃん〕


ワザとだ、クソ野郎。
その呟きに対し、少しテンションが下がった声で頼みって何だと長官が尋ねて来たから、後はコッチのもんである。


「栗子を外に出してあげて下さい」

〔……グルだったのか〕

「栗子も悪いみたいに言わんといて下さい。私が説得する、と彼女に言ったんです。御息女に非はありません」


だけど、最早聞く耳持たず状態になってしまっている警察庁長官。栗子は騙されてるだ本当はパパが大好きな筈なのにだ名前が反抗期だ浦原の教育方法はダメだと、何故喜助が出て来たのかは分からないが、兎に角娘に彼氏がいるのが許せないらしい。そんな状態の彼に盛大に溜息を吐くと、長官と呼び掛けた。


「栗子だって一人の女なんですよ。好きな人だって自然と出来るに決まっています。貴方は父親としてそれを暖かく見守るのが筋と言うモノなのではないのですか?」


流魂街生まれの私には親はいない。ただ、親代わりならいた。その人とは百余年前に死別してしまったが、生きて私の側にいたのならきっとこうしてくれた筈だ。私に、生きる術を一から十まで教えてくれたあの人ならば。


『私の教えを守ることも大切ですが、一番大切なのは…名前。貴方の気持ちなんですよ』


こう言ってくれた人ならば。きっと。


〔…名前。まだ親じゃねぇお前には分からねぇかもしんねぇが、親ってのはなぁ、どうしようもなく子供が可愛いんだよ〕

「……そのようですね。ですが、栗子の気持ちはどうなりますか?それを蔑ろにして栗子が喜んで貴方と奥様と誕生日パーティーを出来ると思いますか?…長官。貴方が栗子を可愛がっているのは良く分かります。しかし、今の貴方の言動は最早気持ちの押し付けにしかなっていません」


言い過ぎたか。
言葉と同時にそんな思いが過ったが、コレばかりは言うべきだろう。いつまでも栗子を長官の理想通りに動かそうとすれば、近い未来栗子は道を逸れるかもしれない。彼女の良さはあの純粋な所だ。煙草をふかしながらバイクになど乗って欲しくない。


〔…そこまで言うんだったらお前…策はあるんだろうな〕


なんて思っていればやたらと思いつめた長官の声が耳に入って来た。一体彼の未来予想図では栗子はどうなってしまったのか。それを想像して吹き出しかけたのをなんとか押し込んだ。


「ちゃんと栗子と話し合うのが最善かと思いますよ」

〔それなら今回だって…〕

「いいえ。貴方のは単なる命令です。ちゃんと栗子の意見も聞いてあげなさい」


その私の言葉に唸りながら長官が電話を切った後、十分後。栗子の嬉しそうな声が私の耳に飛び込んで来た。





(今日外出を控える代わりに今度、デートに行けることになったでございまする!!名前のお陰でございまする!!)
(あら、良かったですね。デートは何処へ行かれるのですか?)
(遊園地でございまする!!)

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