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厄介っスねぇ。





「え?保存するんですか?コレを?」

「ああ。上からのお達しでな。どっかのお偉いさんが欲しがってるんだと」

「うぇー…マジですかィ…つーか一体何処のモノ好きで?」

「確か…ヘタ?フタ?いや、違うな…ミタ、じゃ家政婦だし…バカ?じゃあまんまだな…」

「ハタ?」

「ああ、そうそう。ハタ皇子。良く覚えてたね、名前ちゃん」


喜助の哀れみの視線を受けてから十分後。嫌々ながらも途中で会った新七と合流して現場に辿りつけば、まさにジャックされてる筈の銀行から頭が激しくさすらってるオヤジと可愛らしいサーモンピンクの髪を持つ神楽がなんだか親子喧嘩のようなモノをしながら出てくるのが見えた。神楽には兄がいるらしく、彼女の話によればその兄も髪はサーモンピンクで三つ編み。ちなみにお母さんは長くて綺麗な髪だったと聞く限りあのさすらい方は劣勢遺伝子だろう。
……じゃなくて。
大分話が逸れたが今私達は銀行内の壁に貼り付けられている気持ちの悪い物体の前で話している。コレは人間に寄生するエイリアンらしく、銀行ジャックも寄生された人間によって起こされたらしい。そしてそれに見事に巻き込まれたのが万事屋トリオらしいがさっき見た時は特に怪我もなさそうだったので大丈夫だろう。


「…しかし星海坊主ってのはいつも、こんな化け物とやりあってんですかィ?どっちが化け物だかわかりゃしねーや」

「え?星海坊主、って今朝方屯所で局長と話してた…」

「そうでィ」

「……どっかにいた?」

「何言ってんだ。お前、さっき見ただろ」


どうやら、私がさすらってるだなんだと言ってたのは星海坊主だったようで。まさか神楽の父親がかの有名なエイリアンバスターだったのかと驚いたが、私は星海坊主が父親だったことの方に驚いた。だって。神楽が娘だということは彼女の戦闘力の強さから納得出来るが、屯所でも今さっきも見たが星海坊主のあの目はとても父親の目とは言えない。


「…男って奴には二種類の血が流れてる。一つは家族や仲間自分の巣を守り安寧を求める防人の血。もう一つは巣から出て獲物を求めさすらう狩人の血だ…あの男の目は狩人というより獣に近い。大人しく巣に収まっているタマではあるまいよ」


と、思っていたら不意に局長がそんなことを言った。一瞬、心を読まれたのかと思って思わず局長を見てしまったが、思い返せば総悟が星海坊主に対して父親とは思えないぐらい生活感がないと言ってた。局長はそれに返事をしたのだろう。それに何処か納得したような顔をした総悟をチラリと見た後、彼はしんみりと呟いた。


「…あの娘、もしかしたら今まで寂しい思いをしたのかもしれんな」


そう言われれば、思い当たる節はある。
以前、神楽と街を歩いていた時のことだ。その日私は非番で神楽と妙を誘って巡察中に見つけた老舗の甘味処で女子会なるものを開いていた。そして私が誘ったからと二人の分も含めた支払いを済ませ、次は小物屋に行こうと歩いていると、前から仲の良さそうな四人家族が歩いて来るのが見えた。妹と兄が手を繋ぎ、両親が二人を挟むように歩いている。


『……』

『どうかした?神楽ちゃん』

『………』

『…神楽』


現世ではよく見る、何処にでもいる家族の光景だ。神楽はそれを立ち止まってじっと見つめていた。そんな神楽を不審に思ったのか妙が問いかけたのだが無反応。私も呼び掛けたのだがこれも無反応。なので少し強めに肩をポンと叩けば、はっとしたように目を見開いて私達を見た。


『な、何でもないアル!!さっき食べた餅が歯に詰まっただけネ!!』


私達の顔が心配そうな表情になっているのに気付いたらしい彼女は一気にそう言って取り繕うと、両サイドの私達の腕に自分の腕を絡めると早く行くヨ!と言って引っ張った。あの時はもしかしたら、と推測だったのだが局長の言う通り、家族の温もりに憧れてたのだろう。幼い時に亡くした母、行方知れずの兄を思って。


「…今度はお泊り会でもするかな」


再びエイリアンの死体の話題へと戻っていた総悟達を見ながらそう呟いたこの言葉。


コレが実現不可能な未来になるかもしれないと頭を過ったのは、約半日後に掛かって来た銀時からの電話だった。











(餓鬼一人解雇した)
(………理由は)
(…親子ってそう言うもんだろ)
(……さぁね。貴族でもない限り、死神が唯一知り得ない事だから)

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