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一番隊副隊長、新田涼。






ぶっちゃけ涼は現世で言う、霊感があるという部類の人間だ。虚なんて余裕で見えるし、恐らく死神も見える。真選組に来た当初、私はその霊圧の高さに暫く警戒していたぐらいだ。だから虚も寄って来たのだろう。美味そうな魂魄だとでも思って。だが、不幸中の幸いか。今夜は銀時との呑み帰りで偶々ラヴが側にいた。だから急に現れた虚に首を傾げながらもきっちり片付け、涼を真選組に送って、記憶置換の鬼道を掛けた。
と、今さっきラヴ本人がメールを送って来た。だが、さすが酔っ払いというか。記憶置換の掛け方が余りにも御粗末過ぎて、虚に会ったことは記憶から消えていないし、それに何故一瞬で移動出来たのかも書き換えられていない。なんと言うか、ラヴが現れた部分だけ記憶が抜け落ちましたと言う感じなのだ。
とまぁ、大分話は逸れたが、つまり涼が恐竜だと言ったのは虚のことなのである。ていうか恐竜は白亜紀に絶滅したからいるワケがない。


「…涼君って霊感あったんだ」

「うん。私がヒヤリとするぐらいね」


終と右之助が去ってから、私は涼が虚を見た場所へと向かおうとしていた。一応魂葬後にラヴが見回ったと言っていたが、最初から酔っ払いの言うことなど当てにはしていない(ちなみに涼にはきっちり私が記憶置換の鬼道をかけた。酔っ払いとは違ってきっちりと。大事な事だから二回言いました。)それに雑魚虚など態々喜助に報告する必要もないし、態々喜助の手を借りる程のことでもないので、自分で行こうと死覇装に着替えて部屋を出ようとしたその時。


『…どないした、退。ていうか報告ならまた後にしてくれる?私今から…』

『一緒に行くよ』

『……悪いが安全とは言えない場所に連れてくワケには…』

『いいの?副長にバレちゃうけど』


一瞬喜助が変装してるんじゃないかと疑うぐらいにタイミング良く私の部屋の前に現れた退。彼は真選組内で唯一私が死神だと知る人物なので、まさか着いて行くなどと言う訳がないと思っていたのだが退の口から出たのはその真逆の台詞で。確かに記換神機とか白伏とか退を諦めさせる色んな手段はあるのだが、どれも不自然に退の死体…じゃなかった、退の身体が倒れることになるので副長にバレるのも時間の問題。しかし彼を連れて行けば彼の情報収集の護衛に着いて行ったとかなんとかで誤魔化しが効く。退はそれを分かっている。そういう彼のズル賢さに内心頭を抱えたくなったが、軽く溜息を吐くだけに留めると、退を肩に乗せて文句を言われる前に瞬歩で屯所から出て来た。


『ちょ、名前ちゃん!?いきなり瞬歩しないでって前から、』

『もう慣れたでしょ』

『君達には普通でも俺らにとってはこの速さは常軌を逸してるんだからね!?』


と、騒ぐ退を地面に落として今夜の事の顛末を話し、それを聞いた退の感想が冒頭の台詞にあたる。それに適当に相槌を打ちながら私は退を引っ張って立たせた。


「涼の話だと、振り返った所に虚がいたらしい」

「…うん?」

「それがなに?って言いたそうな顔だね」

「え!?…ま、まぁそりゃあ…俺はホロウとかについて良く分からないし…」


そりゃあそうだね。服に着いた砂を払いながら私の話に微妙な返事をした退に笑いながらそう言うと、虚について…というより霊圧について軽い説明をすることにした。


「うちら死神は霊圧が高い。そう教えたよね?」

「うん。その霊圧は俺らにもあるけど基本人間はかなり弱くて、稀に現世で言う幽霊とかが見える人は少し高い。そして、死神においては自身の強さが霊圧の高さにモロに比例する」

「そ。で、霊圧というのは個人個人によってその質、の様なモノが異なる」

「君達は…それによって互いを見分けたり察知したりできる」

「うん。良く覚えてるね」


本当に、大した記憶力である。監察という役職が故の産物だろうが一度、しかも彼ら人間からしたら突拍子もないことをよくぞここまで理解出来たものだ。お陰で話が進めやすくなったと思いながら、それでねと言葉を続ける。


「その霊圧は死神だけじゃなくて虚にもあるの」

「ホロウにも?……あ、つまり涼君のと愛川さんが言ってた"いきなり"現れた、てのは…」

「そう。まずあり得ない」


涼はまだしもラヴは隊長だ。虚の霊圧など数里前からでも分かる筈。なのに気付かなかった。いや、気付けなかった。…確実に何かある。


「…と、思ったから来てみたんだけど特に変わった霊圧はないし、こんだけ高い霊圧を垂れ流してんのに何も来ない。ってことは…」


無駄足かな。
そう言って笑おうとした私の目にとんでもない光景が飛び込んで来た。


「!!」

「ぇ…う、わぁ!!」


現場に来たのは私と退の二人のみ。着いた時に若干範囲を広めに霊圧探索をしたけど何もなかったし、人間もいなかった。それは確実で間違いはない。だが、何の前触れもなく退の後ろに人が現れた。その上ソイツは、何の躊躇いもなく退に刀を現在進行形で振り降ろそうとしていた。私は咄嗟に目の前に立つ退の腰に手を回すと来た時と同じように肩に担いで、近くの民家の屋根に飛び乗りそれを回避した。だがそれにも追い付いて来るのを見た私は退をそこら辺に放って斬魄刀を抜いた。直後、響く鈍い金属音。


「…!お前、まさか…」

「ご名答、とでも言えば満足か?」


刀を合わせて気付いた。コイツの刀はただの刀じゃない。うちら死神の斬魄刀と同じ気配がする。

『俄死神ってご存知ですか?』

一瞬にして半年前の喜助の台詞とあの時の戦闘が頭に蘇った。そしてその一族の厄介な能力も。ああ、やっぱり退は連れて来るべきではなかったな。だが後先にも立たない後悔をしても仕方ないので、打開策を模索しながら口を開いた。


「…幻族、だな?」

「そう言うお前は死神だな?」


体格差から鍔迫り合いは此方が完全に不利。そうなる直前に合わせていた刀を薙ぎ払って後ろへ飛ぶと退の前に立った。その退にチラリと目をやった幻族は目を細めた。


「そこにいるのは…人間か。"現場"に態々連れてくるとは余程の馬鹿なのか?」

「可愛い子には旅をさせよ、と言う諺が日本にはあるんだよ」

「フン…まぁ、いい。俺がやりたいことは、言わずもがな分かっているのだろう?」


その瞬間、膨れ上がる奴の霊圧。直後、退がうっと呻いたのを見て死覇装の袂から黒いマフラーのようなモノを出すと彼に放った。


「っ、なに…?」

「首に巻いときなさい。死ぬよ」


粉々の塵状になってね。そう言って脅せば慌てて首にしっかり巻く退。そして呼吸が正常に戻ったのを音で確認してから、自分の霊圧も少しずつ上げて行く。


「……悪いが"人間"もいるんでね。手加減は出来ないよ?」

「笑わせてくれる。お前、俺に勝つつもりか?」

「それはコッチの台詞だ。…俄死神の分際で」


そう。今回は様子見、など悠長なことは言ってられない。黒いマフラーは着けた人から約十寸までの範囲に霊圧が入らないよう結界を張る事が出来るが、まだ試作段階で万全とは言えないのだ。と、喜助が言っていた。それに今目の前にいる奴の霊圧は半年前の奴に比べて粗さが殆ど見られず、ほぼ死神に近いような霊圧になってきている。下手すりゃ鬼道も使えるかもしれない。そんな不安要素たっぷりの状況で出し惜しみなど不要。いや、言語道断。私はある一定の所で霊圧を止めると一気にそれを練り上げて呟いた。






「…【遊べ 風車】」





















(喜助に連絡しなかった事と)
(喜助に頼らないと不安になるように育ってしまった自分に)
(少しだけ後悔した)

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