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吉田氷雨。








「…銀時」

「ん?」

「最近思い出したんだけどさ」

「なんだよ」

「私多分、銀時に会ったことある。尸魂界でやらかす前に」

「コラコラ、やらかすとか言わないの。

…え?ていうかいつだ?少なくとも万事屋開いてからは会ってねェ筈だぞ?」

「銀時が寺子屋にいた時」

「……随分前だな、そりゃ。……あん?そうするとちっさい銀さん幽霊見えてたことにならねぇか?んなホラーな生活送った記憶ねーんだけど」

「何でだろうねェ…何故だか死神が見えてたんだよねぇ、ちっさい銀時。今は……どうなんだろうね」

「………」

「なに顔真っ青にしてんのよ」

「べべべべ別にィ?怖いとか思ってねェし?ガキならではの第六感が働いてただけかもしんねェし?一昨日の夜に二階の窓からばーさんに手振られたとかぜってー幻覚だし?ぜってー平子と呑みすぎただけだしィ?」

「あ、そういえば。
真子一昨日の夜に一人魂葬したって言ってた。万事屋の前でおば…」

「やめてェェェエエ!!」

「……」

「オイぃぃぃい!!必死に笑い堪えてんじゃねェ!!怖くないから!!びびってなんかないから!!」

「ちっさい銀時って可愛いかったよね」

「またエラく強引な話題転換だな」

「変わった鍔の刀を四六時中大事そうに握り締めてるのを見た時は何してんだろこの子は、って思ったよ」

「無視かよ、オイ。

…まぁハナタレの小僧だったからな。何考えてたか分かりゃしねェよ。今も昔も」

「いや、絶対分かってたよ。今も昔も」

「…何で分かんだよ」

「伊達に百年以上生きてないからね」

「…ババア」

「今夜、丑三つ時に神社の裏集合な。絶対一人で来いよ」

「ごめんなさい調子にノリすぎましたすいません許してお願い」

「まぁ考えてやる。


…吉田松陽先生、だっけ?」

「………ああ」

「私ね、小さい頃拾われたの。流魂街で」

「夜一に?」

「ううん。氷雨…“吉田”氷雨に」

「吉、田…?」

「偶然だろ、とか思うでしょ。違うんだよ」

「…先祖、か」

「当たり。氷雨はその“松陽先生”のご先祖様」

「お前は…」

「うん?」

「その…氷雨って奴に……何か教わったのか?」

「いっぱいね。死神とはなんたる者か、とか基本的なことから鬼道とか、斬魄刀について、とか。

…剣のふるい方、とかね」



…『敵を斬るためではない、

弱き己を斬るために。

己を護るのではない、

己の魂を護るために。』




「……一緒、か。…俺達と」

「多分。あの気質は代々受け継がれてそうだからねぇ…」

「………そうだな」

「桂小太郎」

「…え?」

「高杉晋助」

「え?」

「一緒の寺子屋だったんだって?」

「………喜助か」

「凄いでしょ」

「逆に気味悪りィよ。んなの一々記録なんかに残っちゃいないだろうに。……ていうか、どっから仕入れてくんだ?お前ん家の“神様”は」

「さぁ、神様だからねェ、全部見てたんじゃないの?ラピュタから」

「天空の城、ってか?んなアホな」

「あはは……ちなみに、桂小太郎には攘夷戦争時に一回会ってる」

「……マジか?」

「うん、マジ。現世駐在任務が偶々銀時達の拠点地に近くてね。あの頃は頻繁に現世に出向いたよ。虚も多かったし、歴史が動いてたからね」

「へぇ…てかヅラ、お前の姿見えてたのか?」

「うん。戦争中だったから第六感が冴え渡ってたみたい。ばっちり見えてたよ、死神」

「ヅラと話したのか?」

「ああ……めんどくさい奴だよね」

「よく分かってんじゃん…?……つーか俺は?」

「ん?」

「お前、ちっさい銀さんと会ってるって言ってたじゃねェか。銀さんとは何か思い出ねぇの?」

「あるよ。けど……聞きたいの?」

「え?なに?聞いちゃいけない感じ?」

「いや、そんなことはないけど」

「じゃあ、ホラ。話してみなさい」

「……道場」

「道場?」

「うん。銀髪なんて珍しかったからね、なんとなく目で追ってみたんだよ。で、道場行って、そしたら先生と必死になって打ち込んでる銀時が見えてね…暫くして先生がいなくなってもまだ竹刀を振り続けるもんだから感心して見てたんだよ。

まぁ、私も死神だしね。まさか見えるわけないだろうと思ってたから堂々と入って、素振りしてる銀時の隣でじっと見てたんだよ」

「……稽古の後……隣…道場…」

「思い出せない?」

「んーなんかあと少しで…

…てかあれ?お前見てただけか?」

「いや、ちゃんと相手したよ。勿論手加減なしで」

「………オイオイ。大人気ねェな」

「いやー可愛いかったなぁ。泣いてる銀時は」

「オィぃぃぃい!!なに幼気な少年泣かせてんの!?どんだけ本気でやってんの!?」

「いいじゃん。それでアンタの弱点見つけてあげたんだし。…それに」

「それに?」

「最後にちっさい瓶詰めのちっさい金平糖あげたでしょ?」

「…瓶?…金平糖?……あ?

あー!!!思い出した!!真っ黒な姉ちゃん!!髪長くて、一つに縛ってて」

「まぁ今は髪切っちゃって短いけど」

「あれお前だったのか!どーりで初対面な気がしなかったワケだ。

つーか、マジで容赦なかった!!死ぬかと思ったぞコノヤロー」

「あはは、いいじゃん。金平糖貰えたんだし。それに銀時すぐ機嫌直ってたよ」

「……あの瓶」

「ん?」

「大事にとっといたんだけどなァ…」

「何でまたそんなもん…」

「は?お前覚えてねェの?」

「え?何を?」

「“強くなった頃にまた来るから、そん時勝てたら空の瓶に金平糖いっぱい詰めてやる”って…」

「……そんなことを言ったような…気がしないでも……」

「覚えてねェのかよ。適当な約束だな、オイ」

「いやー懐かしいねェ」

「無視ですかコノヤロー」

「………銀時」

「ん?」

「あのちっさい瓶のちっさい金平糖。コッチでも売ってるんだよ」

「ふーん…

…非番か?今日は」

「幽霊騒ぎで半日潰れちゃったからね。副長からの配慮でもう半日」

「神楽と新八、屯所に置いてても大丈夫かな」

「神楽は総悟と死闘中、副長は書類整理に追われてて、新八は退と談笑中。充分に“大丈夫”と言える状況だね」

「…原チャリで来てんだ、今日」

「うん」

「…天気いいな、今日」

「うん」

「…行くか、金平糖買いに」

「うん」

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