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接触。





「…何とか間に合ったな」


斬魄刀を鞘にしまいながら会場の方に耳を傾けると、安堵の溜め息を漏らした。もうすっかり静まり返っているのを見れば、今は被害状況の確認でもしているのだろう。


「ああ、そういえば……無線は……」


先程、大虚に集中する為に強制終了と称して耳から外して放り投げたのだ。副長から怒られることは間違いないが、まぁ致し方ない。
それにしてもだ。
なんであいつはこんな時期に虚なんかを送り込んで来た。しかも私の居場所まで正確に掴んでいる。


「何でだろ…」

「……探し物はコレかァ?」

「え?ああ、ありが……!?」


しゃがみこんで草を掻き分け探していると、不意に目前に差し出された無線。しかし、あろうことか考えごとをしていた所為もあって相手の顔を見ずにそれを受け取ってしまった。途中で気付き、咄嗟に刀を抜いたのは良かったがそのまま後ろに倒され“そいつ”は覆い被さるように刃を振り下ろしてきた。


「…お前……やはり来てたのか」

「俺ァ、祭りが好きなんだ…いけねェか?」

「あら、祭り好きの攘夷浪士なんて可愛いねぇ…それで?祭りは楽しめたのかな、高杉晋助さん」


男にしては少し派手な着物。眼帯ではなく包帯で覆われた左目。髪の長さは私ぐらいか。風貌だけでも随分と変わっているが、それを更に顕著にしている何とも言えない笑み。それに少しだが、喜助が煙管を吸っている時と同じ匂いがする。とても身を隠してる指名手配犯とは思えない存在感だ。


「多少は楽しめたぜ」

「…自分で煽ったのが成功して、か?」

「へェ…現場は見てねェのに大したよみだな。だが成功とは言い難てェだろ」

「そうね。真選組の軽傷者が6人、死人はゼロ。将軍様も無傷だし。残念ながらテロは失敗ってところだからね」


まるで見ていたかのような発言に高杉の眉が軽く潜められた。


「…てめェ、何でそんな詳しく知ってやがる」

「持ってる無線は一つじゃないんでね」


そう言って笑いながら高杉の顔を見上げると、不意に携帯が鳴った。恐らくというか、絶対に副長だ。無線が繋がらないことに不信感を募らせたのだろう。だが生憎両手は塞がっていて携帯に出ることは出来ない。


「とらねぇのか?」

「アホ。今の状況で刀から手ェ離したら死ぬってことは馬鹿でもわかるわ」


上から振り下ろされた刀には未だに高杉の体重がかかっている。それを下から押し上げているのだ。斬魄刀だから折れはしないだろうが、流石に両手で抑えないと少しキツい。この状況を覆せないこともないが、喜助にキツく言われたことが頭に蘇る。


『人間相手に斬魄刀の解放はしちゃダメっスよ』


…どうしたもんかねぇ。


「…お前、四楓院名前で合ってるよな?」

「ああ、大正解」


今更ながら名前を聞いて来る高杉。と、相変わらず鳴りっぱなしの携帯。私が副長の護衛だと分かってたから殺りに来たんじゃないのか。ていうかいい加減諦めて下さい、副長。しつこい男は嫌われますよ。ていうか嫌いです。そんな疑問と悪態が頭を余儀ったのも束の間、次に高杉の口から出て来た言葉に驚愕してしまった。


「じゃあ、お前、」


藍染惣右介を知ってるよなァ。
その瞬間、全ての音が止まったような気がした。

だが皮肉にも。


「クク…動揺したなァ、名前」

「…ぐっ…」


次に私を動かした音は、自分の体を刀が貫いた音だった。






























(喜助の予想は下手な予言師より断然当たる)

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