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接触。





「…からくり、か…」


一方、名前。
土方に言われた通り会場の周囲の森の中で見回りをしていた彼女だったが、不意に広場の方から大きな音を聞いて思わず顔を向けると花火が上がっていた。


『いいか。何があってもこっちには来るな』


数時間前、持ち場を確認した隊士達が散り散りになる中、五月蝿いぐらいに念を押された。


「…わかってますってー」


その時のことを思い出し、まるでそこに土方がいるかのように顔をしかめながらそう呟く。ちなみに今名前は隊服ではない。隊士が一人で辺鄙な場所をうろつくなど、いかにも見回っていますという感じで怪しまれるといけないかららしい。そういうワケで、リサが尸魂界にいた時に着ていた裾の短い死覇装を作ることにした。


『…これも黒やで?怪しないんか?』


ごもっともな意見だ。
しかし戦闘になるやもしれぬのに浴衣や着物を着るのは気が進まない。隊服以外でと言われただけなので、別に怒られやしないだろうと思った名前。最早着替えなければならない目的が別の方にスリ替わっていることに気付かぬまま死覇装に袖を通したのであった。


「……花火かぁ…よくやったよなぁ…白と仕事中に拳西の目ェ盗んで…」


木の上の方の少し丈夫そうな枝に座りながらのんびりと花火を眺める。


……その僅か数秒後。


「…え…?…」


明らかに花火を通り越した爆音レベルの音が聞こえた。幸い魂魄の離脱は感じられないので死人は出ていないようだが、広場はかなりの混乱が想像出来る。その混乱に乗じて…という狙いだろう。

これは私が行くべきではないか?

そう思った名前が動こうとした時だった。


「なんだよ…」


突然、彼女の後方20mに何かとてつもなく巨大なモノが落ちてきたような音が辺り一面に響き渡った。
と、同時に無線が繋がった。


〔四楓院!!そっちは何か異常あるか!?〕


土方である。
いつでも連絡出来るようにと一応渡された無線。結構質が良いらしく後ろの方で「ウッソォォォん!?まだローンが残ってるのに〜」と局長の声が聞こえる。剣でも折れたのだろうか。


「特にこっちはないです。テロですか?」


後ろを向いて斬魄刀に手を伸ばしながら尋ねると、怒鳴り散らすような土方の声が耳に入ってくる。


〔ああ、平賀源外がやりやがった。客は全員逃げたんだが、からくりの兵が大量に…〕


…え。
電話の最中だったのだが、その姿を捉えて絶句してしまった。


「…メ、大虚…?…」

〔…は?〕


先程の大きな音。虚が地面に降りてきた音だったのだが、振り返ってみて驚いた。一体は普通の虚。そして更にもう一体空間を裂くようにして虚が現れたのだ。
おかしい。大虚ともなると余程のことがない限り現れないはずだし、第一霊力の高い人物がいないと…あ。私か。


〔オイ、どうした?〕

「何でもないです。どうしましょうか?私もそちらに…


「お前、四楓院名前だな」


…向かえそうもありません」

〔オイ!!お前やっぱ何か…〕

「違います。迷子です。送り届けたら向かいますので」

〔ガキ!?〕

「はい。現世という名の迷路に迷い込んでる達の悪い"餓鬼"です。死後の世界へ送り届けてきます」

〔どんなガキだァア!?つーか、てめーそれ思いっきり殺し……

「には入りませんのでご心配なく」


そう言って無線を強制終了させた名前はいつになく真剣な表情で目の前の大虚を見つめた。
…見た限りギリアンではない。でも人型には見えないからアジューカスだろう。


「何で私の名前知ってるの?」

「今から死にゆく貴様に話す意味などあるのか?」

「疑問を疑問で返すって…やっぱ知能低いんじゃないの、あんた」


…―瞬間、大虚の腕が上から降り降ろされた。それを難なく交わし飛び上がると、最初に落ちてきた虚に向かって右手を向け呟く。


「【破道の三十三 蒼火墜】」


先程打ち上がった花火ぐらいの爆発音の後、そいつが昇華されていくのを目の端に捉えながらアジューカスの方に更に左手を向ける。


「【縛道の六十三 鎖状…、と。お前はそんなに簡単にはいかないか」


縛道で締め上げてコイツを仕向けた主人を吐かせようと思ったのだがやはりそう上手くはいかない。避けられてしまった。地面に着地し、素早く距離をとると敵の方に目を向ける。


「斬魄刀なしにこの私を倒そうなど百年早いわ、小娘」

「まぁ、私もそう思っとったからええんやけどな…」


そう言いながら刀を抜くと、その剣の先に見えるアジューカスを今一度よく観察した。
別段変わった格好をしているワケではない。なんだかんだで厄介になりそうな尾は付いてないようだし、手足4本の典型的タイプだ。顔も…普通だ。


「私に勝つつもりか、四楓院名前?」

「だから刀抜いたんだけど」

「死ぬぞ、貴様」

「……んじゃ、死ぬ前に一つ質問をしましょうかね」


広場の方の爆発音も段々小さくなってきた。そっちの方で複数の耳慣れた霊圧を感じるのは私の頼みを聞いてくれた証拠だろう。となると収束するのも時間の問題だ。こっちも早めに片付けないと真選組の誰かが来てしまうだろう。一人で刀振り回してるのを見られること程気まずいものはない。


「質問?」

「そ。あなたは一体誰の指示でここにいるのか」

「言う訳がなかろう」


いや、言ったも同然だ。こちらはその誰かを予想した上で聞いたから。そもそも本当にその上がいるかと言われればうちらにとってそれの明確な証拠はない。だが、今名前が尋ね、それに対して黙秘していたかに思えた大虚の返答は、彼女にとっては十分な情報になり得た。
一人目論見が成功したことに薄っすらと笑うと、大虚は不機嫌そうに顔を顰めた。


「何がおかしい」

「いや。あんたも大概頭悪いなって」

「なんだと…」

「まぁ、いいや」


飽きたし。
そう言った時には既に名前の姿は虚の目前に迫っていて。驚いて固まる大虚の横を擦れ違いざまに彼女は小さく呟いた。




「【遊べ 風車】」




…―刹那。無風だった筈の辺りには風が舞い上がり、木々が一斉に揺らめく。


「…な、…何…?…」

「御主人様に会ったらなぁ、"絶対殺したるから楽しみに待っとれ"って伝えといてよ。

……まぁ、お前が生きてたらの話だけどね」


その言葉が終わった瞬間、大虚の体は張り裂け、その体は崩れ去っていった。

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