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旦那様。





大人数の男と一人の女。しかも男の方は武器を持っている。そんな状況を見れば誰でも思うだろう。…殺されそうになっている、と。現に銀時も一瞬でそう解釈したらしく、迷わず木刀に手を伸ばしている。


「てめェら…覚悟は出来てんだろうなァ」

「き、貴様!!何者だ!?この女の知り合いか!?」


…ま、まずい。


「んなこたァどうでもい…」

「だ、旦那様!そこから動かないで下さいまし!!3秒でいいから!!」

「は、はァ!?おま、何言って…」


そう彼女が銀時に叫んでから僅か2秒足らず。遠くに、しかも浪士の囲む中心にいた筈の名前が一瞬のうちに自分の目の前に現れ、銀時の口は開いたまま言葉が止まってしまった。名前はそんな彼の様子に軽く笑うと彼の口にキャンディを突っ込んで、携帯を取り出した。


「はい、終わりー。屯所に電話するからこの飴持ってて」

「…は?これって間接キス…じゃなくて、オイ!!この浪士は…」


と、言った瞬間。
二十人余りの浪士は一人残らず一斉に倒れた。


「…………………ぇぇぇええええ!?」

「やかましいわ!!耳元で叫ぶな!!」

「だ、だって、おま、この一瞬でアソコもココモって…同時攻めでイかせるって…」

「さりげなく卑猥な表現にすり替えないで。それに殺してないから。一人も」

「…え?」


確かに、言われてみれば一人も血を流していない。それに倒れた拍子に武器が誤って体に刺さらないように、ご丁寧に武器だけ取り上げて隅の方に寄せている。

…聞いてた以上だな、こりゃ。

既に携帯の方に耳を傾け、恐らく上司であろう土方の指示を仰いでいる名前を見ながら銀時はそんなことを思った。


『アタシらは、人間じゃないんスよ』


いつだったか、今じゃすっかり呑み友達になった喜助にそうカミングアウトをされ三時間ぐらい疑ってかかったのが懐かしい。

…つーか、アレ?何で俺は加勢しちゃいけないみたいなこと言われたんだ?


「あんたの顔まで浪士に記憶されたらやっかいでしょ?しかも私と親しいって嬉しいおまけ付きで。まぁ今回はギリギリセーフだよ。私のことを一方的に知ってるおじ様ってぐらいの認識だね」

…『だ、“旦那様”!!動かないで下さいまし!!』


「…あー…そういうことね」


…って、アレ?そうすると…俺ロリコンオタクってこと?…アレ?


「ということで、一緒に屯所来てくれるよね?」

「あー…別に…って、ナンでェェ!?」

「こんな大勢の浪士を2秒で倒しました、なんてハズカシくて言えないでしょ。そこで木刀抜いたのが運の付きだね。道連れや」

「え…じゃあ俺が木刀抜かなかったら…」

「今頃楽しく、喜助と真子と呑みに行けてたでしょうねェ…」

「よし。取り敢えずシーン25、浪士を蹴り飛ばす所からもう一度撮り直すぞ」

「監督は今ので満足だったらしく、もうお帰りにならはりましたよ坂田さん」

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