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太陽。肆



名前がいなくなった。というか移動中にふと動きを止めたから何らかの異物を見つけたのは分かったが、まさか一人で処理しに行く程のものだとも思ってなくて。到着と同時に消えたのは予想外だった。だって、あんなクナイの嵐にか弱い男の子を一人置いていくか?まぁ後は晴太達が危なかったからいっぱい刺され…全部弾き飛ばして助けに入ったり、新八と漫才したりとくだらないことばっかやったが、結局百華のお頭は俺らの味方で。外に出ろという日輪の言伝に素直に従ってやたらとでけぇパイプに入ろうとしていた。
吉原の警察の立場にあるお頭が味方で、名前が不安勢力を潰している。後者に至っては僅かに不安もあったが、死神を相手にしない限りまずあいつが負けることはなく、しかも何度かここには来ている。地上ですぐに会えるだろうと疑わなかった。

その安心が慢心に繋がった。


「…銀ちゃん。あいつらヤバいアル」


そう呟く神楽の視線の先にいるのは、室内なのに傘を差し、黒いマントに身を包んだ、明らかにヤバいヤツ。こんなヤバいヤツなら近付いて来た時に分かるものだ。周りにしっかりと気を巡らせていれば。だが、俺はそれを怠った。接近を許し、一瞬でも負けのイメージを頭によぎらせてしまった。


「ぐっ、ウォ…!」

「銀さんンンン!!!」


しかも二人だ。月詠の戦闘力は眼を見張るがまさか任せてトンズラする訳にもいかないし、何より今の攻撃で晴太から離された。とても人間とは思えない力に顔を顰めつつも何とか四つん這いになって顔を上げると、最初に現れたおっさんが今にも晴太の腕を掴まんとしている光景が目に入った。まずいとは思うが、身体が言うことを全く聞いてくれない。手を伸ばして無駄な足掻きをすれば、唐突におっさんが傘を頭上に構えた。直後、衝撃波が辺りに飛んだ。


「うわぁ、コレに完璧に気付くの凄い」

「ったく、邪魔してくれるねぇお嬢ちゃんは。ていうか団長はどうした」

「六杖光牢でちょっと休んで貰ってる」

「おじさんにも分かり易く喋ってもらえるかねぇ」


名前だった。しかも今の会話から察するに名前が追ってったヤツらはこいつらだ。こんなのを三人も一人で相手してたのかと今更に死神という生き物が恐ろしくなるが、既に斬魄刀が解放済みなのを見て、やはり相当ヤバい相手なのかと再認識する。
今はおっさんと距離をとって会話をしている名前が晴太の隣でしゃがんでその肩に手を乗せた。何かを言われたらしく頷いた晴太が立ち上がってこちらに走って来た。
それをチラリと見て確認した名前が再びおっさんと向き合って、笑いながら口を開いた。


「こんな餓鬼一人拐かするのにお前らの戦闘力とかアホか」

「しょうがねぇだろ……それが俺らのビジネスだ」


その言葉と同時に、晴太の目の前へ三つ編みのおっさんが唐突に現れた。思わず名前を叫ぶが、次の瞬間には三つ編みおっさんの動きがぴたりと不自然に止まった。


「…なるほど。"りくじょーこーろー"ってやつか」

「ご明察。アンタ凄いな」


驚きながらも早よ行きなさいと続けた言葉にワタワタしながら走って来る晴太。情けないことに未だに動けない俺の側に新八が付き、神楽は晴太の方へと走って行く。
そしてふと長いなと思った。
さっきから晴太を俺らの所へ返すために名前が二度も晴太を追い立てている。だが、それに反してその都度邪魔が入り、未だに晴太は微妙に危険な場を走っている。加えて言い知れぬ不安。今この状況で何を不安に駆られる事があるかと疑問も浮かぶが、どうにも拭いきれない。早く来い、と内心焦って呼びかけている。

そして、俺の嫌な考えは当たった。


「なぁ、お嬢さん」

「なんだ」

「俺ら夜兎を少しナメてやしないかねぇ」

「冗談言うな。隠密起動の白打についてきて、更に縛道の六十番代も使ってる。単なる戦闘狂にはやり過ぎだ」

「……それが、油断だ」

「!?」


何かが割れる様な音がしたと思った瞬間には三つ編み男が動き始めていて。神楽と晴太の距離より僅かに短いそれはあっと言う間に詰められている。いい加減動けと力付くで立ち上がって一歩を踏み出すのと、新八が晴太を呼ぶ声、そして、血飛沫が飛んだのはほぼ同時だった。
一体あの状況で誰がどうなったんだと呆然と見れば、いつの間に増えた一人に寄りかかる様に名前がぐったりとしてその足元に血溜まりが出来始めていて。その意味を理解した瞬間には声を上げていた。


「名前!!!!」

「あーダイジョーブ。殺してはないから」


斬魄刀は持ち主が気絶すると勝手に戻る。その通りに鞘へと戻って行く風車と雪月を見て驚いた顔をしていた男が、そう言って笑いながらこちらを振り返った。その腕の中にいる名前の顔は青白く、足元にいる神楽はピクリとも動かない。


「ふざけんな!!テメェ、」

「でもさ。一人殺られちゃったし、このバカ妹への一発とでおあいこってことにしてヨ」


確かに三つ編み男は名前が仕留めている。だが仲間だろうにその言い方と笑みは一体どういうことだ。余りにも異様な空気に思わず顔を顰める。


「でさ。この少年はモチロンだけど、この子も貰ってくから」

「………は?」

「あれ?知らない?この子は、」

「オイ団長。もう無駄話してる時間もねぇよ」

「ハイハイ。じゃあね、お兄さん」


名前が一体何だってんだ。それを聞こうと口を開いた瞬間、足元が一気に崩れ出して。運良く手元に落ちてきた神楽を確りと抱え、新八の手を掴むと、遥か上となってしまった名前と晴太がいる方を仰いで唇を噛んだ。












































(…銀さん。名前さんが…)
(心配すんな。あいつは大丈夫だ)
(でも!!)
(大丈夫だ。腹に穴が空いたぐらいじゃ死なねぇよ)
(……え。そんな重傷だったんですか。ていうか、え?ホントに大丈夫ですか)
(……え)
(……え。ていうか僕の所からじゃあまり見えなかったんですよ)
(……え)
(……え……じゃねェエエエエ!!!)

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