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太陽。参



寝不足だ。完全に。
書類整理で丑三つ時まで起きてるというのはあるのだが、それはあくまでデスクワーク。机の前から微動だにしないわけで。だが、昨日から今朝まではずっと動きっ放しだった。通常業務を終えてからの、死神太夫とのお遊び。そして、ひったくり犯の検挙。いや、言い方が悪いな。一応一般市民として緊急逮捕という形をとっただけで警察の立場ではないので、検挙ではないか。その後の取り調べが精神的にも疲れた。全く落ち度はないので気楽な感じで進めてくれようとしているのはわかったが、こちらとしては非常にキモを冷やした。何の滞りもなく終わって、送ってやるというのを断り、屯所の門を出て近くのコンビニへと行き、ココアを買って瞬歩で屯所へと再び戻った。
ちなみにその日は夜用事があって一晩屯所を空けると副長に言ってあったので、急な逮捕にも呼び出されることはなかった。退に至っては死ねとしか言わない。万一携帯を取り上げられていたらどうなっていたか。大いに反省をしろと一言だけ返信をした。


「オイ。なに呑気に欠伸なんてしてんだよ」

「暇だから」


再び欠伸をしながら言えば銀時に頭を叩かれそうになったので避けた。
場所は再び吉原。DNA鑑定も出た所で今日は本格的に喧嘩を売りに来た。銀時と私は先に様子見で、新八神楽晴太は後から来る。子どもがどうやって吉原に入れるんだと思ったけど、リサと喜助が任せとけと笑っていたので何も突っ込まないことにした。きっと可哀想なことになるのは新八に決まっている。
自分の攻撃が不発になったことに恨めしそうにしている銀時はさておき、今日も男装の為に頭で揺れているポニーテールを少し鬱陶しく感じながら、数メートル先の団子屋を指差した。


「団子、奢ってあげるからそんな顔しないで」

「え、マジか。みたらしとあんこな」


入って迷わず三色団子を三本注文し、再び恨めしそうな顔をした銀時を無視して椅子に座る。すると後ろの方から聞こえてきた会話に逮捕か暗殺かの二択を迫られた。


「…え、まさかお前さん。そのお金…」

「まぁ、毎晩一杯引っ掛けるのにちょうど良かったんだよ」


直後笑い合った二人は仲良く地面に突っ伏した。私が出そうとした手を抑え、木刀を抜いた銀時の仕業だったわけだが、それで良かったと思う。私がやろうとしていたのは、白雷で脳幹を撃ち抜くこと。無駄な死体処理をさせないで済んだ。しかしそれにしても、その男二人の懐を探る銀時を果たして諌めるべきなのか。そんなことを迷っていると、店員のお姉さんが神妙な顔をして話に乗って来た。残念なのは隠し切れない殺気だが、こちらとして嬉しかったのはその会話の内容だ。彼女は晴太とその事情を知っていた。確かにここで子供は異質故に目立つが、その母親疑いがかかる女性が日輪だということはあまり知られていないはず。


「…ここでの法に従わないと、上へ帰れなくなりますよ」

「ワリーな。俺は上でも下でもテメーのルールに従ってんだ」


ほら読み通りだ。銀時が決め台詞を放った直後に全開になった殺気とクナイを避けて空へ逃げると、それより更に飛び上がってくるお姉さん。色んな所から微かな金属音がするからきっと暗器を隠し持っているのだろう。空中では身動き取れまいとばかりにドヤ顔で振り下ろされるクナイを銀時の方の分まで全て受け止めて投げ返せば、避ける為にバランスを崩して地面へと落下して行った。だがしぶといお姉さんは顔を上げるや否や、曲者だなんだと喚き立てる為に口を大きく開けたので、持っていた団子を突っ込んで銀時の手を掴んだ。お姉さんは窒息しないことを願う。


「…だから、みたらしとあんこは止めたのか?」

「まさか。食べ物は粗末にしちゃいけませんって育てられてるからねぇ」

「喜助に?」

「拳西」


なるほどなんて納得する銀時と私がいるのはさっきの甘味処よりはるか上の屋根の上。瞬歩で消えたので下は大騒ぎである。その数ざっと二十人弱。あのお姉さん以外にそんなにいたのかと感心していると、 携帯が鳴った。


「どうした」

「新八達、入ったって」


後ろ姿ではあったが写メ付きだったのでそれを笑いながら見せれば銀時が私と目を合わせた。


「誰が来てんだ」

「内緒」

「にする意味が分かんねェ」


とは言ったものの、彼もある程度予想は出来ているのだろう。話題は既にどうやって新八達と合流するかという方に変わっている。神楽の霊圧を辿ることを予定していたので、その通りに適当な話をしつつ銀時を掴みながら瞬歩をしている時だった。


「…どうした」


明らかに異様な霊圧を覚えた。しかも一つではない。元々夜王鳳仙の異様さは吉原に来た時から分かっていたが、これはそれに匹敵するレベルでしかも複数だ。思わず空中で銀時を片腕にぶら下げながらその方向を凝視してしまった。私の異変に気付いた銀時が問うてきたが、言うまいか迷う。だがこれも不幸中の幸いか。新八に付けておいた無線で結構なピンチに立たされていることが分かったので、瞬歩を再開させるとクナイの嵐が吹き荒れる路地の一歩手前の細い路地に降り立つ。そして彼の手を離して背中を押した。


「オイ何を、」

「そっちは宜しく」

「ちょ、おま…名前!!」


私が単独行動をすることは分かっていたのだろうが、タイミングまでは分かってなかったようだ。慌てて後ろを振り返った銀時へにこやかに手を振ると、瞬歩でおかしな霊圧の方へと足を向けた。
























そしてこの後で、嫌と言う程知ることとなる。




















「…君、人間じゃないでしょ」

「その言葉まんま返すわ」


義骸に入った死神相手にほぼ互角で殺し合いが出来る奴らがいるということを。







































(いい娘だよ!あの子絶対いい娘だよ!!…あ、でもそろそろ気遣ってくれるのやめてくんない。もう泣きそう)
(めんどくせーなアンタは!!)

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