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えにし。参



ちょっと何かを吹き込めば掌を返した様に離れて行き、対立する。元々厳格な規則に縛られそのストレスがなかったと言えば嘘になるが、牙を向けてはどうしようもない。

組織にはいらない異物だ。


「…総悟。大丈夫?」

「誰に言ってんでィ。後半殆ど一人で片付けちまいやがって」

「まぁ、美味しいトコロを持ってったのは謝るよ」


銀時の無線演説から約一時間後。お目当ての列車に追い付き、土方派の真選組隊士達と合流出来たところで隊士同士の争いを縫って、局長の救出へと向かった。だけど、その列車が何故か分断されていて。前方を走る車両に一つのみの魂魄の数が、後方では圧倒的に多かったことに納得して私はそっちに飛び乗った。扉を斬って入ってみれば死屍累々の状況で、その車両の真ん中で恐らく残り半数であろう伊東派の人間を相手取り刀を振るっていた総悟を見付けた。


『【縛道の六十二 百歩欄干】』


そいつらが総悟へ一斉に飛びかかって来たタイミングで鬼道を放つ。総悟の後ろに立つ私を目を見開いて見た彼らの目に浮かぶのは、絶望。そんな奴等にこの場では大凡あり得ない笑みを浮かべてにっこりと微笑むと、次の瞬間には総悟がその全ての命を斬り捨てていた。


『あとどれぐらい』

『二車両分』


これだけ一人で相手をしてまだそんな動きが出来るとは末恐ろしいお子様だが、もう限界だろう。もしかしたらこのまま最後まで動けたのかもしれないが私が来たことによって彼の気が僅かに緩んでいた。もうこれ以上は無理だ。次に踏み込めば間違いなく死ぬ。
彼の顔に付いた血を拭ってやりながら40人もいないねと確認すると無言で頷いた。


『りょーかい。それから、総悟』

『なんですかィ』

『私より前には出るな』


反論せずに素直に頷いた彼は敏いと思う。自分の精神的肉体的限界をきちんと理解している。ここで自分が私と並べば足手まといになるのを分かっていて、それが精神論ではどうにもならないことも分かっている。
次の車両の扉を開けて、瞬間視界に入ってきた隊士達の目が大きく見開かれるというのを二回繰り返した後に、冒頭のセリフへと戻る。謝る気ねぇだろと顰めっ面をした総悟に怪我を見せろと言おうとした時、不意に車両に軽い衝撃を感じた。
何事かと扉の窓を除いてみればよくぞ動いていられるなと思う程にボロボロのパトカーがあり、何故か副長がうちらのいる車両とその架け橋をしている。元に戻ったようで何よりだが、あのままいけば背骨が真っ二つに折れるだろう、というところで神楽が橋に乗って心配はいらないと叫んでいる。相変わらずの緊張感のなさに思わず笑いが溢れた。と、そんな神楽の背後に不穏な影が現れて、副長が叫んだ瞬間だった。


「ちぃと働き過ぎちまった。残業代出ますよね、コレ」


総悟が扉ごと敵を吹き飛ばして副長へ語りかけた。当然のように副長を踏んでいるが総悟の目一杯の喜び表現だろう。二人のこういう関係は嫌いではない。局長と神楽がこっちに移り、私も副長の上に乗って銀時と新八を引き上げようとした。その刹那。


「銀さん!!」
「四楓院!!」


突如近付いて来たバイクから刀が二本伸びて来て、一つは銀時。もう一つは私に迫ったそれに、新八と副長の声が重なった。


「ぐがっ」


というなんとも情けない声を出して吹っ飛ばされた銀時の側に、私も着地する。直後、嫌な感じがして咄嗟に霊圧を上げれば、薄煙の中、'そいつ'と目が合った。


「【破道の八十九 飛龍撃賊震天雷砲】」
「【破道の九十一 千手光天大砲】!!」


目が合った瞬間にニヤリと笑って手を向けられて。咄嗟に銀時の前に立ち、高位の鬼道を選んだ。断空にしなかったのは九十番代だった場合に死ぬから。と、弾くとよそが危ないから。隊士達はそこら中に散らばっている。人気のない方向へなど選ぶことは出来ないし、そんな余裕もなかった。
ある程度爆風が収まると何が嬉しいのかにこにこと笑みを浮かべる奴が目に入って、思わず溜息が漏れる。


「あんた、団長じゃなかったの?こんなホイホイ地球に下りて来て良いワケ?仕事しろ」

「うわ、久々に会って開口一番がそれ?」


酷いなぁ、と言ったのは春雨第零師団団長の西園寺祥之助だ。突如、地球へ来て此方側に猛攻を仕掛けてきたのが数ヶ月前。未だにその行動は謎だが、私への忠告と銀時達の霊力の確認が目的だとは踏んでいる。そして今回の来地球だが、鬼兵隊とつるんでいるのを見ると春雨に関わりがあるのだろう。喧嘩を売った相手が幕府の一部である真選組であることと、最近幕府の通信がやや宇宙と多いのを合わせると何かしらの密会をしていると見るのが妥当か。真選組は情報収集に長ける人物が多々いる。そのトップである山崎を潰しにかかり、私ら死神が動けない時を狙ったのはそれが理由か。


「こっちは陽動か」

「…流石に鋭いねぇ。でも、」


と不自然に言葉が途切れたところで急に銀時に頭を下げられ、視界から西園寺が消えた直後に大きな爆発音がした。


「お喋りはそんぐらいにしとけ、名前」

「はーい」

「こちらもでござる、祥之助。死神同士の駆け引きは後でやれ」

「はーい」


未だ立ち込める爆風に紛れて河上万斉がバイクごと突っ込んできたので銀時が木刀で分解して吹き飛ばしたらしい。相変わらず恐ろしい強度を誇る木刀だ。どうなってんのアレ。なんでヒビ一つ入らないの。
私がそうやって銀時の木刀を凝視していると河上は銀時をじっと見つめて呟いた。


「面白い。面白い音を出すな、おぬし。でたらめで無作法。気ままでとらえどころのない音はジャズにも通ずるか。…いや、それにしては品がない。たとえるなら、酔っ払いの鼻歌でござる」

「てめェ…高杉のトコにいた野郎だな。オイ、人と話す時はヘッドホンを取りなさい。どういう教育を受けてんだ、てめっ。チャラチャラしやがって近頃の若いモンは。…オイ、聞いてんのかオイ。バーカ!バーカバーカ」

「坂田銀時。いや…白夜叉。何故おぬしが真選組にいるでござるかバカ」


折角シリアスになりそうだったのに何故脱線するんだ。別にシリアス大好きではないが、時と場合は選んで欲しい。でもヘッドホンに関しては私も若干同意出来る部分があるので、聞こえていることに少し驚いたりしている。紅桜の時は高みの見物だったし、確かアレと会話したことはないはず。
銀時の手から頭を退けると立ち上がって死覇装に付いた砂を払った。


「 真選組の実権握らせて幕府の間者とするつもりか」

「背信行為を平然とやってのける者を仲間にする程拙者達は寛容にござらん。また信義に背く者の下に人は集まらぬ事も拙者達は知っている」


まぁ、予想していたことではある。伊東が真選組を分断させたり、明らかに羽振りが良かったり、彼の周りに不穏な霊圧が漂っていたりと、余りにもお粗末過ぎた。明らかに瓦解させる気が満々で、外部からの手引きは明確だったし、それを隠す気もなかったのだろう。それを知っててそのままにした私は同罪になるのか。
驚いたような顔をしている銀時に河上が嘲笑いながら気付いた時にはもう遅い、と言った時だった。


「…え、…」


耳が痛くなる程の爆音にそちらへ振り向けば、橋が半ばで崩落し、列車も前二車両が宙吊り状態になっていた。あれには副長だけではない。局長や総悟、神楽に新八が乗っている。一時的に橋の崩落は止まっているが、あの不安定な状況だ。どんな些細なバランスの崩れでも耐えきれないだろう。
吊星で支えきれるかと詠唱を唱えながら瞬歩をして、ふと不自然に増えた霊圧に視線を上げて、迷わず吊星を放棄した。


「【散財する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる "破道の六十三 雷吼炮"】!!」


念には念をとは言ったもので、吹き飛ばした列車の上空にヘリが四機集まっていた。それらから銃やら手やらが伸びているのを見て、より近くにいた二機に向かって雷吼炮を撃った。急に目前に現れた私に目を見開いていたが、鬼兵隊なら情報があっただろうに馬鹿かと思いながらやった。後悔はしていない。


「…君は、…」

「お久しぶりです、参謀。随分と無様な格好をなさってますが、いい気味だ。今更私の正体について言及するつもりは一切ないが、一つだけ申し上げておきましょうか」


局長に失くしていない方の腕を引っ張られている伊東に完全に敵へ背中を向けて空中を闊歩しながら歩み寄ると、更に驚いた様な表情をする。後ろで残り二機のヘリが照準を定めているのが分かる。新八と神楽が名前!!後ろ!!と叫んでいるので間違いない。


「真選組の絆、ナメるな」


そう言った瞬間、ヘリのプロペラが外れて制御不能となり乗り合わせていた人間らの悲鳴が聞こえ。ちょろちょろと副長の霊圧が動いていたのは分かっていたのであと二つのヘリは任せていたがさすがにそんなアクロバティックな処理の仕方だとは思っていない。イタチの最後っ屁的な銃弾を斥で防ぎつつ、やや慌てて差し出した左手に副長が飛び付いて来た。その顔はしてやったり、だ。いや、あんた一歩間違ってたら死んでますけど。何ですかその表情は。
だがそんな私の心情を知ってか知らずか、その表情のまま彼は直ぐに視線を伊東へ向けた。


「…土方君……君に言いたい事が一つあったんだ」

「奇遇だな。俺もだ」


私が副長を掴んだ時ぐらいに局長は伊東の身体を引き上げて90度傾いた座席においていた。なので、そうやって副長と伊東が話し始めると、私は副長を伊東の方へ放り投げ、お互いに手を伸ばして確りと握り合ったのを確認して、自分は来たるべき敵の為に斬魄刀を抜いた。





















それにしても、なんて面倒な生き物なんだ。人間は。

























(僕は君が嫌いだ。いずれ殺してやる。だから…)
(俺はお前が嫌いだ。いずれ殺してやる。だから…)
((こんな所で死ぬな))

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