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えにし。弍





『神楽氏、写真を撮らせて貰っても良いでござるか?』


新八が連れて来た奴はとんでもないことを言いやがった。いや、言い続けた。上のは抜粋だ。大体オタク会議とやらをなんでテレビ放映すんだと思ったがそれがヒートアップした末に乱闘騒ぎ。その時新八が掴みかかってた相手がどっかで見たことあるむかつく顔だと思ったらまさかの野郎で。プロデューサーだかなんだかが謝りつつ番組は終わり、その一時間後にになんでか新八と一緒にその野郎は万事屋の玄関をくぐった。新八が言うに野郎だと気付かずに思いっきり殴ってしまったからそのお詫びだと言ってたが、新八だって野郎に二三発くらってる。むしろもっと殴り返せとメガネを殴ってから、野郎を見れば格好も格好だが様子もなんだかおかしい。話をしてもいつもの凄みがねぇ。それどころかオタク街道まっしぐらだ。 これは面倒そうだと思いながらも話を聞けば真選組はクビになったとか言い出し、だけど帯刀してるもんだから首を捻れば何故か離れないと言い出す始末。仕方ねぇと鉄子の所へ行けば、しょうもねぇ妖刀で。魂に干渉するらしいと聞いて、俺は眉を顰めた。


「…なんで、名前が気付かなかったんだ」

「た、確かに…死神って魂を扱う仕事しますもんね」

「違うアル。いくら名前でもついに愛想尽きたアルよ」


確かに神楽が言うことにも一理あるが、というか寧ろそっちの方がいいけども、残念ながら今回は違う。気付いていただろうし、どうにかすることも出来たはずなのに、名前はやらなかった。故意的にか単に技術がなかったのか、喜助達と模索中なのか。虚化がまだ不安定なあいつらには月に一度、マジでヤバイ時がある。名前はその為に二三日屯所を開けたわけだが、そこを狙って土方更迭は仕組まれた。
偶然というにはあまりにもベタすぎる展開だ。


「…まさか、銀さん…」

「ワザと出したんだろ」

「何のためにそんなまどろっこしいことするアルか」

「野郎を死なせない為だろうな。伊東派が蔓延る今じゃ屯所の中の方がよっぽど危ねぇ。名前だって四六時中野郎と一緒にいられるワケがねぇからな」


妖刀と聞いて美女を連想し鉄子に飛びつく野郎を守る価値があるのかと聞かれれば即答でないだろう。だがあくまで魂を乗っ取られているのであって、外見根本は土方十四郎のままだ。死神には魂がどう見えるかは知らんがあいつのことだ。どうせ土方の魂しか見えてないんだろう。


「……名前は今どこいるアルか」

「知るかよ。霊圧でほいほい探せる死神じゃねぇんだぞ」

「そしたら僕ら人間の文明に頼りましょう」


と言って携帯を取り出す新八。なるほどなと思ってそれを遮り自分のを出してあいつに掛けたのだが、中々繋がらない。三回目のお留守番サービス姉さんの声を聞いて、五コール目。


「居留守使ってんじゃねぇぞ!名前!!居るのは分かってんだぞォオ!?」

「銀さんそれは完全に借金取りです」


よく堪えたと思う。しかも携帯を投げつけずヒビだけに抑えた。俺偉い。返答のない携帯に向かって刀をひたすらに眺めている野郎を見ながら更に言葉を続ける。


「おタクんとこのマヨラーだけどね、なぜかオタク街道まっしぐらだよ?ていうかもう二次元に半身つっこんでますけど?しかも厄介すぎる斬魄刀持ってんだけど。お前ら真選組を護廷隊にでもするつもりですかぁ?もう始解しちゃってるからね、コレ。解号とか言えちゃってる感じだからね?しかも卍解目前だから……って、オイ。聞いてる?聞いてんの?名前?おー…い………」

「お、落ち着いて下さい銀さん。ソレ、なくしたらそもそも文句を言う相手がいなくな…ちょ、ホント待ってェェエ!!喜助さんに怒られるの僕ゥウウウ!!!」


一先ずヘタ方を殴った。勢い余って店の外に出たけど知らない。いつまでも美女幼女と呟くヤツに吐き気がしない奴など絶対にいない。俺からやや離れた場所でどうやったか俺から携帯を取り上げた新八が焦ったように電話へと話し掛けている。偶に頷いたりしているので、対話は成立しているのだろう。そこで生じる疑問、俺のには出なかったのになんで新八のは出るんだと文句を言ってやろうとメガネに詰め寄れば、携帯をずいっと耳に差し出された。


「…んだよ」

〔副長、いる?〕

「いねぇな。ヘタれたオタクだけだ」

〔…そう。やっぱり銀の処に行くのね〕

「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ。こいつはな、」

〔銀時。私、真選組自主脱隊したから〕

「……は?」

〔だから、お尋ね者〕

「…どういうことだ。ちゃんと説明しろ」

〔参謀補佐の方が給料良かったのよ〕


伊東も大概馬鹿らしい。一ヶ月もあればこいつの異様な土方護衛具合はよく分かる。いくら真選組からいなくなったとしても、はい分かりましたとこいつが伊東の補佐に就くわけがない。むしろ後を追って辞める方だ。
鉄子に礼を言って外へ出ると、道端に尻餅を着いているヘタレの襟首を引っつかんで立たせた。新八が後ろで丁寧に言い直してるのが聞こえる。そう言えば拳西が贔屓の鍛冶屋にしたという話を平子から最近聞いた。斬魄刀も鍛冶屋で研げるのかと感心した覚えがある。


「で。どーすんの。俺こいつと一緒にいんのやなんだけど」

〔あーうん。後少しで着くから〕

「……ん?お前、此処分かんの?」

〔何を仰る。私は死神ですよ。銀時の霊圧を辿るなんて…〕


造作もない。きっと名前はそう言ったのだろう。だが、その時には俺の手に携帯はなく、辺りを煙草特有の煙たさが広がっていて。その元を辿ればふざけた格好のヘタレた土方がいた。額へ冷や汗を大量に浮かべながら煙草を口にくわえている。神楽と新八が目を見開いて野郎を見ていた。


「…'名前'、俺は、いい。真選組を、…近藤さんを、…護れ」


それに名前がなんて返したのか分からない。だけど、一言二言交わした野郎の顔が苦痛の中一瞬微笑んだのが見えた。きっと満足の行く答えが返って来たのだろう。そして二度目の名前呼びの後にそのまま野郎は俺らの方へ視線を合わせると再び、頼む、と声を絞り出した。



「俺らの、真選組を…護って、くれ…」






























ー えにし。弐 ー






















(…名前、俺は、いい。真選組を、…近藤さんを、…護れ)
(……何度も言わせないで下さい、'十四郎'。私は真選組も貴方も両方護れるだけの実力と余裕を兼ね備えております)
(…相変わらずの自信だな)
(ですが、一先ず私が到着するまでの二十秒、銀時達にお願いしておいて下さいませ。残念ながらその間は、お命の保証は出来ません)
(だろうな。………頼んだぞ、名前。絶対戻る)
(……はい)

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