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相容れないモノ。参





「………し、四楓院…」


私が怒っているのはどうやら分かっているらしい。そしてその理由も。副長の挙動はまるで嘘がバレた子供の様だ。


「…追わなくて宜しいのですか。あいつだけは貴方と総悟の手で送ってやった方が良いと思うのですが」


そのまま説教タイムにでも入ると思っていたのだろう。捕縛だ連行だなんだと隊士達が騒がしく動いている中、きっと副長の周りの音は止まったと思う。目を見開いて私を凝視している。


だけど、副長。


「貴方に立ち止まっている暇はないでしょう」

「は、何言って…」



















「貴方が愛し貴方を愛した、その愛しい人の婚約者を粛清しなければならないのですから」






















ー 相容れないモノ。参 ー























「転海屋側、捕縛者37名、内19名重傷、死者8名。頭首は土方副長、沖田隊長両名により生きての捕縛に成功しましたが現在意識不明の重体。しかし医者の話では明日には目を覚ますとのことです。変わって真選組側ですが重軽傷16人、死者0人。重傷と言っても一番重くて脚の骨折程度に収まっています」

「思ったより少なくて良かったわ。あそこの貸し倉庫の旦那とは連絡はついた?」

「はい」

「…それで?」

「名前さんの仰る通り疑いは白。ただ貸していたに過ぎませんでした」

「そう。ならば倉庫の修理代諸々は此方から出しましょうか」

「それは勝手ながら俺の方から申し出たのですが、"悪党の悪行を見抜けなかったのは自分らの責任でそれを成敗してくれたアンタ達は何も悪くない。寧ろそいつ等からぶんだくった金がたんまりとあるから修理代はいらない"、と」

「あら。随分と寛大なお方ね」

「ええ、それはもう。此方が困るぐらいに」

「だったら此方はそれに甘えさせて頂きますか。でも菓子折りぐらいは後日、渡しといて貰える?一万ぐらいで良いから」

「はい、了解致しました」


転海屋を検挙した翌日の昼頃。取り調べやら片付けやらを終えて必要な書類を自室で書いていると、一番隊の副隊長が入って来てそうやって最終報告をして来た。それを書き留めながらお人好しの倉庫責任者のお人好しさに笑って四楓院という判子を押すと、筆を置いた。漸く伸びが出来ると目一杯体を伸ばすと、涼も肩の荷が降りたという様に軽く息を吐いた。


「御苦労様、涼。悪かったね、全部任せちゃって」

「とんでもないです。それに、普段沖田隊長と副長がどれだけ大変かを実感出来て良かったです」

「真面目やねぇ…私なら沖田隊長も仕事してるんだって漸く分かったわ、って思うね」

「まさか!沖田隊長はああやってサボってる様に見えますが、やる事はキチンとやってますし。俺はそれを分かってるつもりです」


まるで憤慨だとでも言う様にややむくれながらそう言い放った涼。確かに総悟は昼寝やら寄り道やら副長へのちょっかいやら、一見サボりまくっている様に見えるかもしれないが実は涼が言った様にやることは確りとこなしている。現に討ち入りの時は誰よりも先陣を切って斬り込むし、偵察やら調べ物やらも総悟のお陰で事が進むなんてよくあることだ。だが普段人が見ている所での態度があまりにも自由奔放過ぎて"サボりの沖田"と多くの人の目に映ってしまっている。だけど、それは総悟の性格で。仕事をやってることを他の人にバレたくないという一種の照れ隠しなのだろう。そして、それを周囲はきちんと理解している。そう、つまり。誰も本当に沖田総悟がサボっているとは思っていないし、実際そうであることを知っているのだ。それと総悟の性格を加味して、みんなでサボっていると口にしている。
涼は当然、総悟の直属の部下であるから知っている。だけど、その先のみんなの照れ隠し配慮までは頭が行かなかったらしい。
お互いある意味不器用同士の一番隊コンビになんだか微笑ましく思いながら、苦笑を漏らすと涼が不思議そうな顔をした。


「だからだよ」

「へ、?」

「だから、真面目やねって言うたんや」


益々不思議そうに首を捻る涼の頭をぽんと触って立ち上がると、壁に掛かる黒い着物ー死覇装に手を伸ばした。


「涼、支度は出来てる?」

「あ、はい。…あの」

「なに」

「名前さんは隊服ではなくて、その死神の着物で…」

「ミツバには死神の時にお世話になってね。真選組としてではなくて、死神として会いたい」


最後はね。
お世話になったと言った時に涼は何かとても聞きたそうな顔をしていたが、私はそれを敢えて気付かないフリをして死覇装を手にした。

今日の夕方から行われる沖田ミツバの葬式へ参加するために。

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