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相容れないモノ。壱





『………漸く出た』


死神があっさり見えるびっくり人間の強引な押しに逆らえずに夕飯をご馳走になった日から三日後。その前に義骸を尸魂界から送って貰うのに一悶着あったのだが、まぁそれは置いておこう。喜助がどうにかしてくれたと言えばそれで済むだろう。話は戻るがその日から三日間、私は彼女の家で居候と言うモノをしていた。理由は二つある。辻斬りの原因である虚が中々現れなかったというのと、彼女の誤解の所為だ。

『家がなくともご家族はきっと無事ですよ。気が済むまで家にいて下さいな』
『うん、何でそうなっちゃったかな』
『そうちゃんの合宿も一週間ですから。私も寂しくなくて嬉しいです』
『……あれかな。この人、ずっとそう言ってるけど一人で家いるのが怖いのかな』

道場はこの家から比較的近い所にあった。この三日間で何度か弟君が小走りに戻って来る様子を私は見ている。一応義骸に入ってはいるが不要な人間との接触は避けたい。彼が帰って来ると分かった時は直ぐに姿を消す様にしている。其の間に彼女が私の事を喋る事はない。弟君が物凄い勢いで喋り倒しているからだ。口を挟む隙間がまずない。にこにこと聞いて行ってらっしゃいと頭を撫でて送り出す。このパターンを何度も繰り返している。


『………明日、朝に出て行くか』


何故彼女が私の存在を弟に明かさないかは分からないが、まぁ弟君の喋り具合だろう。あれは真子でも口挟めるか疑問だ。それ程までに弟君のお姉ちゃん大好き具合は凄まじい。一度黒髪ロングポニーテールの青年が来て会話というか演説を邪魔された時の噛みつき具合は笑えた。
と、まぁ三食お世話になってもいるし中々に日常を見てきたので黙って出て行くのも失礼かと思う。なので、今晩コレを消して朝食の時にでも切り出そう。近場に親戚の家があったとでも言えば納得するだろう、彼女は。


『………名前さん?どうかしましたか?』

『え、?』


と、思いながら向かって来る虚に斬魄刀を抜こうとした時だった。
今私がいる場所は家から少し離れた竹林の中。虚の気配に気付いて義骸から抜けて音も立てずに出てきた筈なのだが、何故か彼女が側にいた。しかも、私より虚に近い場所に。何度も言うが、彼女は非常に霊圧が高い。また、虚はいくら虚の関心が死神に向いていたとしても無力に等しく他易く食べられる濃い魂が近くにあればそれに向かう。そして見事にその法則に従ってくれた虚は正に私から標的を変えて彼女に向かおうとしていた。私の視線が自分からズレていることに気付いた彼女が虚を認識して恐怖で凍りつく。叫び声も上げす足も一切動こうとしない彼女に舌打ちをしつつ、解放しながら走り、こちらに注意を向けさせる為に思い切り叫んだ。


『ミツバ!!』

































「はい、なんでしょう?」

「こんな白髪バカと付き合ってるとロクなことがありませんよ」

「オイオイ、名前ちゃん。会って間もない人にそれはないでしょ」

「事実、でしょ」

「まぁ、大変。そうしたら、もう私の病室には来ないで頂けますか?」

「あれェエ!?何でそうなるのかなァア!?」


総悟の姉、ミツバさんが来た翌日。私はミツバさんの病室にいた。
理由は攘夷浪士関与疑惑だ。
彼女は局長に結婚の報告をしに来ていたのだが、時を同じくして副長と退、涼、終と私は武器転売の疑いが掛かっている転海屋の動向について調べていた。その頭が近々結婚すると言うのも掴んでいた矢先にミツバさんの結婚報告。お相手は何処の方なのかなという局長の問いかけに貿易関係のお仕事をしてる転海屋という所の当主蔵場当馬さんよとにこやかに答えた時には思わず固まってしまった。


『…え、マジで』

『マジらしいな』

『どうするんですか、コレ』

『どうするも何も、"これ"に関しては副長の命令が絶対だからねぇ…』


上から私、終、涼、退のセリフだ。昨日の朝、覗き見していた時に判明した事だ。涼は前にも言ったが終もそうで、隊長と監察を兼任して貰っている。命の危険が伴う潜入などの時にそれなりに腕があった方が此方としても安心して任せることが出来る。なので、隠密行動が出来そうで副長に対して信頼の厚い者を二名引き抜いた。私と退と合わせて四人。これだけいれば十分だろと言う事で、副長が極秘に調べたいことに関しては直属の監察より更に近い我々が動く決まりとなった。しかもこの存在は私達と副長しか知らない。涼と終が監察を兼任していることすら知られていない。…いや、知られてはならないと私はコレを設立させると副長に言われた時に忠告した。ある意味、謀反を働く者の首を落とす役割も果たすのだから。
大分話は逸れたが、その副長の命で私は今総悟の姉上で攘夷浪士の頭の婚約者である沖田ミツバの病室に来ている。だが、予想に反してというか案の定というか銀時がそこにはいて。激辛煎餅といちご牛乳という相反する物を両手にしている彼を見た時には思わず溜息が出た。なんで、厄介な時には必ず首を突っ込む態勢が出来てるんだ。しかも銀時の足の下には退がいて。頭が痛くなった。


「…オイ。お前ら、ちょっと面貸せ」


踏み潰された退を無視して、持って来た花をベッドサイドのテーブルへと飾っていると銀時が不意にそんな事を言って来た。顔をあげれば問答無用と言いたげな彼の目と目が合う。だけど、それに従うつもりはない。


「私はミツバさんの様子をちょっと見に来ただけだから、貴方の詮索に付き合ってる暇はないよ」


ではミツバさん、お大事に。
そう言って仕切られたカーテンを潜ると、銀時に腕を掴まれる前に瞬歩をした。




























(今でも死神は見えるのだろうか)

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