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こうして初めて足を踏み入れたコミケ会場。
中は同人誌やグッズの販売開始が待ちきれないオタクたちでごった返していた。
土方「美佳氏、拙者はこのゾーンを攻めて、美佳氏はこっちの方を…」
『ねぇ、トッシー。なんで私は真選組の制服着てるの?』
土方「コスプレでござるよ!後で写真お願いしてもいいかな?」
『それはいいけど…』
土方「あっ、ほらそろそろ開場だよ。健闘を祈る!」
祈るってすっごいいい笑顔で去って行ったけど…
まぁ、とりあえず仕事はこなしますか…後で十四郎に限定物のブランドバック買わせよう。
うん、そうしよう。
日頃運動不足のオタク共の中に居れば私もトッシーも足が速い。
あっと言う間に目的の同人誌を確保することが出来た。
それでもトッシーは掘り出し物があるかもしれないとか言って、買い物を続けていた。
私はというと、荷物を一旦ロッカーに預け、プラプラとその不思議空間を楽しんで居た。
そんな中にひっそりと出店しているブースを見つけ、近寄ってみるとそこには…
『あれ…銀時…にトッシー…いや、十四郎か。こっちは小太郎?総悟も居る!あっ、辰馬に晋助も!!』
そこにはなんとも卑猥な恰好をして絡み合う銀時とその他諸々。
とりあえす、あれだ…BL本というやつらしいことは理解した。
「あっ、お姉さん、その恰好は真選組のコスプレでしょ?
すっごい似合ってるよ〜!!
真選組ってことは…沖土かな?それとも銀土?」
『沖土?銀土???』
「あっ、もしかしてこういうところ来るの初めて?」
うんうんと頷くと、売り子のお姉さんは沖土やら銀土の魅力について語り出してくれた。
要は、沖土と言うのは沖田×土方で、銀土は銀時×土方。
そして、この世界では名前が先にある方が攻め、後ろの方が受けらしい。
ということは、ここのお店では圧倒的に十四郎は受けということだ。
十四郎ねぇ…まぁ…あながち間違いでもないか。
「お姉さんはぐっちょんぐっちょんの性描写大丈夫?」
『えっ、どのくらい?』
「例えば…こんなの。』
『おぉぉ…』
「これが大丈夫ならここにあるやつどれでも大丈夫だと思うけど…誰が好きとかある?」
すっかり売りつける気満々のお姉さんだけれども、私もまんざらでもない。
とりあえず、十四郎が出てるやつと銀時が出てるのを全部買って、その場を後にした。
あっ、でもこれどこに置けばいいんだろう…十四郎の部屋に置いたら怒られるかなぁ。
万事屋に持って帰っても、神楽ちゃんとかには教育上悪いしなぁ…
その辺全く考えてなかった。
土方「美佳氏〜!!お待たせ!」
『お帰り〜。なんかあった?』
土方「うん、今回の収穫は上々だよ。美佳氏は?何か見ていたみたいだけど…」
『ンフフ〜後で屯所で一緒に見よう。』
土方「分かったでござる!!」
「あ、あの〜すいません、それ真選組のコスプレですよね?写真撮らせてもらってもいいですか?」
トッシーと話をしていると、いかにもオタクな青年が鼻息を荒くして話しかけていた。
仕方ない、チェリーボーイたちの相手をしてやるか。
あれこれ頼まれたポーズを決め、いつの間にやらトッシーも撮ってるし…
このチェリーボーイが…どんだけローアングルから撮ってんだ!!
なんとか撮影会も終え、やっと屯所へと戻って来た。
屯所で買って来たものを広げると、トッシーは嬉しそうにそれを眺めはじめた。
土方「あっ、そうだ、美佳氏は何を買ったでござるか?」
『そうそう、これこれ。』
土方「こ、これはっっ!!!噂の沖土本!あっ、こっちは坂田氏!!み、見てもいい…いや、やっぱりっっ…」
『じゃぁ、一緒に見よう。ん〜と、まずはこれね。総悟と十四郎のやつ。』
開いてみると、最初のうちは馴れ初め的な甘酸っぱい感じで描かれていたのが、総悟が我慢できなくなって、十四郎を押し倒して…
土方「はっっ…う…お、沖田氏〜〜〜それは十四郎が可哀想でござるぅぅぅ!!
あっ、でも、涙目の十四郎は可愛い…」
おぃ、十四郎は可愛いって自分のことだろう…と思わず突っ込みたくなったが、グッっと我慢して、BL本に目覚めつつあるトッシーを観察した。
土方「次はこっち!!坂田氏の…おぉ…こっちの十四郎はビッチでござるな!?
そんな自分から跨って…十四郎!!」
私はというと本よりもトッシーの反応の方が面白かった。
沖田「姉さ〜ん、居るんでしょ〜?」
『総悟?どうしたの?』
沖田「…どうしたのって…なんですかぃこれは。」
土方「あっ、沖田氏!!沖田氏もどうでござるか!?」
沖田「…今日はトッシーの方なんですかぃ?」
『うん、トッシーの方。それで、朝からコミケに付き合わされてね。
そしたら、これ!!』
沖田「…いやがらせですかぃ?」
土方「沖田氏〜そんなに十四郎の泣いてる姿にそそられるのかい?」
沖田「いや、これ俺じゃないから。」
土方「…沖田氏は〜十四郎のどこが好き〜?ねぇねぇ、沖田氏〜…痛いっっ!!何で叩くの〜!!」
沖田「イラっとした!ものっそいイラっとした!!」
『まぁまぁ、総悟。トッシーに悪気はないんだから。
それよりどうしたの、私に用事?』
沖田「いや、姉さんが来てるって隊士の連中が話してたから…」
『会いに来てくれたの〜??ありがと〜総悟。』
沖田「姉さん、このアイス好きでしたよね?この間買ったんで…」
土方「ん〜…2人はお似合いでござるな!」
またなんか言いだしたぞ、コイツ…
土方「いつも十四郎越しに見ていたんだけれども、美男美女同士お似合いでござる。
でも、拙者の欲目かもしれないけれども、十四郎と美佳氏もお似合いでござる。」
沖田「へぇ…土方さんと姉さんがどうお似合いなんで?」
土方「ん〜沖田氏と美佳氏はやはり年齢差が否めないでござる。
でも、その点十四郎はそれなりのカップルに見えるでござるよ。
それに、十四郎も美佳氏と一緒の時は普通の男に戻ってるでござる。」
沖田「トッシーは外に出てない時も外の世界が見えるんで?」
土方「うん、そうだね。意識は覚醒しているからね。」
沖田「…ということは、土方さんと姉さんが何をしているかも…」
土方「うん。丸見えだね。」
沖田「へぇ…トッシーちょっと、ちょっと…」
あぁ〜なんかよからぬ話をしているけれども…私、し〜らないっと。
『銀高ね〜。こんなのあの2人が見た日には地球滅亡しそうだけど…小太郎は…倒れそうだな。
にしてもまぁ…皆美人に描いてもらって。あらあら…銀時、がっつきすぎ。
あらあら…まぁ…!!』
沖田「姉さん、あんたどこのおばさんですかぃ。あらあらまぁなんて…」
『だって、これ…』
沖田「あぁ〜あぁ〜旦那…そんなにがっついて…」
『ほら〜。』
沖田「それよりトッシー、もう姉さん借りて行っていいかい?」
土方「えぇ〜。」
沖田「お前さんは今日1日姉さんをひとり占めしてたんだろぃ。」
結局、総悟がトッシーを言い負かし、私は総悟の部屋へと向かった。
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