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兵たちが夜間の奇襲作戦に出兵した夜。
彼らが寝泊まりをしていた小屋にはけが人とわずかばかりの兵士たちだけが残っていた。
「美佳さん、護衛は俺たちがやるんでどうぞ休んでいてください。
銀時さんたちが戻って来たら、どうせたたき起こされるんですから。」
『うん、じゃぁ、お言葉に甘えてそうします。ありがとう。』
そうは言った物の気が気ではない美佳は誰も居ない部屋で座ったまま眠れない夜を過ごしていた。
しかし、待てどくらせど彼らは戻って来ない。
そうしているうちに陽も上る時刻になってしまった。
「いくらなんでも遅すぎやしないか?」
「長引いているのかもしれんな。」
「いや、それにしても連絡の一つでもあってもいいものを…」
「もしかしたら銀時さんたち…」
「しーっ!!美佳さんに聞こえてしまうだろう!」
「あっ、やべ。」
部屋の前で話をしていれば当然耳にも入る。
しかも、四天王の不在、兵士たちが噂するのも仕方がない。
「でもさ…実際のところ、美佳さんって誰の女なんだよ。」
「そりゃぁ、銀時さんだろ?」
「えっ、高杉さんじゃねぇの?だってほら、初めてここに来たときだって…」
「あぁ〜あれなぁ。今じゃ全然考えられないんだけど、あん時の美佳さんすっげぇ怖くて正直チビった。」
「まぁでも、あのお三方の幼馴染なら俺たちとは違うんじゃねぇの?」
「でもさぁ、女が毎日剣術の稽古ってどうよ。戦に出る気なの?あの人。」
「護身だろ。いくら銀時さんたちが稽古つけてるからって、女じゃ男に敵わないだろ。」
「でも、俺さこの間聞いたんだよね。桂さんが美佳さんはそんじょそこらの男に負ける程弱くないって言ってるの。」
「だってほら、あの人たちは美佳さんに激甘だから。」
「やっぱあれかな、毎晩お相手でもしてもらってんのかな。」
「うわぁ〜ズリィ!!こっちは女に飢えてるっつーのに!!」
くだらない会話に嫌気がさした美佳は勢いよく扉を開け、話をしていた兵士たちを睨み付けると、台所へと向かった。
男ばかりのところに居ると、下世話な話も聞こえて来るもの。
普段はそんなことも気にも留めず聞き流していた美佳も、銀時たちの生死も分からないこの状況でそんな話をする隊士たちに苛立ちを抑えられなかった。
不安な気持ちを抑えながら、雑務をこなす。
そうして1日が終わり、部屋に戻ろうとしたとき、負傷した兵士が命からがら戻って来た。
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