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役人たちに連れて行かれる松陽先生を私たちは必死に追いかけた。
しかし、その手は届くことがなく、私達は役人たちに取り押さえられ先生の姿が遠くなっていくのを泣きながら見つめることしかできなかった。
先生の姿が見えなくなるとやっと私たちは解放された。
銀時「おいやめろ!!」
「うるさい離せ!!」
私達から手を放した役人たちは寺子屋に火を放っていた。
私は慌てて中に入り、先生の部屋へ向かった。
銀時「美佳っっ!!」
『銀ちゃん、離して!!先生の…先生の寺子屋がなくなっちゃう!!』
銀時「美佳!!んなことしてる場合じゃねぇ!!早く!!
お前が死んだら…!!」
銀時は錯乱状態にあった私を無理矢理担ぎ、布団の側にあった先生の羽織だけを握って外に逃げた。
桂「銀時!!」
高杉「美佳!!」
寺子屋も燃え尽き、火もほとんど消えてしまった頃、騒ぎを聞きつけた小太郎たちが家を抜け出してやって来てくれた。
銀時「...」
桂「どうした?何があったのだ!!」
高杉「美佳!!!しっかりしろ。」
『晋ちゃんっっ…松陽先生が!!松陽先生が!!』
銀時「…先生は帰ってくる。あの人は…」
銀時は先生の羽織を私にかぶせた。
そんな銀時の目にも涙が浮かんでいた。
3人は燃えてなくなっていく寺子屋を呆然と見つめ、私はただただ涙を流すだけだった。
それから私と銀時は近くの廃寺に移り、そこで2人で暮らし始めた。
暮らし始めたと言っても、何にもないところで雑魚寝して、生活の質は格段に落ちた。
それでも毎日小太郎と晋助が家から食料をくすねて持ってきてくれ、なんとか生きながらえて居た。
高杉「痩せたな。」
『そう?』
高杉「あぁ。髪の毛も…」
『バサバサになっちゃったね。』
晋助は松陽先生が居なくなってからの私の姿を見て嘆いた。
松陽先生が居なくなってからというもの、他の寺子屋に通い始めた晋助たちとは違って、
時間だけは無数にある私と銀時は毎日のように奉行所に通い、先生を釈放するように掛け合った。
毎度毎度門前払い、そして捕まった理由すら教えてもらえない状況に私も疲れ果て、食欲も落ち全てがどうでもよくなっていた。
高杉「美佳、お前のこんな姿見たら先生が悲しむだろ。」
『だって先生…』
銀時「あぁもう!メソメソメソメソうるせぇな!」
桂「銀時!!」
銀時「泣いたところで何になる!
泣いたら先生が戻ってくんのか?お前が飯食わなきゃ先生が帰ってくんのか?
だったら、俺も一緒に泣いて一緒に絶食してやらぁ。」
銀時は私の胸倉を掴み怒鳴りつけた。
銀時「でも…ちげぇだろ!!
そんな事したって…だったら、どうやって先生を奪い返すか考えるしかねぇだろうが!!
役人どもとやり合ってでも、何してでも…そん時にお前がヒョロヒョロしてたら、足手まとい以外のなんでもねぇ。
てめぇの護りたいもんくらい、てめぇで護れるくれぇ強くなれ!!」
銀時の胸倉を掴み返したものの、言い返せるはずもなかった。
私は弱い。
大切な先生を護ることも出来ない私は...弱い。
銀時「俺は先生を奪い返す為なら鬼にでもなってやる。」
銀時の胸に顔を埋め、これでもかというくらいに泣いた。
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