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私はひとりひとり彼らの顔を見る。
なんだか彼らの方が神妙な面持ちなのに思わず笑いが零れる。
そして、静かに自分の生い立ち、松陽先生に拾われた時のこと、銀時たちがロリコンクソジジィから守ってくれた時のこと…を話し、彼らは茶々を入れるでもなく黙って話を聞いた。
銀時たちと過ごした幼少時代。
彼らと過ごしたことで、親に捨てられたトラウマも、ロリコンクソジジィのトラウマも私の中では薄れて行っていた。
――…
『ねぇ、銀ちゃん。私もっと強くなりたい。』
銀時「あぁ?んじゃぁ強くなれよ。」
『なれよじゃなくて、稽古つけてよ。』
銀時「やだよ、面倒くせぇ。」
高杉「美佳、こいつに頼んでも無駄だ。稽古なら俺が付けてやる。」
毎日毎日晋助は飽きもせず私の稽古に付き合ってくれた。
普段は甘い癖に、稽古の時は銀時ばりのドSっぷりを発揮した晋助。
もう無理だと弱音を吐いても、それを許さず毎日立てなくなるまで稽古をつけてくれた。
松陽「美佳、剣術の鍛錬も結構ですが、毎日こんなボロボロになるまで…」
『先生、私強くなりたいんです。』
松陽「いつも言っているでしょう。剣は…」
『敵を斬るためではない。弱き己を斬るために振れ。
己を護るためではない。己の魂を護るために。』
松陽「分かっているのならなぜそんなに根を詰めるのです?」
『私の魂…バカ兄貴たちを護るためです。
弱い私じゃアイツらを護れないから。』
松陽「バカ兄貴…?銀時たちのことですか?」
不思議そうに訊ねる松陽先生に私はニッコリ笑った。
あの瞬間はロリコンクソジジィを殺せば、私の気持ちは晴れるんだと思っていた。
でも、そうではなかった。
私の気持ちを晴らしてくれたのは、命をかけて私を護ってくれたアイツらの姿と、
「生きろ。」と言ってくれたアイツらの言葉だった。
だから、今度は私の番。
アイツらが私の事を護ってくれたように、私もアイツらを護りたい。
ただ強くなりたい一心で毎日、晋助の稽古について行った。
私が剣の力を付け始めた時、ある事件が起きる。
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