─────---- - - - - - -
美佳が寺子屋に来て1ヶ月ほど経った頃、寺子屋に恰幅のいい、いかにも金持ちそうな中年の男性が訪ねて来た。
男性は常に笑顔で、息抜きにと高級そうな包み紙に包まれた茶菓子も持ってきてくれた。
松陽「わざわざすみません。子供たちも喜びます。」
「いえいえ、子供は甘いものが好物ですからね。
それに、あなたには世話になったものですから。」
男性の言葉に松陽は不思議そうに首を傾けた。
「申し遅れました。私、着物問屋をやっております、路里(みちさと)根之助と申します。
私の娘…と言いましても実の娘ではないのですが…朝日奈美佳がこちらでお世話になっていると聞きました。」
松陽「美佳の…?」
路里「えぇ。育ての親とでも言いましょうか…
あれは身寄りのない子供でしてね。
野宿していたところを偶然見つけまして、うちで保護したんです。
お恥ずかしい話、私はこの歳で独り身ですから、あの子さえよければと…あんな小さな子供がしかも女の子が野宿なんてなんだか放って置けなくてね。
しばらくは上手くやっていたんですがね、何が嫌だったのか家出をしてしまいまして…」
松陽「そうだったんですか…」
路里「まぁ、正直な話、私の家族はあの子の事を良く思っては居なかったようなので、もしかしたらそれが嫌になったのかもしれません。」
男性は申し訳なさそうに、松陽に話続けた。
松陽「…美佳、そこに居るのでしょう?きちんと挨拶をしなさい。」
襖の後ろで銀時たちと隠れるようにして話を聞いていた美佳は、いつもとは違い厳しい声でそう言った松陽にビクッっと肩を揺らした。
高杉「美佳?」
『銀ちゃん、晋ちゃん、コタくん、私…おじさんのお家帰りたくない…』
消え入りそうな小さな声で、3人にそう告げた。
すると突然襖が開かれそこに松陽が立っていた。
松陽「挨拶はきちんとしなさいといつも言っているはずですよ。」
尚もそう厳しく言う松陽に美佳はとうとう嫌われてしまったのかと、俯いた。
松陽に手を取られ、彼の隣に座らされると美佳は震えた声で男性に挨拶をする。
路里「美佳!!
心配したんだよ!この2ヶ月間ずーっとお前を探して…無事で良かった。」
『おじさん、急に家を飛び出したりしてごめんなさい…』
路里「いいんだよ、いいんだよ。
どうせまた私の家族に嫌な事でも言われたんだろう?
すまないね、何度話をしても分かってくれない家族で…
でもね、おじさんは何があってもお前を大切にするから心配しなくていいんだよ。」
傍から聞いていれば、美佳の事を本当に心配しているように見えた。
銀時「…」
高杉「気持ちわりぃ。」
桂「同感だな。」
しかし、勘のいい3人には何か裏があるように見えたらしく素直に喜ぶことは出来なかった。
実際に美佳は顔を上げずに俯いたまま、隣に座っていた松陽の着物を掴んで怯えているように見えた。
すると何を思ったか、銀時と高杉が立ち上がり、美佳達が話をしていた和室に入ると美佳の手を取りその場から逃げてしまった。
桂「申し訳ありません。美佳はお渡しできません。」
桂は丁寧にそう告げると、銀時たちの後を追って逃げて行った。
← →
7/14
←contents
←main
←top