─────---- - - - - - -
全てのテーブルを回ったあと、美佳はゆっくりと入り口に立っていた編み笠の男に近づいて行った。
まるでその男以外は存在しないかのように、男だけを見つめ、男だけのために踊る美佳。
桂「おい、銀時…」
銀時「あぁ…」
そんな彼女の様子に銀時と桂は心配そうな表情を浮かべた。
やがて、曲が終わると美佳は男から離れると舞台に戻り、客にお辞儀をすると舞台から降りて行った。
ショーが終わると、感動冷めやらぬと言った感じで、口々に感想を述べる。
特に神楽はそういうものを見るのが初めてなこともあって感動していた。
神楽「美佳姉、めっちゃキレイだったアル〜💗」
新八「正直、ちょっと美佳さんのこと見直しました。
あんな恰好してるから、まともな人じゃないのかなって思ってたけど…」
妙「新ちゃんはまだまだねぇ。
美佳ちゃんはちゃんと自分の仕事に芯を通してるわよ。
娼婦なんて理解されないし、正直私も軽蔑していたところはあるけど…あの子は自分の仕事とちゃんと向き合ってる、そんな気がするわ。」
会ったばかりだというのに、美佳のことをそこまで理解しているお妙に銀時も桂も驚いた表情を見せる。
近藤「さすがお妙さんですなぁ、さっき知り合ったばかりなのに、そこまで彼女のことを見抜くとは!!」
お妙「私だって一応接客業やってるんですから、その人がどういう人なのか、すぐに分かるように自分でも努力しているつもりです。
どこぞのゴリラと一緒にしないでください。」
近藤「いや〜ハハハ!一本取られましたなぁ〜。」
土方「別に何にもうまい事言ってないと思うぞ。
単純に近藤さんを否定してるだけじゃねぇか。」
しばらく酒を飲みかわしながら、話を続けていたのだが、桂は美佳が戻って来ないことが気になっていた。
桂「遅いな。」
銀時「あぁ〜?どうせアイツ追いかけて行ったんだろうよ。」
桂「…随分呑気な物言いだが、お前はそれでいいのか?」
銀時「…別に、アイツが行きたきゃいきゃいいだろ。ガキじゃあるめぇし、てめぇの事くらいてめぇでどうにかするだろうよ。
それに、お前が心配しなくてもあの野郎は美佳を傷つけるような事はしやしねぇよ。」
桂「そうだったな。昔っからお前とアイツは女子の好みだけは一緒だったからな。
お前が美佳を大切にするようにアイツもそうだろうさ。」
銀時「あぁん?何意味の分かんねぇこと言ってんだよ。
それよりほら、酒がないわよ、ヅラ子〜!
お酒追加して来てちょうだいっ!」
桂「なんで俺が…後輩であるお前が行くべきだろう?」
そんな2人の静かな会話を土方だけは聞き耳を立てて聞いていた。
目の前に居る、女と見間違える程の美人と先ほどの編み笠の男。
なんとなく危険な香りがする。
しかし、それ以上に編み笠の男を追って居なくなった美佳がどういう人物なのか気になった。
聞けば銀時とは幼少の頃からの馴染みらしい。
銀時と言えば、攘夷戦争で白夜叉と呼ばれ仲間からも恐れられる程の腕の持ち主だった。
その剣の強さは以前サシで勝負をして実感済みだ。
銀時が白夜叉と呼ばれたその頃に彼と共に戦ったのが桂小太郎。
今、幕府が最重要指名手配をかけている人物だ。
しかし、いくら銀時の近辺を探ろうとも、銀時に尋ねようとも桂の居場所を探り当てることは出来なかった。
でも、もし…相手が銀時ではなく女の美佳ならば…
一筋縄ではいかないのは重々承知している。
それでももしかしたら…そんな事を土方は騒ぎまくる連中の中で静かに考えていた。
← →
4/7
←contents
←main
←top