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部屋を出た高杉は、甲板で風に当たっていた。
河上「晋助、ここにいたでござるか。」
高杉「万斉か…」
河上「あの女子は?」
高杉「部屋だ。大方今頃いびきでもかいて眠っているだろうよ。」
河上「あの女子も同門の出でござるか?」
高杉「あぁ…以前、どうしても会いたい女が居ると言ったのを覚えているか?
あれがそうさ。
綺麗な女だった…ガキの頃からずっと。
そして強い女だった。でも強さの割に泣き虫でな…」
河上「晋助…お前はあの女子に何を望んでいる。ここに残る事でござるか?」
高杉「ここに残る?クク…それが出来たらどんなにいいだろうなぁ。
でも、アイツは蝶と同じさ。あっちへこっちへ甘い蜜の匂いがするところならどこへでも行っちまう。
銀時もさぞかし手を焼いていることだろうさ。」
はっきりと聞いたわけではないが、高杉の美佳に対する気持ちは想像に容易い。
ずっと会いたいと願った相手が、敵の味方をした。
それにも関わらず、高杉は特段悲しそうという訳ではない。
河上には高杉の真意が分からなかった。
高杉はいつもと同じように総督としての仕事をこなす。
そんな彼をまた子は陰から見つめていた。
河上「気になるなら聞けばいいでござる。」
武市「普段はがさつなくせに、こういうところでは意気地なしなんですねぇ、また子さんは。」
また子「…気にはなるけど、なんか聞けないっす…晋助様は聞いて欲しくなさそうだったっす…」
美佳と高杉の関係が気になる。
高杉の様子からしてただの幼馴染というわけではなさそうだ。
それでも、なんとなく聞いてはいけない気がした。
河上「では晋助ではなくあの…朝日奈美佳という女子に聞いてみればいいでござるよ。」
また子「あんなやつと話しなんてしたくないっす!!」
武市「河上殿、貴殿はどのように見ておいでか?あの娘…あの高杉殿が一目を置くとなれば、子供の頃はさぞかし美しい幼女だったのでしょうな。」
河上「…それは拙者には分からんが…ただ先ほどの戦いっぷりからして、剣の腕は晋助や白夜叉と一緒に居たというだけのことはある。
どことなく3人の剣の使い方に似てるでござるよ。
あれが鬼兵隊に入ってくれれば、鬼兵隊も安泰でござる。」
先ほど銀時たちと共に戦う美佳の姿を見ていた河上。
相手が天人というのに、怯えるでもなく確実に仕留めて行く様は手練れの河上にしても少しばかり怖さを感じるほどだった。
そんな彼女が鬼兵隊に入ってくれれば、どんな敵が相手だろうと確実にこちら側か有利に立てるだろう。
それに彼女がここに残れば、少しは人間らしい高杉を見れるかもしれない…そんな興味が沸いた。
また子「何言ってんすか、万斉先輩!!アイツは敵なんすよ!?
晋助様のなんだか知らないけど、ズカズカと入りこんで来て!!」
武市「心の臓と言っていましたな。まぁ…そういう事なんでしょうね。」
河上「そういう事でござる。」
また子「どういうことっすか!!アイツが晋助様の心臓な訳ないじゃないっすか!
心臓が身体の外にある訳がないじゃないっすか!!」
河上「また子はもう少し色恋について勉強した方がいいでござるな。」
高杉の言葉を理解しないまた子をからかいながら、3人は黙々と仕事をこなす高杉を見つめた。
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