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ため息を吐いたまま、高杉はまた窓際に座ると今度は三味線を弾き始めた。
高杉「…その服」
『戦闘服。』
高杉「あのバカ思い出すから着替えろ。」
『着替えろっつったって、そのつもりなかったから服なんて持って来てないもん。』
高杉「また子に借りるか…」
『…うん、やめようか。あの恰好はあの若さだから許されるんだよ。』
高杉「おめぇはババァだもんなぁ。」
『私がババァなら晋助はジジィだからね。』
高杉は立ち上がると、箪笥の中から女ものの着物を何点か出して来た。
『…晋助の女の着物着る趣味ないんだけど。』
高杉「まだ使ってねぇよ。」
『……』
高杉「…後で買ってやる。」
駄々を捏ねたところで、血で汚れた戦闘服のまま居る訳にも行かない。
なんで高杉の部屋で高杉の箪笥であろうところから、女ものの着物が出て来るか…
色んな事を想像すると複雑にもなるが、美佳は黙って着替える事にした。
さすが鬼兵隊総督の部屋とでもいうべきか、高杉の部屋の隅には風呂場まで完備してあった。
美佳は風呂を借り、身体を綺麗にすると髪を乾かし始めた。
するとその音を聞いたらしい高杉が何も言わずに入ってきて、美佳が持っていたタオルを取り上げると、彼女の髪を優しく乾かし始めた。
しかし、そのうちに高杉は美佳の首元に手を這わせると、タオルを置いて何も言わずに出て行った。
『あ…』
鏡を見ると銀時に付けられた跡がはっきりと残っていた。
支度を整えて外に出ると、高杉の姿はなくなっていた。
高杉を探して外に出ようかとも考えたが、すっぴんの上に非常に眠たい。
携帯を取り出し、高杉の布団の上に寝転がった。
『もしも〜し。』
新八「美佳さん!?大丈夫なんですか??なんで勝手に…あっ、銀さん!!
銀さん!!ちょっっと神楽ちゃん、銀さん連れてきて、早く!!」
神楽「仮にもレディにこんなおっさんを担げとはどういうことネ、新八。
お前がやれよ。」
新八「うっさい、怪力娘!お前さっきからそこで酢昆布食べてるだけだろ!
美佳さんから電話なんだよ!早く!!」
神楽「定春〜銀ちゃん連れてきて〜。」
いつものごとく騒がしい万事屋。
電話越しの彼らの声に美佳は安心したように笑う。
銀時「なんだ?」
『銀時、身体は?』
銀時「まぁなんとか。」
『そう。ちゃんと治すんだよ。』
銀時「あぁ。」
『あと私、晋助のところにしばらく居るから。』
銀時「そうか。まぁ、ヅラの代わりにたっぷり説教してやるこった。
あ〜あと、迷惑料たんまりもらってくんだぞ。
あんなもん作る金があるんだから、金なら有り余るくらいあるはずだ。」
『フフ、そうだね。』
銀時の声を聴きながら、美佳はそのうち眠ってしまった。
返事をしなくなった美佳に銀時は静かに受話器を下ろす。
神楽「銀ちゃん…」
銀時「心配すんな。しばらく美味いもん食わせてもらうってさ。」
神楽「…ズルイ!!ズルイアル!!」
新八「お前は食べ物ばっかだな!!でも…大丈夫なんですか?」
銀時「あぁ、心配要らねぇよ。」
銀時が大丈夫だと言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。
新八と神楽はそれ以上銀時に尋ねる事はしなかった。
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