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こうして普通にバカをやって騒がしい1日を送る。
そんな日々が美佳には何者にも代えがたい幸せだった。
服部「随分と表情が変わったじゃねぇの。」
『全ちゃん、その突然現れる癖どうにかしてくんない?』
服部「多少はお前でも気が付くくらいの気配は出してたつもりだが?」
『それでも!普通に話しかけてくればいいじゃん。
なんでいつも背後からなの。』
服部「いいじゃねぇか、忍っつーのはそんなもんだ。」
『さっちゃんは天井からだしね。』
服部「あいつの場合は正面から入っていけないからな。」
声を掛けて来た服部に少々驚きながらも、いつものことだと半ばあきらめ気味に美佳は返事を返す。
ジャンプを読みふける服部に同じようにジャンプを手にすると周りが見えなくなる銀時の姿を重ねる。
『そんなんだからモテないんだよ。』
服部「あぁ?なんて?」
『女が側に居るのにジャンプに夢中ってどうなのよ。』
服部「別嬪さんには興味ないからな。」
『…それ何気に褒め言葉だよね。』
服部「俺は興味ないけどな。」
『その一言が余計なんだよ。』
自分には興味がないと言い放つ服部。
そうは言っても手を出してくるのが男という生き物なのに、服部は1度も手を出してこなかった。
よっぽどのブス専なのかもしれないが、それが美佳を安心させた。
いくら将軍の命だろうがたった一人の女の為に、服部は遠い宇宙に何度も足を運んでくれた。
服部は美佳にとって感謝してもしきれない人間の一人だ。
『ねぇ、全ちゃん。私、綺麗になった?』
服部「あぁ、綺麗になった。」
フフッっと嬉しそうに笑う美佳の頭を服部は優しく撫でた。
自分が一番醜かったであろう時に知り合った服部。
そんな服部が自分を見て綺麗になったと言ってくれる。
あの頃から自分は少しでも変われたのだろうか。
全てがどうでもいいと感じ、あんなに大切に思っていた銀時たちのことも忘れ、ただひたすらに死ぬことばかりを考えていたあの頃。
時間はかかってしまったが、今の自分なら松陽に会ってもしっかりと彼の顔を見据えて笑える気がする。
しかし、それももう叶う事はない。
あれからもう何年も経っているというのに、松陽に会いたいという気持ちはなくなることはなかった。
もう会えないと分かっていても、それでも会いたくてどうしようもない。
それほどに美佳にとって松陽は大きな存在だった。
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