─────---- - - - - - -
赤ん坊のおしめを変え終わると、美佳は赤ん坊を抱っこしてあやし始めた。
こういう姿を見ると、やっぱりコイツも女なんだなぁと思う。
普通の家族ってこんな感じなんだろうか…
『銀時、これ持って。ここ押して。』
美佳は俺に携帯を渡すと、自分は赤ん坊と一緒に俺の腕の中に入りこんで来た。
腕を伸ばして、3人が入るように写真を撮る。
『フフ、なんか家族みたいだね。本当そっくりだもん、2人は。』
銀時「天パなめんな。」
「あぶ。」
俺たちを見て美佳は優しく笑う。
コイツのこういう優しい笑顔は見ていて本当に飽きない。
『心構えするにはもう少し時間が必要かな〜。ね〜銀楽〜。』
銀時「銀楽じゃねぇよ。それにしても、お前の名前もまだ知らねぇんだもんなぁ。」
『さっき小太郎が言ってたじゃない。橋田屋のなんとか〜って。』
銀時「あぁ、そっか。橋田屋の孫だったなぁ。」
『銀時、さっさと橋田屋行って、お母さんに会わせてあげてよ。
子どもは親と一緒がいいんだから。』
「あぶ。」
ガキの頃、何度も感じた事だった。
母親の手作り弁当を持ってくる友達が羨ましかった。
俺たちが食べていたのは、松陽先生が作ってくれた質素なお弁当。
それでも、先生が早起きして作ってくれる弁当は旨かった。
そのうち、弁当作りは当番制になった。
先生の野菜ばっかの弁当、美佳の可愛らしい弁当、俺のボリュームたっぷりの弁当。
そんな生活が俺たちにとっては幸せだった。
『お母さん見つけたら、説教のひとつでもしてやんな。
どんな事情かしんないけど、こんな可愛い僕を放ったらかしてふざけんなって言ってやれ。』
「ぶ〜。」
『いいんだよ、そんくらい文句言ったって。親は何があっても子供を手放しちゃダメなんだから。
次こんなことやったら、万事屋の子になるって言ってやりな。』
「ばぶ。」
『大丈夫よ、パパもどきがいっぱい働いて立派に育て上げてくれるからね。
さっ、パパもどき。しっかりお母ちゃんに会わせてあげて。』
勢いをつける様に、美佳は俺の背中を叩いた。
仕方ねぇ、ちゃちゃっと片づけてワガママ娘のご機嫌取りしますか。
← →
9/11
←contents
←main
←top