─────---- - - - - - -
皆が帰った後、神楽は美佳と一緒に寝ると言って聞かなかった。
美佳と一緒の布団に入り、美佳がどこにも行かないようにとせんばかりに彼女の服を握りしめた。
やがて神楽が眠ってしまったのを確認して美佳は銀時の布団に潜り込んだ。
銀時「…眠れねぇのか?」
『ううん…』
そう言いながらも美佳は携帯を取り出すとどこかに電話を掛け始めた。
『晋ちゃん。』
高杉「どうした?」
『なんでもない…晋ちゃんの声が聞きたかっただけ。』
高杉「随分な殺し文句を言ってくれるじゃねぇか。」
『そりゃぁ、三十路近くもなったら男の喜ぶことのひとつやふたつ言えますよ。』
高杉「そうかい。」
すると電話口からは高杉の奏でる三味線の音が聞こえて来た。
ゆっくりと聞こえる三味線の音に美佳は耳を貸し、やがてそのまま眠ってしまう。
高杉「…銀時。」
銀時「…」
高杉「そこに居るんだろ。」
銀時「うるせぇんだよ、居るに決まってんだろ。ここは俺んちだ。」
高杉「何があった。」
銀時「けっ、自分は声色ひとつで美佳の様子がおかしいって気が付きますってか!!」
高杉「キャンキャンキャンキャン相変わらずうるせぇなぁ、てめぇは。
何があったか聞いてるだけだろうが。」
銀時「はぁ…昔の話をしたんだ。それでちょっと疲れてんだ。」
高杉「…銀時、てめぇがどんだけフラフラしてようが関係ねぇが、美佳がこれ以上傷つくことがあれば、俺はいつでもソイツを奪いにいくぜ。」
銀時「てめぇに言われなくても分かってるよ。」
何があっても、どれだけ離れていても、銀時と高杉にとって美佳は特別だった。
どれだけいがみ合って居ても、それだけは昔から変わらなかった。
美佳が笑ってくれるなら…この世の全てを敵に回そうとも彼女を護る。
それがどうしようもなく股の緩い女に惚れたバカな男の弱みだった。
≪終≫
← →
19/19
←contents
←main
←top