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それから服部は半年に1度彼女に会いにやって来た。
何度来ても自分に手を出さない服部に美佳も次第に心を開いて行った。
服部「逃げたくないのか?」
『ん〜無理でしょ。』
服部「諦めるなんてらしくないな。死神様なんだろ?」
『死神様はもう死んじゃったよ。』
服部「じゃぁ、俺がお前さんの大事な兄貴たちを探してくりゃ考え直してくれるか?」
『なんで全蔵は私を助けたいの?』
服部「そうだなぁ…猫は気まぐれなのさ。」
『猫?全蔵が?』
それから半年後にやってきた全蔵は桂と高杉の手配書を手にしていた。
服部「後の2人はまだ捜査中だ。」
『過激派攘夷志士…指名手配犯か…』
服部「どうだ?逃げ出す覚悟はできたか?」
『でもね、全ちゃん、私がここから逃げればやつらは私を探そうとするでしょ。
そしたら、自然とコイツらは狙われるじゃない。
そんな目に遭わせることはできないよ。』
女郎という立場ではあったが、天人たちがいまだ美佳の力を欲しているのは明白だった。
外出の許可すら簡単には与えられず、1日を廓で過ごす。
何度も施された手術。死のうとしても許されないこの身体が彼らにとってどれほどの価値があるのか美佳には分かっていた。
服部ももちろんそのことは理解していた。
美佳に隠れて行って居た隠密活動の中で、彼女の身体にどのようなことが行われているか、彼女がどのような客を相手にしているのかは十分調べがついていた。
それでも、自分が持って来た桂と高杉の手配書を見て穏やかな表情を見せる彼女を救い出す希望を無くすことは出来なかった。
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