─────---- - - - - - -
そんな時にやってきた男からもたらされた松陽の死の知らせ。
「お前の愛する師はお前の愛する兄の手に掛かって死んだのだ。」
『そんなはずない!!』
「白夜叉…坂田銀時。お前たちの中でも随一の剣の持ち主だったな。
仲間の桂と高杉の命を助ける代わりに師の首を撥ねた。」
美佳は男の持っていた剣を抜きとり、背後から刀を突き立てた。
『黙れ。』
「今更このような事をして意味があると?」
『うっっぁぁっっ!!』
その男は美佳の腕を捻りあげ、彼女の腕を折った。
使い物にならない右手を抑えながら、何度となくその男に斬りかかった。
「死神と呼ばれた主も、こうも戦場から離れていれば大したことがないものだな。
いや、むしろお前は離れて正解だったかもしれぬな。
白夜叉の決断は武士として英断であったのが分からんか。」
『…ふざけるな。てめぇらに…なんで…なんで…っっ!!』
「弱い。弱い人間にはなんの価値もない。」
美佳が気が付いた時にはすでにひと月の日が経っていた。
こんな時ですら、自分の命は絶えることがない。
殺してくれれば良かったのに…何のために自分を生きながらえさせるのか…
そんな失意の中でも身体が元に戻れば客を取らされる。
誰それの首を取っただ、地球人を何人殺しただの上機嫌で話す天人の傷を治した。
仲間を助けられないのに、なんで敵である天人を助けなければいけないのか…
そんな時に知り合ったのが服部だった。
天人になりすましやってきた服部は部屋に上がると何も話さずただ美佳の顔を見続けた。
『お兄さん、天人じゃないでしょ?』
服部「あっ、バレた?」
『なんとなく。』
服部「一応、ここ天人専用だからさ、内緒ってことでよろしく頼むわ。」
『何しに来たの?私を殺しに来てくれた?』
まだ若い彼女がそう言って笑うのに服部は衝撃を受けた。
確かに男に春を売る女郎にしては愛想笑いもしない。
さっさと仕事を終わらせようともしない。
ただそこに座っているだけだった。
服部「別嬪さんがなんて顔してんだ。」
『お兄さん、ブス専なの?』
服部「どうしてだ?」
『今の私の姿見て別嬪さんなんてお世辞でも言えないでしょ?』
疲れ切っている彼女をなんとなく放っておけなかった。
仕事で来たはずなのに、情が沸いてしまった。
← →
13/19
←contents
←main
←top