─────---- - - - - - -
その体質のおかげで命こそ助かったものの、国の為に彼女はその身を捧げる事になった。
国の為と言えば聞こえはいいものの、結局のところ時間稼ぎの為に国に売られたのだ。
下手すれば人身売買とも言えるそのやりとりは幕府内でも重要機密として取り扱われ、銀時たちがそのことを知ったのも美佳が宇宙へと連れられて行ってしまった後だった。
銀時「どういう事だ!!」
桂「銀時!!やめぬか!!」
坂本「美佳はどこに行ったか分からんがか?」
「はい…色々調べてみたのですが…消息が全く。
ただ婚儀というのは端から嘘で、婚姻の事実はなくその代わりに戦の場に置いて幕府軍のしんがりを務め、夜は男どもの相手を…」
坂本「なしてじゃ…なしてアイツばっかり…」
桂「あっ、おい!!高杉!!」
やはり無理にでも美佳を止めるべきだった。
やるせなかった。
1日でも早く彼女を救い出したかったのに、こんな広い宇宙のどこに居るのかも分からない彼女をどうやって救い出せばいいのか…
非力な己に嫌気が差した。
美佳はというと、いつの間にか連れて来られた宇宙にドキドキもすることもなく、ただ淡々と仕事として男に抱かれた。
そのうち美佳を買った男から、彼女と同じような女を量産し、この地に江戸で言う吉原のような歓楽街を作らんとしていることを聞かされた。
その言葉通り、地球や他の星から女たちが連れて来られ、美佳と同じように身体に寄生型エイリアンを入れられた。
しかし、子どもの頃から男の中で育って体力のある美佳とは違い、その女たちはエイリアンの拒否反応に耐えることが出来ず、亡くなっていった。
そんな姿を一番間近で見ていた美佳の心はどんどんと荒んだ。
増える死体の山、もし自分にこれ程までの精神力と体力がなければ彼女もこの山の中に埋もれていてもおかしくはなかった。
自分の眼の前で助けを求めて、苦しみながら死んでいく彼女達に何もする事が出来なかった。
ただ彼女達の最後の時間を手を握り過ごしてやる事しか出来なかった。
「生きろ。」と彼らが言ってくれた。
だから、どんなに身体を汚されようと耐えて来た。
でも一体自分は何のためにこんな事をしているんだろう?
自分の力を、銀時たちを殺そうとする天人に使わなければいけない。
これから生きていても、自分の力が続く限りこんなことが続いて行くんだろう。
自分という成功例が居る限り、同じように実験と称して連れて来られ殺される女は減らないのだろう。
だったら全部終わらせてしまえばいい。
美佳は剃刀を自分の腕に当てた。
そこから先の記憶はない。
しかし、彼女は生き残った。
斬り誤るはずもない。けれど彼女の腕には傷痕もなく、彼女は生き残った。
心は銀時とともに置いてきたはずなのに、辛い気持ちはなくならなかった。
何度も何度も死のうとした。
けれど、その度に彼女は生き残った。
やがて、女たちの調達も難しくなったのか、天人たちは美佳の力をより強くするために彼女に手術を施し、彼女の身体の中に増強装置を埋め込んだ。
『これじゃぁ、からくりと一緒じゃない…』
涙は出なかった。
もう涙も出ないほどに美佳の心は疲れ切っていた。
← →
12/19
←contents
←main
←top