─────---- - - - - - -
それから美佳はひとり姿が見えなかった銀時を探し、その場を抜け出した。
『銀ちゃん。』
何も言わない銀時の隣に座り、肩に頭を預ける。
銀時は美佳の手を取ると、ギュッっと手を繋いだ。
言いたい事は沢山ある。
なんでこんなことをするのか、なんでひとりで行ってしまうのか…
行くなと…自分の側に居て欲しいと…何度となく口を付いて出てきそうなその言葉を自分の中にしまい込んだ。
結局、松陽も美佳も護れない自分に自分の想いを告げる資格はない。
ただこれから先、彼女がこれ以上苦しまないように…これ以上彼女の身に不幸が降り注がないように…その分の不幸はいくらでも自分が背負うから…
だから彼女の人生は笑顔が溢れる様に…銀時はそう祈った。
『銀時…泣かないで。』
涙は流れていない。
けれど、美佳には銀時の心が泣いているのが痛いほどに分かった。
それは自分も同じだから。
本当は嫁になんか行きたくない。
婚姻なんて形だけだ。相手の顔も知らない。
知りたくもなかった。
これから先、好きでもない男と結婚し、好きでもない男に抱かれ、好きでもない男の子を為すのだろう。
それならば、家庭なんて持たずに皆の側に居たかった。
けれど、時代は彼女にそれを許さない。
これ以上、仲間が傷つくのを見るのは辛い。
仲間を助けたい気持ちと、銀時たちと離れたくない気持ちの間に揺れ動きながら、不安なまま最後の時間を過ごす。
傷ついた心を癒すように、美佳は銀時を求めた。
心なんてものはここに置いて行こう。
持って行っても辛いだけだから…心だけは銀時の側で幸せになってくれればいい。
互いの気持ちを口にする代わりに、何度もその証を相手の身体に残した。
桂たちが部屋に戻ると、昔のように仲良く一緒に眠る美佳と銀時がいた。
桂「やはり最後は銀時のところか。」
高杉「…幸せそうにしてらぁ。」
桂「…お前は辛くないのか?」
高杉「ククッ…今更それを俺に聞くのか?
心配しねぇでも、そのうち結婚相手からも銀時からも奪ってやるさ。」
桂「また泣くぞ?美佳は。」
高杉「ワガママな子猫ちゃんだからなぁ。」
銀時「化け猫だろ。」
桂「起きておったか。」
銀時「そんな熱い視線を感じながら寝るなんてできませーーーん!!」
『じゃぁ、皆で寝る?』
高杉「お前も起きてたのか?」
美佳は自分の隣を叩くと、高杉たちに寝転がるように促す。
← →
8/19
←contents
←main
←top