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歌舞伎町の外れの着物問屋の並ぶ通りへと向かった美佳と銀時。
相変わらず、美佳は銀時の腕に絡みつき歩く。
彼女の姿に男どもは鼻の下を伸ばし、女どもは嫌なものを見るように眉をひそめる。
そんな視線にもう慣れっこの美佳はさほど気にしていない。
着物問屋に飾ってある着物を見てはあぁでもないこうでもない悩む美佳は恰好こそ派手なものの、普通の女の子で、デートというものが久しぶりの銀時も相変わらずデレデレの顔をしながら美佳の後ろを歩く。
しばらくぶりに会った彼女は相変わらずのような、変わってしまったような…
ただたまに彼女が見せる不安気な表情が気になった。
『銀時〜これは?』
銀時「そらぁ、お前、今着てるのと大して変わらねぇだろ。」
『え〜こっちの方が1cm丈が長いよ?』
銀時「その程度の違い誰も分からねぇっつーの。お前、本当少しはしおらしくしねぇと…」
『あっれ〜?私をこんなんにしたのは誰だっけ?』
美佳はまるで銀時を試すように体を必要以上にくっつけて、彼を見上げた。
銀時「お前はまた…」
そういう彼もまんざらではない。
先ほど新八と神楽に邪魔され、どうにかこうにか抑えた自分の中の熱が再び燃え上がるのを感じないでもなかった。
このまま美佳の手を取って、朝っぱらから大人の情事に耽るのも悪くないかもしれない。
別に誰かに文句を言われる年齢でもないし、美佳が断る訳もないのも知っている。
なんだかんだと事に及ぶ理由を自分の中で並べ、銀時は美佳の腰に手を回す。
銀時「なぁ、美佳。朝の続きしたくなった。」
普段のアホ面を白夜叉と恐れられた頃の様にキリッっとさせると、美佳は返事の代わりに銀時の服の裾を握る。
互いの気持ちなんて本当は分かりきっている…それでも2人はつかず離れずお互いにとって1番いい距離を保っていた。
美佳と離れていた何年かの間に女が居なかった訳ではない。
けれど、やはりどこかに彼女の姿を求めていた。
美佳はこんな仕草をしていた、美佳ならこうしてくれる…自分の目の前からいなくなってしまった女の姿を目の前の女に求める。
我ながらどうしようもないと思い、特定の女を作るのはやめた。
もう美佳に会う事はないかもしれない…だったら、もう忘れなきゃいけない。
そう自分に言い聞かせ、心の奥底に美佳の記憶をしまいこんだ。
それは美佳も同じ。
決して自分の思いを銀時に伝える事はなかった。
それでもいつも自分の中に銀時が居るのは気が付いていた。
桂や坂本、高杉に対する気持ちとは少し違うそれに自分の様な人間が恋と名付けていいのかは分からなかった。
ただ銀時の側に居たいと願う乙女のような気持ちに恥ずかしさを感じるばかりだった。
その証拠にいくら男と体を重ねようとも銀時とのそれはいつも新鮮で恥ずかしくなってしまう。
久しぶりに互いの体温を確かめ合うためにホテルの並ぶ通りに向けて銀時は足を向ける。
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