─────---- - - - - - -
そんなある日、美佳を地獄に叩き落す事件が起きる。
その日、美佳は坂本とともに極秘任務についていた。
それは幕府の牢獄に侵入し、謀反犯として捕まっている仲間を解放する任務だった。
銀時たちが戦を起こし敵を引きつけ警備が手薄になったところに美佳と坂本が侵入する手筈だった。
元々極秘扱いでその存在すらも明らかにされていなかったその牢獄は、囚人の中でも重要とされる囚人たちが集められていた。
作戦通り銀時たちが近くで戦争を引き起こし、その騒ぎで警備が手薄になった隙に美佳と坂本はいくらかの兵を引き連れ、次々に仲間たちを解放していった。
そのうち美佳は隠し扉を発見し、仲間に見張りを頼むとひとりその中に入って行った。
仲間の助けに囚人たちは喜び、次々に檻の中から飛び出して行った。
そして、最後の檻。
他の檻より幾分大きなその檻の壁にひとりの男が腕を拘束されたまま俯いて座っていた。
薄茶色の長い髪の毛。
見間違うはずもない。長年探し続けていたその人物がそこには居た。
驚きで美佳が刀を落とすと、音にきがついたその男はゆっくりと顔を上げた。
「何やら騒がしいと思えば…あなたでしたか。
こんなところで何をしているのです?」
『先生…松陽先生!!』
松陽「相変わらず、泣き虫ですね。もうあれから何年も経ったというのに…」
疲れ切った表情ながらも美佳を見る松陽の表情は昔と変わらず優しかった。
涙でもう松陽の顔が見れない。
やっと…ずっとずっと会いたかった松陽が目の前に居る。
「美佳さん!!早く!こちらにも敵が迫って来ています!!」
入り口から叫ぶ仲間の声に美佳はハッっと目を覚まし、檻の扉を開け松陽の元へと向かった。
『先生、逃げましょう。早く。』
松陽「美佳、血だらけではないですか。」
『そんなのは後でいいんです!!早く!!』
懸命に錠を外そうとする美佳に松陽は嬉しそうに笑う。
少し見ない間に美佳はこんなにも強くなった。
「死神みーっけ。」
「その男から手を離せ。さもないとお前をここで叩き斬る。」
その声に美佳は後ろを振り向くと、見張りの仲間の首を持った天人がそこに立っていた。
美佳はとっさに刀を握ると松陽を護るように刀を構えた。
「さすが死神、反応が早いねぇ。」
『その名前で呼ぶんじゃねぇ!!』
「ハハハ!大切な恩師の前でそう呼ばれるのは嫌だったか?
仕方あるまい。戦の場で冷酷なままに何十、何百もの敵を殺すお前を死神と呼ばずして何と呼ぶ?
それとも…鬼と呼ぶ方がよかったか?」
「せっかくだからその先生に教えてやればいい。
お前が今まで何人の人間と天人を殺して来たか。」
美佳はそのまま敵に斬りかかる。
松陽「美佳!!止めなさい!!」
松陽の声も届かず美佳は何度も斬りかかった。
返り血を浴びながら、それでも敵を見据え無表情に戦い続ける美佳は不気味そのもの。
「死神さんよ…お前が大好きな先生がどうなってもいいのかい?」
美佳の隙をつき敵の一人が松陽の首に刃物を突き立てていた。
『離せ!!』
「離してほしくば、お前も剣を下ろせ。
こいつがどうなってもいいのか?」
松陽の首元にうっすらと出来た切り傷に、
美佳は観念するように静かに剣を下ろす。
「さて…お前を捕まえる前に…女として一仕事してもらおうか。」
『…!!』
「どうせ毎晩志士たちの相手をしているんだろう?
このくらい大したことないであろう。」
松陽「やめなさい!!私は逃げたりしません!
だから、その子に手出しをするな!
その子は逃がしてあげてください…お願いですから…その子に手を出さないでくれ!!」
「泣けるねぇ。命を賭して恩師を助けに来た教え子と、その教え子を命を賭して護る恩師と…
さぁ、死神。お前が決めろ。
拒否すれば…今、お前の目の前でコイツの首を撥ねるだけ。」
人を人とも思わない卑劣な手口。
それでも今この場に松陽を護れるのは自分しか居ない。
← →
9/16
←contents
←main
←top