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いつからだろうか、気が付けばアイツのことばかり考える様になっていた。
なんでなのか、何がそんなに俺を惹きつけるのか分からない俺にそれが恋と言うのだと、松陽先生が教えてくれた。
恥ずかしがる必要はないと…でも、心からアイツの事を思うのなら、全身全霊を懸けて護り抜けと…
自分の気持ちをアイツに言うのはなんだか恥ずかしかった。
そして何より、今の関係が壊れるのが怖かった。
昔っから誰よりも俺に甘えてくるヤツだった。
何か頼み事をする時は俺にすり寄って来る。
『ねぇ…晋ちゃん?』
と上目使いで着物の裾を引っ張りながらおねだりする。
そんなバカな真似を教えたのは銀時以外に居ない。
それが分かっていながら、アイツに言われたらどうしようも出来ない自分にため息しか出なかった。
俺にとってはただ可愛い存在だったアイツの真の強さを見たのは松陽先生が連れて行かれた時だった。
松陽先生が連れて行かれ、しばらくは落ち込んで憔悴していたアイツも銀時の言葉で目が覚めたらしく、それからは歯を食いしばって悲しみに耐えるようになった。
弱くては生きていけない。
そんな時代だった。
護りたいものは自分で護らないとすぐになくなってしまう、そんな時代だった。
強くなれとアイツに言ったのは、今思えば間違いだったのかもしれない。
全てをひとりで背負いこむようになってしまったから…
それでも…俺たちは強くならなければいけなかった。
戦に出る様になって、たくさんの血を浴び、死神と恐れられ…年頃の女の心が平気なわけがない。
戦の後、銀時に隠れるように俺のところで泣くようになった。
泣くだけ泣いて、すっきりしたように寝る。
銀時の前でだけ泣かないのは、アイツなりの意地だった。
目に涙をためバレバレ嘘を付き、俺の顔を見るとボロボロと涙をこぼす。
死神と恐れられても、中身は人間臭いヤツだった。
そんな泣き虫なアイツをひとりにしておけないと思った。
俺が側で護ってあげなきゃとガキの頃に立てた誓いを何年も何年も律儀に護り続けた。
アイツが俺の側で俺に笑いかけてくれるなら、それだけで俺は幸せだったから。
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