─────---- - - - - - -
一晩経ち、やっと美佳が落ち着いた。
目を覚ました彼女は昨晩の事を何も覚えておらずただただ困惑した表情を見せるだけだった。
まだ困惑している彼女にこんな話をするのは酷かとは思ったが、4人は直接美佳に事情を聴くことにした。
桂「美佳、思い出すのは辛いだろうが…お前が連れ去られたとき、奴らに何かされたのではないか?」
高杉「昨日のことだけじゃない、怪我をした後、お前と関係を持つと多少なりとも傷が癒えている。
これは普通の人間ではありえないし、お前も以前はそんなことはなかったはずだ。」
『…分からない。何も覚えてないの。
ただ、何度も何度も薬を飲まされたことは覚えてる。
でもその後の記憶があやふやで…』
坂本「薬飲ませてまでじゃと…」
高杉「いいか、美佳。これは仮説だが、お前の身体には何かしら起こっている。
もし、俺たちが考えるようにお前に何かしらの力があるとすれば、
敵に知られればお前はまた狙われることになる。
この事は俺たちだけの秘密だ。志士の連中にも知られるんじゃねぇ。
もし、昨晩のように身体に異変があるなら俺たちの所に言いに来い。
遠慮する必要はねぇ。」
自分でもよく分からない体の異変に美佳は不安気な表情を見せた。
桂「もしかしたら、事件の心的外傷によるものかもしれん。
だが、念には念をというやつだ。
心配せずともお前は汚れてなどいないし、何も変わっていない。」
高杉「何があっても俺たちがお前の側を離れることはねぇ。
だから、安心しろ。」
彼らの優しさに感謝しながらも、美佳はこれからどうなるんだろうと不安に押しつぶされそうになった。
そして、その不安を振り払うように戦場で剣を振るう美佳は以前にも増して冷酷になった。
死神の名にふさわしく、人を殺すことを何とも思わないと言った感じで仲間ですら薄気味悪さを感じるほどだった。
苦しむ彼女をどうにかして救ってあげたいと願っても、彼らにできることと言えば一緒に大騒ぎして今まで通り普通に彼女に接することだけだった。
『ねぇ、コタ。今の私を松陽先生が見たらどう思うかな。』
悲しそうにつぶやく美佳の肩を桂は優しく抱き寄せた。
桂「そうだな…もう少し女らしくしなさい!だろうな。」
『フフ…よく言われてたなぁ。剣術の稽古はいいけど、男勝りだって。
それで、私を叱った日は必ずお風呂の後に髪の毛を梳いてくれたの。
髪は女の武器だから大事にしなさい…って…あの日もそうやって言ってた。』
美佳の言葉を聞き、桂は櫛を持ってくると彼女の髪の毛を縛っていた紐を解き髪を梳かし始めた。
桂「お前の髪の毛は松陽先生の髪にそっくりだ。」
『そう?』
桂「あぁ。長く綺麗に伸びて、明るい茶色で…お前は知らないだろうが、俺と高杉はよく先生の背中に入りこんで、かつらごっこをしたものだ。」
『かつらごっこ?何それ。』
桂「俺たちは髪の色が濃いだろう?だからあぁいう明るい髪の色に憧れてな。
先生は嫌がるでもなく、いつもされるがまま座っていてくれた。」
『銀時は?』
桂「銀時はよく俺の髪の毛でやってたな。アイツは逆に濃い髪の色に憧れてたから。」
『あと、サラサラストレートでしょ?』
桂「あぁ。覚えているか、俺たちが一緒に遊ぶようになったときに、銀時が俺たちはズルいと駄々を捏ねたことを。」
『あ〜〜〜!!あったねぇ。なんでお前らばっかりサラサラストレートなんだ!!俺だって、サラサラストレートだったら、銀髪だしめっちゃくちゃカッコ良かったのに!!とか言っちゃって。』
桂「あれ以来だな、アイツが自分がモテないのは天パのせいだと言い張るようになったのは。」
『だってあれ、銀時が狙ってた団子屋さんのみっちゃんが晋助と小太郎の髪の毛が綺麗だって褒めたからだからね。』
桂「何?そんなことがあったのか?」
『ん〜みっちゃんだけじゃなくて、それから何度かあったよ。
ほとんどが晋助目当てだったけど・・・』
桂「でも、高杉は相手にしなかったのだろう?
アイツは昔っからお前一筋だったではないか。」
『だったではないかって私、晋助に告白されたことも将来の約束したこともないからね?』
桂「なに?そうなのか?」
『それに、それほど一筋って訳でもないでしょ〜。
だって、晋助の初めて私じゃなかったし。あっ、銀時も。』
桂「なに!?あいつ等いつの間に…」
『小太郎は〜…』
桂「言わなくていい!」
楽しそうに話す2人に風呂に行っていた他の3人も合流した。
高杉「お〜お〜ロン毛コンビが仲良さそうなこって。」
銀時「んで?ヅラの初めてがなんだって?」
坂本「ワシはの〜。」
高杉「誰もてめぇの話は聞いてねぇ。」
坂本「ねぇ!!だからワシの扱い〜〜〜!!!」
時間を費やし、多くの事を乗り越えて来た。
美佳の事も、きっと…きっとそのうち昔話にできる日が来る。
そう信じて、彼らは必死に笑い、必死に生きた。
≪終≫
← →
11/11
←contents
←main
←top