─────---- - - - - - -
その夜、銀時がひとりの所を見計らって美佳は銀時に話しかけた。
『ねぇ、銀ちゃん。』
銀時「あぁ?」
『お願いがあるんだけど…』
銀時「お前が銀ちゃんって呼ぶ時はろくなことないから嫌だ。」
『…だったら晋ちゃんに頼む。』
面倒くさいことは嫌いだが、高杉にいいところを持って行かれるのも嫌だ。
ため息をつきながら、美佳の方を見る。
銀時「…てめぇのことは俺たちがいくらでも守ってやる。
だからくだらねぇこと考えんじゃねぇ。」
『銀時は分かってない!!私は皆の足手まといになりたくない!
今日だって、銀時が私を助けに来たから、その穴を他の兵たちが…』
そこまで言った美佳は何年かぶりに銀時の前で泣いた。
松陽が連れて行かれ、銀時が鬼になると決めたあの日。
その日以来、美佳はどんなにつらくても銀時の前では泣かないようにしていた。
泣かないと決めたものの、どこに行っても付きまとう性別の壁に美佳は何度も躓きそうになった。
どんなに稽古を付けようが、体力を付けようが自分が女であることは変わらない。
どう頑張っても銀時たちには追い付けない。
そんな悔しさが美佳の中には積もり積もっていた。
『これが初めてじゃない。今までだって何回もあった。
私が女である以上、これからもこういうことはあり得る。
だったら…だったら…最初くらい好きな男がいい!!』
銀時「お前…」
突然の言葉に銀時も目を見開く。
当の本人は泣きじゃくっているせいか、自分が何を言っているのかも分かってないらしい。
銀時は美佳の腕を引っ張ると、自分の腕の中引き入れ、頭を撫でた。
銀時「そんな殺し文句言われたんじゃどうしようもねぇなぁ。
ったく、どこで覚えてくんだよ、お前は…」
美佳が落ち着いた頃を見計らって、銀時は彼女の手を引っ張り夜中は人が近づかない納屋へと向かった。
床に美佳を横たえると銀時は優しく彼女の頬を撫でた。
銀時「後悔しねぇか?」
『しない。銀ちゃんがいい。』
銀時「優しくするから…」
初めて口づけた美佳の唇は微かに震えていた。
行為の後、眠ってしまった美佳を銀時は抱きしめて横になった。
本当にこれで良かったのか銀時には分からない。
自分が美佳に対して確実に恋愛感情を持っているかと言えば、それもやっぱりよく分からない。
けれど、美佳が他の誰よりも先に自分に相談しにきて、自分がいいと言ってくれたことは男として素直に嬉しいと感じてしまう。
互いに生まれたままの姿で抱き合って、こんなところ誰かに見つかったら面倒臭いだろうな…と心配しながらも、美佳の髪の毛を撫でた。
それからしばらく経って美佳は目を覚ました。
自分の身体にはっきりと残る違和感に少々気恥ずかしくなって銀時の顔は見れなかった。
銀時は美佳に着物を着せると、そのまま風呂場に連れて行き、そこからは別々に部屋へと戻った。
← →
8/11
←contents
←main
←top