─────---- - - - - - -
「おぃ!!大丈夫か!!戦況は?」
「…最悪だ。4人がなんとか食い止めているが、もうあまり持たないかもしれん。」
「なぜだ、こちらにも勝算はあったはず…!!」
「…兵士のうち3分の1は使い物にならなかった。」
使い物にならない…美佳の頭の中には銀時たち四天王がいるから大丈夫だと高をくくり、隠れて酒を飲んでいた兵士たちの姿が浮かんだ。
『…酒を飲んだ兵は付いて行くなと晋助が言ったはずだけど?』
「美佳さん…」
『付いて行ったの?』
顔をしかめ、戻ってきた兵士に詰め寄る美佳の姿に周りも息を呑む。
「…気持ちが大きくなってしまっていたようで四天王が居ればなんとかなると…それで、総督たちはその兵士たちを逃がすことを優先させて…」
『そいつら誰一人として戻って来てないけど。道端で居眠りでもしてるわけ?』
「…逃げました。天人の力の強さを目の当たりにし、尻尾を巻いて山の中へ。」
「山って…敵の陣中じゃないのか!?」
「あぁ…だから、多分助かることはないと思う。」
『それで銀時たちは?』
「…銀時さんたち四天王は我らを守りながら、大将の首を取らんと戦い続けておられます。
しかし…敵の数はこちらの3倍。
正直持ちこたえることが出来るとは思いません…」
「そんな…」
「うそだろう…じゃぁ、俺たちは!!」
「これからどうすればいいんだ!!あの方たちが居ないのに戦を続けることなど!!」
『場所、教えて。』
悲観する兵士たちの中で、美佳だけは冷静だった。
「場所って…まさか美佳さん行かれるおつもりですか?」
『早く。』
「無理です!!多くの兵たちが力で適わず傷を負っています。
申し上げにくいですが、女性の美佳さんが行かれても出来ることは…」
『じゃぁ、何?私にここで待って居ろって言うの?
冗談じゃない。こんなところで狼狽えてる暇があるなら、あいつらの側で戦う!!』
美佳の気迫に押され、戻って来た兵士は黙って地図を渡す。
それを受け取ると美佳は自室に走った。
「美佳さん、無茶です!!考え直してください!!」
「俺たちはあなたをお守りするように桂さんより仰せつかっています!
あなたを行かせるわけにはいきません!!」
『…何?着替え覗くの?変態。』
「そんなことを言っている場合じゃない…えっ…あっ…すいません!!」
兵士たちが居るのにも関わらず、服を脱ぎ始めた美佳に兵士たちは慌てて戸を閉めた。
そして、美佳は素早く着替えを終えると、止める兵士たちの話も聞かず刀を手に馬に飛び乗った。
「美佳さん、待ってください!!」
『しつこい!どいて。』
「美佳さんっっ!!」
『どけっつってんだろ、ぶっ殺すぞ。』
いつもとは違う目つきの美佳に兵士たちは一度は怖気づくものの、ここだけは引けないと美佳の前に跪いた。
「あなたのお気持ちはよく分かりました。
しかし、我々は桂さんよりお守りするよう言いつけられているのです。
どうか、お供をさせてください。」
「美佳さん、ご指示を!」
彼らの態度の変化に美佳は驚く。
女だから、とどこか一線引かれていたのは美佳も感じていた。
それでも仲間の危機に黙っていることは出来なかったのだろう。
『…全員を連れて行くことは出来ない。
私に付いてくるのは最小限でいい。
それ以外はここの警備、そしていつでも逃げ出せるように準備を。
もし、私達になにかあったら…逃げなさい。』
それだけを告げると美佳は馬を走らせた。
← →
2/11
←contents
←main
←top