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その日は散々泣き、翌朝、私は以前のように早く起きて剣術の稽古を始めた。
そんな私に付き合うように銀時も早起きして相手をしてくれた。
身寄りのない子供たちは売れる。そんなくだらない事を考える賊たちに何度も襲われ、身を護る為に戦ううちに私たちは自然と強くなった。
そのうちに廃寺に住まう鬼の子と揶揄されるようになってしまった私たちはますます居場所がなくなった。
それでも、あの優しい松陽先生が連れて行かれるのをヒソヒソと噂話をしながら見ていた大人たちの姿を思い出せば、居場所なんてなくてもどうでもよかった。
私達の噂は役人たちにまで届き、それを危惧した彼らは私たちが知らない間に松陽先生をどこか別の場所に連れて行ってしまった。
ちょうどその頃攘夷戦争は激化し始め、小太郎と晋助は時代の流れに飲み込まれるように攘夷戦争に参加した。
銀時は私の事を心配して最後まで参加を迷っているようだった。
銀時「美佳?…もう寝ちまったのか。」
桂「銀時、美佳は?」
銀時「あぁ、もう寝ちまったみたいだ。」
高杉「また先生の着物抱いて眠ってるのか。…寂しんだろうな。」
銀時「毎日毎日飽きもせずに、お前らのことばっかり話してらぁ。
先生が見つからないのも、お前らが側に居ねぇのも…コイツにしてみりゃぁ、辛いことでしかねぇんだろ。」
桂「…銀時、実は松陽先生に関する情報を手に入れたのだ。
この間戦で捕まえた天人の捕虜が松陽先生に会ったことがあると言っておった。」
高杉「ただ情報はそれだけ。その天人も仲間の天人に殺されちまった。
しかし、天人たちにしらみつぶしに当たれば先生の情報が得られるかもしれない。」
桂「向こうの兵の数は圧倒的だ。
今のところ、俺と高杉で志士たちを統率させなんとかなっているが、正直戦況が好転しているとは言い難い。
お前の力が必要だ。銀時、攘夷戦争に共に参加してはくれないか。」
銀時「…」
高杉「美佳の事が心配なのは分かる。でも、このまま先生を待っている状況じゃない。」
銀時「…わりぃ。美佳は…俺が戦争に参加したら、自分も行くと聞かないだろ。
アイツをそんな危ない場所に連れて行くわけにはいかねぇ。」
それからも銀時と私は2人で暮らし、時間を見ては小太郎たちが様子を見に来てくれるという生活を送っていた。
そんなある日、小太郎から言伝を頼まれたという志士が私たちを訪ねて来た。
「昨晩、天人たちとの大きな戦があり、こちらの兵の負傷者も多数出ています。」
銀時「すまねぇが、攘夷戦争に参加するつもりはねぇ。ヅラにもそう伝えてくれ。」
「…高杉さんが…高杉さんがその戦で重傷を…」
晋助が…私の身体はすぐに走り始めていた。
もうこれ以上誰かを失いたくない。
父親代わりの先生も居なくなって、その上バカ兄貴まで…
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