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『神楽ちゃん、ちょっとこっち来て。』
不思議に思いながらも神楽は床に気を付けながら、美佳が手招きした和室へと向かった。
神楽「箪笥?」
美佳はニコッっと笑い、一番下の引き出しを開けた。
そこにはまだ新しい着物に紛れて、1枚のくたびれた着物があった。
神楽「これは?」
『くたびれた着物でしょ。これね、私が子供の頃に来てた着物なの。』
神楽「ずっと大事にしてたアルか?」
『…うん。でも、私じゃなくて銀時がね。』
なぜ銀時が美佳の着物を大事に持っているのか、神楽には全く分からなかった。
『私もここに来て初めて知ったの。
私の着物片づけようとしたら、箪笥の一番下だけが空いててね、たった1枚この着物だけが入れてあった。
多分銀時は私がいつ帰って来てもいいように、ここを私の為に開けておいてくれたんだと思う。
何も言わなかったけど…アイツそういう奴だから。』
神楽「銀ちゃん…」
『私が帰って来る訳ないって分かってたはずなのにね…。
それでも銀時はずっと待っててくれた。
だから、今度は私の番。
私が銀時がいつでも万事屋に戻って来れるように待つ番。
もしかしたら、銀時は帰って来ないかもしれない。
でも、もし帰って来た時に万事屋がなかったんじゃ銀時の行く場所ないでしょ。』
神楽「美佳姉...」
『今までのこと全部忘れられちゃったのは淋しいけど、でもこれからいくらでも覚えてもらえればいいんじゃないかな。』
そうはっきりと告げた美佳の目はまっすぐと前を見つめていた。
神楽「美佳姉、私も手伝うアル!」
『そう?じゃぁ、落っこちないように気を付けてね。
これ以上家崩したら、お登勢さんに怒られちゃう。』
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