─────---- - - - - - -
『はぁ〜〜!!!!久しぶりの地球〜!』
例の男と別れ、この物語の主人公・朝日奈美佳は久しぶりの地球を満喫していた。
天人の台頭により、あんなにきれいだった青空は大きな宇宙船が邪魔をして見えなくなった。
街では幕府の重役をも駒のように操る天人たちが我が物顔で通りを歩く。
自分が居たころよりも、少し形を変えてしまった故郷に寂しさを感じながらも、当てもなく江戸の町を彷徨った。
「はいはい、お兄さ〜ん。ちょっと寄ってかない?可愛い子居るよ〜。」
歓楽街なのだろうか、あちこちで客を呼び込む声が聞こえる。
江戸の町は少しばかり変わってしまったが、こういうところは相も変わらずで心地がいい。
「…あれ、ちょっと!そこのお姉さん。君、すごくスタイルいいね。どう?うちの店で働かない?君ならすぐにでもNO.1になれるとおもうんだけどなぁ。」
先ほどから何度か同じようなことを言われ、そのたびににっこりと笑って、逆に男を絆して来た美佳。
同じように、振り返るとにっこりと笑う。
『…!!』
「ん?どうしたの?あっ、ちょっと胡散臭いとか思った?なんならお店…」
声をかけてきた男の腕にするりとまとわりつき、その体にしなだれて、男を見上げる。
『お兄さん、美形ね。私、気に入っちゃった。お兄さんを指名してもいいかしら?』
「あっ、いや、その〜俺はボーイで…」
『え〜男は可愛い女の子選べるのに、女は美形の男を選んじゃダメなの?
女だって〜そういう事したい時ってあるのよ?』
そういいながら、胸を男の腕に押し付けると、男の顔はみるみる赤くなる。
綺麗に伸びた男の髪の毛を一束取り、そこに口づけを落とし、男の顔を熱っぽい目で見つめる。
「あ、お、おおぉぉぉ!!!」
『うるさっっ!!』
「へっ?」
急に隣で大声を出した男突き飛ばし美佳は耳を抑えた。
『コタ!!うるさい!!』
「コタではない!桂だ!!…って、コタ?…お、お前は…」
『んふ〜♪お久しぶりでありんす〜。』
桂「んなっ、んなっっっ!!なんだそのはしたない恰好は!!」
『え〜いいでしょ?私のこの綺麗な体が強調されて。』
確かに、丈を短くして脚を惜しげもなく見せびらかし、胸元がざっくり開いた着物は美佳の魅力を十分すぎるほどに引き立てていた。
桂「ともかくだ!!お前は…これを着て体を隠せ!!」
『やだ!何このはっぴ。くっそダサい!!』
桂「何を言うか。これは今日の俺の仕事着だぞ。」
『え〜だってヅラくさい〜。』
桂「ヅラくさいだと!?貴様〜っっ!!」
『あぁ〜もううるさい。そんなことより小太郎さ、家泊めて。あんたんちデカいでしょ、どうせ。』
桂「それは構わん…いや、ダメだ。しかし、あてならある。仕事が終わるまでしばらく待て。」
『それはいいけど、どこで待つのさ。』
桂「ここでだ。」
『ここってお店?』
桂「違う。俺の隣だ。お前は目を離すとすぐに居なくなりそうだからな。」
『え〜逃げの小太郎に言われたくないんだけど…
しょうがない、どうせ金持ちの実家飛び出して攘夷活動とかやってるから、お金ないんでしょ。
仕事手伝ってあげる。ちょっくら店長に交渉してくらぁ〜。』
桂の返事を聞くこともなく、さっさと店に入り、店長と交渉をしてきた美佳は店のコスチュームに着替え、桂の隣に立った。
「あれ、お姉ちゃんいい体してるじゃない。ここのお店の子?」
『そうで〜す中にはもっとも〜っとかわいい子いっぱいいますよ?一杯だけでも飲んで行きません?』
「え〜おじさんお姉ちゃんがいいなぁ。」
『ん〜そうしたいのは山々なんですけど〜私、今日女の子の日だから、おじさんのこと満足させてあげられないんです〜。また今度指名してくださいね♪』
美佳が隣に立つと、蟻のように男が群がり、店はこれまでにないほどの賑わいになった。
そして、桂には美佳のバイト代+ボーナスが支給された。
← →
3/7
←contents
←main
←top