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「……」

視線が痛くて、落ち着かない。
ちら、と伏せていた目を上げると、やっぱり碧い瞳が私を見ていた。その目は決して穏やかなものでは無く、敵意こそ感じないものの、鬼気迫った様子だ。

「……おい」

「なんだい」

「俺達は『見てろ』じゃなくて、『相手しろ』って言われたんじゃ無かったか?」

「……ユーリに言われなくても分かっている」

「そうかい。余計な事を言って悪かったな」

二人の仲も険悪に見える。
ここは、一体どういう世界なのだろう。ユーリとフレンが着ている服は同じもののようだ。二人がペアルックを決める程仲が良い訳ではないし、多分、制服なのだと思う。
制服……学校?

「……ここは、学校なの?」

「うん? 学校?」

答えてくれたのはユーリだった。

「違うよ。ここは騎士団の駐屯地だ。俺達は騎士」

彼の受け答えは優しかった。それに少しだけホッとする。
彼らの服は騎士団の制服だったのだ。ユーリがまだ騎士でいるということは、やはりここも『過去の世界』。

「騎士になって、どれくらい?」

「まだ一年も経って無いな」

ということは、フレンはまだ小隊長にすらなっていないのだろう。

「……僕らの方からも、聞きたいんだけれど」

平坦な声が割り込んだ。フレンの声なのに、同じ声のはずなのに、全然違う。温かさを感じない。

「君は、本当にフィナなのか」

真偽を見定めようとするかのような、強い瞳が私を射抜いた。
あまりのプレッシャーに喉が詰まり、声が出せない。それでも「どうなんだ」と追撃され、慌てて首を縦に振った。

「なら、今まで何処にいたんだ」

「………」

何処にも行っていない。あの場所―――時間から、すぐこちらに来た。
それを説明したかったが、やっぱり喉は詰まったままだった。

「子供相手に凄むなよ」

「凄んでない」

「ったく、昔はあーんなにベッタベタだったくせによ」

「昔の話だ!」

「そういや、お前ら結婚の約束もしてたよな? 覚えてるぜ。フィナは僕のお嫁さんだから〜って、よく邪魔を……」

「昔の話だって言ってるだろう!」

なら、今は私のことが嫌いなのだろうか。嫌われるような事をした覚えは無いのに。どうしてこんな冷たい態度を取られてしまうのだろう。
納得できない思いを拳に込めて、固く握り締めた。
今のフレンは、私の知ってるフレンじゃない。そしてフレンにとっても、私は得体の知れない子供なんだ。
そう思ったら、鼻がつんとして、目頭が熱くなった。

「お、おい……!」

「……!」

二人の戸惑う声が聞こえる。けれど、そんなのはどうでも良かった。
ここに優しいフレンはいない。それがとてつもなく寂しくて、心細かった。初めてテルカ・リュミレースに来た時だって感じなかった孤独感が、突然私に襲い掛かった。
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