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そして、再会も突然だった。
帝都から離れた街、シゾンタニアの外れ。
いつかのように緑に囲まれ、首を巡らせていた彼女は、僕と目が合うなりとても嬉しそうに笑った。
出会った時と同じ、幼い子供の姿で。
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やっと元の世界に帰れたと思ったのに。
ソファの傍らに立つフレンを見上げた。彼はすました顔で真っ直ぐ前を向いている。姿形は元の世界―――といっても地球ではなく、テルカ・リュミレース―――のフレンとそっくりだが、態度や振る舞いが全く違う。こちらのフレンは固くて冷たくて、石みたいだ。
数週間前、私はまた得体の知れない穴に落っこちてしまった。目覚めるとそこは過去の世界で、そこには小さなフレンがいた。小さな彼は中身も子供だったが、変わらず優しかった。私はまた彼に助けられ、彼の家でお世話になったのだ。
彼の両親もとてもいい人たちだった。お母さんはフレンの真面目な性格を思い起こさせる、キッチリとした人。お父さんは大らかな人で、フレンがそのまま歳を取ったような外見をしていた。よく見ると違うけれど、顔の作りがそっくりで、体格も似ていて……きっと、元の世界のフレンも将来あんな感じになるのだろう。そう思ったら少しドキドキした。
そして、その世界で数週間がたったある日。私の前に赤い剣を持った、白く長い髪の男性が現れた。
彼は私に「お前はここにいるべきではない。帰れ」と一方的に言い放ち、剣を掲げた。その剣が発した白い光に目がくらみ、気がついたら独り、森の中にいた。
不安を感じながら周囲を見回すと、そこに良く知った人物が現れた。そう、私の良く知る、背の高い大きなフレンだ。
元の世界、時代に帰れたのだと喜んだのもつかの間。どうもフレンの態度がおかしい。しかも、連れて来られた街は帝都じゃない。周囲を川に囲まれた、全然知らない場所だった。
私はまた、別の世界に迷い込んでしまったのだ。
「ユーリ! 廊下は走るな!」
扉の向こうから声がした。フレンに向けていた目をそちらに移すと、すぐにバンと勢い良く扉が開いた。そこにいたのは、またしても知っている顔だった。
「ユーリさん」
彼は知らない青い服を着て、髪を低いところで縛っていた。私を見、信じられないものを見たように目を剥く。
「おい、どういうことだ」
まるで怒ったような強い調子で尋ねる。彼はずかずかと私の正面にやってくると、屈んで顔を近づけ、私の顔を検分した。少し、怖い。
「信じられねえ……」
ぽつりと呟き、フレンを見上げる。フレンは前を見たまま、
「そっくりだろう。顔も、服装も」
「本物……本人なのか?」
「そんなわけ無いだろう。何年経ってると思っているんだ」
「そりゃ、そうだろうけどな……けど」
ユーリはまだ割り切れない様子で私を見た。私からはまだ、否定も肯定もしていない。時間を越えてきたことを隠す気もないのだが、フレンの様子を見る限り、信じてくれなさそうだ。